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アル☆ドル ~アルバイトでアイドル?~  作者: 渡里あずま


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13/29

CM出演とアイドル活動について

 放課後の教室、机を挟んで向かい合う二人の学生服を着た少年。


「家まで待てないのかよ」

「こういうところで食べるのが、美味しいんだろ?」


 小柄な方の少年の言葉に、すまして答える少年。そして目の前で食べ始めた彼に、頬を膨らませたかと思うと。


「……一口、よこせ」

「はいはい」


 ねだられたのに笑って、備えつけのフォークで麺を差し出す。それに口を開け、少年がカップ麺を食べたところで……。


『こってり、しあわせ』

『サンカップ。シーフード・ピザ味、新発売』



「昨日のCM観た?」

「観た観た、和斗君可愛いっ」

「わたしは歩君がいいなぁ。お兄ちゃんっぽくて素敵よね」

「……おはよ」


 紺地に白いラインとタイ、膝上丈のプリーツスカートにハイソックス。

 黒髪ロングのウイッグをかぶり、可愛いと評判の制服を着て学校に行くと、同級生達が十和の出たCMの話で盛り上がっていた。恥ずかしいが、無視をする訳にもいかないので学校指定の白いベレー帽を脱ぎ、短く挨拶だけをして通り過ぎる。

(でも、お兄ちゃんって……アユは、私より年下だぞ?)

 そもそも、最初は十和が歩の役をやる予定だった。

 しかし撮影前に楽屋で食べたところ、十和的には涙目になるくらいまずかったのである。


「ピザはピザで食えばいいだろ!」

「無茶を言うな……役を変えるぞ。そんな顔をして食ったら、売れるものも売れん」


 十和の訴えも虚しく、英の指示で配役は決定した。だから自分の方が子供っぽく見えるのは、あのカップ麺のせいなのである。

 だが、そのことを今、ここで主張することは出来なかった。それが出来れば毎朝、ウイッグをかぶって登校などしない。


(まだ、デビューして二ヶ月だけど)


 十和としては『SMnow』でのデビューだけでも十分、すごいと思っていた。

 だが、英は彼女の予想の更に上をいっていた。デビュー曲を、人気アニメとタイアップさせたのだ。おかげで初登場でランキングのトップ3に入り、再び『SMnow』に出演出来たのである。

(おかげで、貰った洋服代は返せたけど)

 十和としては一安心だが『Es』の勢いは止まらない。今回のCMの他にも、雑誌の撮影があったり取材を受けたりと忙しい。しかもセカンドシングル発売に向けて、英はまた何か考えているようなのだ。

(……今日、事務所に来いって言われてるよな)

 一体、何が待っているのか――深いため息をつきながら、十和は自分の席に着いた。


「おはよう、十和」


 そんな十和に、同じクラスになった梨香が声をかけてきた。そして、未だに盛り上がっている同級生達に肩を竦める。


「少し前までは、十和のファンだったのにね」

「……へっ?」

「まあ、ファン第一号としては気持ちも解るけど」


 そう言って笑う梨香はCDを買った上、音楽配信サイトからダウンロードもしてくれた。確かにアニメ自体も人気だが、ランキングの結果は梨香達ファンのおかげだと思っている。


「……ごめんな、ありがとう」

「何、謝ってるのよ……いいのよ、わたしは和斗のファンなんだから」


 梨香は、本当のことを知っているが――周囲を騙しての人気だということに、変わりはない。

 だから思わず謝ったが、返された梨香の言葉が意外だった。

 友人の欲目だろうか? 首を傾げた十和に、内緒ね、と梨香が言葉を続ける。


「つまらないとは言わないけど、確かに歩って完璧よね。それがいいって子もいるけど、わたしは和斗を見てる方が楽しくて好きよ」


 梨香がそう言ったところで、チャイムが鳴った。

(……完璧、か)

 歩だって拗ねたり緊張したりもする。けれど、それは十和しか知らない。

 自分の席に戻る梨香を見送りながら、十和はふむ、と呟いた。

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