ほう・れん・そう といっても野菜じゃない
自宅に戻ってきてからの 主人公、父、兄の会話です
基本彼女の家は一日の話を夕飯の時にしたりと会話が多い家庭だと
思っておいてください
もふもふよりは暫く魔法色が強いと思います
誤字報告やブクマ、評価ありがとうございます。
励みになります
「それは本当か?」
兄と一緒に屋敷に戻ったリナニエラはそのまま身支度だけ整えた後、父の執務室へと向かった。珍しくエドムントが自宅にいたからだ。クリストファーとリナニエラが一緒にやって来たのを見て、エドムントは怪訝そうな顔をしたが、兄の言葉を聞いて厳しい表情になった。
「おそらく、間違いが無いかと。文献にも書かれていますが、森の動物が著しく減った後、魔物の暴走が起きています」
クリストファーの言葉に、エドムントは額に手を当てた。
「何という事だ」
漏れた言葉は重々しいそんな言葉だ。今の状況を嘆いているのだろうか、そんな考えがリナニエラの頭の中に浮かぶけれども、今はのんびりもしていられない。
「先ほど、ギルドの方にはクエスト後に報告を上げておきました。騎士団からも同じ報告を受けていると副ギルド長が話をしていました」
先あった話を父に上げれば、彼は真面目な顔のままリナニエラを見た。そして、『よくやった』と言葉をかけられた。普段、冒険者としての自分を褒める事の無い父からの言葉に、リナニエラは自分の頬が緩むのが分かる。咄嗟に口元を手で隠した後、下を向いた。
「だが、父上。どうしましょう。演習を延期は出来ないでしょう」
父と同じような顔をしながら、クリストファーが話す。腕組みをして話す兄はいつも屋敷の人間と話す時のふわふわした空気とは全く違う。おそらく、これが騎士団で見せている兄の姿なのだろう。普段と二人とは全く違う様子に、リナニエラは大きく深呼吸をした。
「これが……、ギャップもえ……」
絞り出すように声を出せば、真面目な顔をしてた二人がぎょっとしたような顔をしてこちらを見つめてくる。二人の視線にリナニエラは慌てて姿勢を正すと、『コホン』と咳払いをした。
「続けてください」
取り繕う事をせずに、涼しい顔をで二人に言えばエドムントとクリストファーは何故か妙な物を見る目でリナニエラを見つめてくる。何か言いたげな二人の視線をスルーすると、リナニエラは先ほど屋敷のメイドが持って来たクッキーを口にする。この後夕食なのだから、余り食べる事は出来ないが、今日は頭も体も使ったからとにかく甘い物を身体が欲している。
『あー、おいしい』
クッキーを食みながらリナニエラが呑気な事を考えて居れば、エドムントとクリストファーも顔を見合わせる。まだ緊張はしている顔をしているけれども、少し和らいだ顔をして、二人もクッキーに手を伸ばした。
「学園には、明日同じクエストにいた冒険者も兼務している生徒と一緒に話を上げます」
「分かった。騎士団からも連絡は上げるよ。父さんの方もよろしく」
「分かった」
リナニエラの言葉に、頷くエドムントとクリストファー。とりあえず、明日自分とカインが報告する事で学園、ギルド、王宮で同じ情報を共有する事が出来るのだ。
『本当に報連相って大事だわ』
情報を全体が共有していれば、いざという事があった時でも対応が早くできる。
「騎士団と学園も連携したいですね。同じ現地にいるんですし」
「そうだな。一度団長に掛け合ってみるよ。冒険者をしていて要請のかかっている生徒とだけでも共通の連絡手段を持っていた方がよさそうだ」
リナニエラの提案に、クリストファーも頷く。お互いに顔を見合わせた後、リナニエラは思い出したいようにエドムントに顔を向けた。
「お父さま、お願いがあります」
「なんだ?」
真面目な顔をして父を見れば、エドムントが真顔でこちらを見つめてきた。その視線が鋭く、今の父は国の政治を担う人間の一人として自分を見ているのだと気が付く。父の顔を見て、リナニエラも表情を引き締めた。
「今回の演習で何か有事があった場合、広範囲魔法の使用を許可していただけないでしょうか?」
真面目な顔で尋ねるリナニエラに、エドムントは顔色を変えた。広範囲魔法というのは言葉の通り、広範囲に影響を及ぼす魔法だ。仮に森で炎の広範囲魔法を使えば周囲が焼け野原になる可能性のある魔法という事になる。その為、この魔法を使う時は余程の事では使う事は無いし、大量の魔力を必要とする為、使える人間も限られるのだ。
「使えるの……か?」
確かめるように尋ねられるエドムントの言葉に、リナニエラは頷いた。この魔法が使える事に気が付いたのは随分前だが、さすがに娘がそんな人間破壊兵器のような魔法をぶっ放すと分かれば、たとえ父といえどもショックを受けるだろうと考えたのだ。さて、父がどんな反応をするのだろうと、リナニエラは思いながら父の顔を見つめていれば、彼は少し黙り込んだ後自分の目を見つめる。
じっと見据えられる強い視線に、リナニエラは怖気づく事なく見つめ返せばエドムントは大きなため息をついた後、口を開いた。
「分かった許可をしよう」
「本当ですか?!」
父から出た魔法使用の許可に、リナニエラは目を丸くする。てっきり反対されるかと思っていたから彼の言葉にリナニエラは思わず身を乗り出した。
「落ち着きなさい。ただし使用には条件がある」
「……じょうけん?」
父の言葉に、リナニエラが首を傾げればエドムントはこめかみを押さえるようにしながら頷くとちらりとクリストファーに目をやった後、口を開いた。
「演習中に非常事態が起こった場合の魔法は許可する。だが、その時には必ずクリストファーかそれに匹敵する騎士あるいは、魔法師団の人間がいる時だ」
「はい?」
真顔で口にされた言葉に、リナニエラは首を傾げた。魔法を使う時に兄がいる事は分かる。だが、後に続いた人間の条件は一体なんだ?
訳が分からず首を傾げるリナニエラに、クリストファーは苦笑しならエドムントからの言葉を受けつぐように口を開いた。
「ああ、父さんはリナニエラが魔力暴走をした時に抑えられる相手が近くにいるなら良いって言っているんだよ。魔力もそうだけど、君は力もあるからね。リナニエラと同等、もしくはそれ以上の力を持つ人じゃないと押さえられないから」
何だか、自分が『危険人物』だと暗に言われているような気がするのを感じながらも、リナニエラは頷いた。ここは、了承しないと魔法が使えない事になる。
「分かりました」
力強く返事をすれば、父と兄が困ったように笑う。
「あともう一つ。お前にどれだけの力があるかを私がはかりたい。今度王宮の演習場で場を設ける」
そして、更に続いた言葉。それに、リナニエラは言葉を失う。だが、これも自分が魔法を使う為の布石だと思えば仕方が無い。
「分かりました」
そう言って、ぎゅっと拳をリナニエラは握りしめた。
読んでいただいてありがとうございました
昔CMで社会人に大事なのはほうれんそうだ!「はい!」という話を次の日に
先輩の机の上に山盛りのほうれん草が積まれていたというCMがとても
印象に残っていました あれを用意した後輩もすごいなと思います




