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世界情勢

 ラスティノーゼ大陸は大きく5つに区分されている。

 東北諸国、中部諸国、西部諸国、海洋諸国、そして原魔の森だ。

 この内、リーンハルトがある西部諸国と原魔の森については説明する必要はないだろう。今回はそれ以外……東北諸国、中部諸国、海洋諸国について述べよう。





 まずは東北諸国。


 ルーファが産まれたのがこの最北端にある氷冷山脈であり、その(ふもと)にあるのが巨人族が治めるギガント王国。当然これより北に国はなく、冬は雪と氷に閉ざされ、移動することもままならない厳しい気候となっている。


 ギガント王国の南部に隣接する国は3国。


 森人族(エルフ)の国エルシオン森林王国、農業が盛んなタラン王国、そして翼人族の国ミタンム王国だ。

 そこからさらに南下すれば竜王国ドラグニルの支配領域となる。その広大な国土は中部諸国の国境線まで続き、途中には原魔の森に挟まれるように地人族(ドワーフ)の国バッカス火山王国が存在する。


 以上6カ国が東北諸国と呼ばれる国々だ。


 同種族で固まってはいるものの、全ての国が多種族国家であり、表立ってアグィネス教を崇める者はいない。東北諸国で信仰の対象になっているのは神獣と竜王ヴィルヘルムだ。


 そして他の諸国と決定的に違う点が技術力の高さだ。


 流通や情報伝達に関しては地球と比較して遅れてはいるものの、それ以外は現世並みかそれ以上の生活水準を誇っている。

 だがこれは東北諸国だけで、そこから離れるにつれて技術力は目に見えて落ち、見向きもされない田舎の弱小国家などは中世並みの生活を送っている地域もある程だ。

 ただし、ドラグニルから技術提供を受けているリーンハルトは、最も離れた地でありながら技術力は比較的高めである。


 そして、技術が発展した国ほど生活が豊かになることは自明の理であり、生活に余裕ができれば次に台頭してくるのが芸術や美食、娯楽といった文化だ。

 長き“平和”がこれらの文化を育み、熟成させたのだ。“戦争”とは古今東西、文化を壊す破壊者であることに間違いないのだから。


 では、何故東北諸国は長らく戦争とは無縁でいられたのか……当然それには理由がある。


 そもそも、ギガント・エルシオン・バッカスは神獣を抱える聖なる国。

 神獣が国王を選ぶ手前、王とは(すべか)らく清廉潔白でなければならない。建国から今日(こんにち)まで善政を敷いてきた各王のお陰で、内乱すら1度も起きたことが無い穏やかで過ごしやすい国々だと言えるだろう。


 だが一度も戦乱が無かったかと言えば、そうではない。


 いくら善政を敷こうと外部から攻撃されれば平和とは呆気なく崩れ去るもの。

 現に、神獣サラシアレータを狙いバッカスに攻め入った国もかつては存在したのだが……竜王ヴィルヘルムの怒りを買い、一夜にして滅びたことは有名な話しである。


 そう、東北諸国が平和な最大の理由――それがヴィルヘルムを頂点とする、最大最強の軍事国家ドラグニルの存在だ。

 普通であれば、ただの1人が国を滅ぼす力を持つなど恐怖以外の何者でもない。


 だが……ドラグニルは違う。


 建国以来5000年、強大な力を持ちながら一度も他国へ侵略したことがないのだから。

 5000年の信頼というものは思った以上に厚いものなのだ。ただし、怒らせれば滅ぼされるという注釈が付くが。

 

 上記の理由により長きに渡る平和を謳歌している東北諸国だが……意外な事に戦闘を生業とする軍や冒険者の質も高い。戦争こそないものの、強い魔物が多い地域もまた東北なのである。


 これは竜種が多く住むことで周辺の魔力濃度が上がり、それに惹かれて魔物が東北諸国へと流れてきているためだ。

 強い魔物ほど高濃度の魔力を好む性質を持ち、ドラグニルの魔物は他国ではあり得ぬ程強い個体が多いのである。

 まあ、竜種が嬉々として狩っているのでさほど問題になってはいないのは幸いだろう。

 これらの魔物は良い素材にもなり、高い加工技術も相まって武器の品質も世界随一だ。


 余談だが、某マスメディアによるアンケートでは住みたい国ナンバーワンはぶっちぎりでドラグニルであったという。


 






 次は海洋諸国についてだ。


 “海洋諸国”と(めい)打ってはいるものの実際は2国しか存在しない。ドラグニルの南海沖にあるラーメル海洋連邦国家と、ベリアノスの南海沖にある奴隷王国ジターヴだ。 


 ラーメル連邦国家は5つの島国からなる。


 中央にあるシェネリーゼ島を囲むようにアイオイ島、ラグーン島、ダンテ島、サモア島が展開し、シェネリーゼ島を除き人が普通に生活を営んでいる。

 各島には大公家が存在し、その4大公の中から元首が選ばれる。

 現在の元首であるリアム・アイオイ・シェネリーゼはアイオイ島の大公家から排出された代表で、“シェネリーゼ”とは元首となった瞬間に拝命される名である。


 そして中心にあるシェネリーゼ島の地下……いや、海底には神獣リヴァイスの神域がある。故にそこに住むことを許されるのは、神獣に選ばれたリアムただ1人。

 ちなみに、政治の中枢が置かれているのもシェネリーゼ島なのだが、リアム以外は各島から転移陣を利用して通勤している。




 もう一方のジターヴは捕らえてきた亜人を奴隷として売買している奴隷国家だ。


 亜人を奴隷としている時点でもうお分かりだろうが、人族至上主義を是とする国家である。

 ここで販売されている亜人も船や村を襲い手に入れた非合法なものだが、亜人は人とは認められていないため、同じ人族至上主義の国家間では問題視されないどころか称賛されている有様だ。

 亜人狩りで最も被害が大きい国がリーンハルトであり、ジターヴとの仲は最悪だと言えるだろう。

 

 






 中部諸国は上記2つと比べて(いささ)か複雑な様相となっている。


 まず国の数が36カ国と圧倒的に多く、西は人族至上主義を掲げるベリアノス、東は多種族国家であるドラグニルという相反する思想を掲げる大国に挟まれた中小国家群だ。

 当然、国の数が多ければ勢力図も複雑怪奇になってくるのだが、ここでは3大勢力について説明しよう。



 1つは神聖皇国ナスタージアの庇護を受けたアグィネス教を信仰する勢力。


 ナスタージアはベリアノスに隣接する中部最西端の国で、その国土は小さいながらも、支配領域は中部諸国の西半分にも及ぶ最大勢力となる。

 実に中部の半数以上の国家がナスタージアの傘下にあると言えば、その強大さが分かるだろうか。

 亜人は奴隷しかいない完全なる人族至上主義を実現しており、同盟国同士での争いはナスタージアの名の下に禁止されている。

 亜人以外は平穏に暮らしているのが特徴だと言えるだろう。


 また、野心(あふ)れるベリアノスが中部諸国に進出しない理由もナスタージアの存在が大きい。

 ベリアノスの国教はアグィネス教。

 その総本山に牙を剥けば兵の士気が下がるどころか、反乱が起こる恐れがあるからだ。

 これを踏まえれば、ナスタージアの勢力は西部諸国にも食い込んでおり、ベリアノスもおいそれと逆らうことが出来ないほど力ある国なのである。



 2つ目が亜人が多く暮らす反アグィネス教を掲げる勢力。


 ドラグニルに隣接、もしくはそれに近い国々から成り、3大勢力の中では最も小さい。

 しかしながらこれらの国はドラグニルと軍事同盟を結んでおり、手を出した国は苛烈な報復を受けることとなる。当然、世界最強であるドラグニルを敵に回すような愚かな国はおらず、平穏を謳歌している。




 そして最後の1つが上記2つの勢力に挟まれた新興勢力だ。


 アグィネス教を信仰する者が国民の半数以上を占めるにもかかわらず、最寄りの大国であるドラグニルと取引をしなければ成り立たない国々だ。

 取引の内容としては食料・日用品は勿論のこと、自国内では対処しきれぬ強大な魔物が出現した際の武力にも及んでいる。


 果たしてドラグニルに頭の上がらない状態で、亜人を虐殺することが可能なのか……答えは当然「否」だ。

 そういった諸々の理由から、根強い差別はあるものの亜人にも市民権が与えられ、暴行を加えることは禁止されている。


 だが、ここで問題になるのがアグィネス教の教義だ。


 亜人を隷属させ、人族のために尽くさせねば、死後永遠の苦しみが与えられると謳っている手前、アグィネス教市民の反感は凄まじいものがある。

 亜人に手を出しドラグニルの怒りを買って滅びるか、はたまた内乱によって滅びるか……彼らが選んだのはそのどちらでもない第三の道だ。

 

 それは――新生アグィネス教団の樹立。


 簡単に言えばアグィネス教の穏健派だ。暴力ではなく、対話により亜人を正しき道へ導くことを目指している。


 多くの宗教にとって宗派が違えば、それは戦争に発展しかねないほど容認できぬものの筈。だが新生アグィネス教に対してナスタージアが動くことは無かった。


 その理由はナスタージアにとって新生アグィネス教の存在が都合が良かったからに他ならない。

 もし彼らの存在が無ければ、自分たちの隣にあるのはドラグニルの息のかかった亜人の国となるのだから。そうなれば、戦争は必至。

 いや、逆に戦争しなければ教義に反し、アグィネス教の根幹を揺るがすこととなるだろう。それを避けるための緩衝材として新生アグィネス教は都合が良かったのだ。


 そしてそれはドラグニルとて同じこと。


 例え戦争をしたとしても竜種が多く存在するドラグニルが負けることなど100%有り得ない。だが彼らは戦争を忌み嫌う。

 それは、瘴気を増やす行為に他ならないからだ。


 双方の思惑が絡み合った結果、暗黙の了解として放置された空白地帯、それが新生アグィネス教勢力圏だ。

 大国2つが手を出さぬ空白の地ともなれば、そこを狙い勢力を拡大させようと企む国が当然いる……というか、この地域は200年以上前から戦国時代の如く互いの領土を虎視眈々と狙っている間柄である。

 国境線が変わるのはいつものこと、国の名前が変わることすら珍しくない。「中部諸国は戦乱が絶えぬ地」そう他国から言われる所以(ゆえん)である。


 最近、その中で頭1つ……いや、2つ分抜きんでてきた国がある。


 聖ミラノッテ王国――新生アグィネス教の宗主国を自称する国だ。  

 特筆すべきは第一王女アマリリス。

 唯一神アグィネスから神託を受けし“聖女”として、国内では圧倒的人気を誇る。

 そのお告げにより幾つもの災厄を回避しており、彼女のお陰で勝利した戦争もあるほどだ。ここ10年で3か国を降し、未だその勢いは衰えることを知らない。


 まだまだ戦乱が絶えなさそうな中部諸国であった。

 



挿絵(By みてみん)


 紫→東北諸国

 黄緑→中部諸国

 赤→西部諸国

 黄色→海洋諸国




 さて、現在の世界情勢について理解して頂けただろうか。


 勇者を従えリーンハルトを手中に収めんとするベリアノスに、それを利用し世界統一に邁進(まいしん)するナスタージア。

 ドラグニルとリーンハルトは勇者の影を捉えようと躍起になり、大国の隙を狙い勢力拡大を計るミラノッテ。


 次に動くはどの国か。


 各国の思惑は複雑に絡み合い、やがて未来を形作る大いなる流れの一部となるだろう。果たして栄光を掴むのは……





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