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世界を詠う慈悲の魔女  作者: 『H∀Qqy∃ИD』
30/32

慈悲の魔女

「フェリスさん、痛くないかしら?」

「大丈夫だよ」


「アルマ、痛くない?」

「……すごく痛い」


私達は現在、どこかの家で休んでいました。

軽い火傷を負ったフェリスと、致死段階まで黒く焼け焦げた私。二人は、私達をそれぞれ治療してくれてるのでした。

「痛っ……あ、大丈夫」

「………………」

「……あ、アルマ?痛くない?」

「全身が痛すぎて、どこが痛いのか分かんない」

街を抜け出してから一日が経ちました。私は未だ肌が焼け焦げてますが、普通に声が出せるようになりました。

もう少ししたら、表面の皮膚も再生し始めると思います。

それが魔女の体です。


コンコン。

誰かがドアをノックします……と言っても、そんな人は一人しかいません。

「入るわよ〜♪」

ドアを開けたのはルディーノさんでした。

あれからルディーノさんも、私達を追いかけてここまで来てくれたのです。

「あ、ルディーノさん」

「アルマちゃん、私はルディーノ『ちゃん』!!」

そんなお決まりな会話をして笑い、本題に移ります。



「魔女が現れたわ」

ルディーノさんの最初の一言がそれだったので、私はビクッとしてしまいました。

それはマグムのことか、はたまた私のことか……

「髪が長くて」

……うん。

「空を飛んで」

……ということは、マグム?


「髪色は赤色、背中から片方だけ翼が生えたヤツ(変態)よ」

……うん?

「……髪、黒じゃなくて?」

「ええ。私の調査ではあんなヤツ見たことも聞いたこともなかった。おかしな事態が発生してるのは間違い無いわね」

ルディーノさんが、珍しく真剣な顔で考え込みます。

その様子がなんだか新鮮で、私はついルディーノさんをジロジロ見つめてしまいました。


……。

この顔、この表情、どこかで……?


「私、アルマちゃんともう一人しか魔女のこと知らないんだけどね〜?」

「……えぇっ!?」

その呟きで、私は我に返りました。

私が魔女? いえ、確かに私は魔女です。でもそれは、ちゃんと隠してたはず……

「私の前では、隠し事は無しよ〜♪」

「…………」

だとしたら。

ルディーノさんは、私が魔女だと知った上で助けたことになるのでしょうか?

どうして? なにが目的なんでしょう?


そして、さらに驚いたことがあります。

ルディーノさんがそう言ったのに、ヴェルニスとルディーノの二人が少しも反応しないことです。

「二人は知ってたの?」

「何が?」

ヴェルニスが声で反応しました。

まるで、今言われたことのどこが重要? みたいなトーンで。

「私が魔女だって」

「うん」

「なんで?」

「なんで、って……」

私の問に対し、あきらかに狼狽えるヴェルニス。そんな彼女を助けるように、ニーミアが口を挟みます。


「ひとつ。こんなに炎で焼かれたのに生きてた」

「それは……」

確かにそうでした。

でも、二人はそれ以前から知ってた気がします。

「ふたつ。予めルディーノちゃんから聞いていた」

「ちゃん……フフッ」

「アルマちゃ~ん? 何がおかしいのかしら~ん?」

まあ確かに、ちゃん付けしないとルディーノさんがうるさいですからね。

それにしても、まさかルディーノさんの口からだとは。この二人は困惑しなかったのでしょうか。

「そしてみっつ。あんな山奥で生きていた」

「……?」

ですが3つ目の理由はイマイチ分かりませんでした。

山奥で生きることと、私が魔女だということ。どうしたらこの二つが繋がるのでしょうか?


ですが、その答えは簡単でした。

「そうそう! 私達だけで山に住もうとした時、すっごい威嚇されてたんだよ!!」

今度はヴェルニスが口を挟んできます。

「威嚇?」

「アルマに合う前、何回か山に隠れようとしたの。でも山の動物に何度も襲われそうになったんだから!」

「でもアルマさんと出会ってからピタリと大人しくなったわ。あれは不思議だったわね」

あぁ、そういうことでしたか。

確かに山の皆は、とっても警戒心が強いのです。

だから部外者が来たら必至に拒むことが多いのです。


ですが、私の友達は別でした。

友達の友達は、友達になる資格ありです。

なので山の皆は二人への警戒を解いたのでしょう。私の友達だから。



……山の皆。

約束、破っちゃったな。戻るって言ったのに、また会えるって言ったのに。

戻りたいな。

また、会いたいな__



「……そういえばアルマ?」

少し黙ったからか、ニーミアが話しかけてきます。

「うん?」

「今日まだ太陽が出てない頃なんだけど、()()()()()()この家近くに来たの」

「……群れ?」

まさか。

私は淡い希望を捨てきれず、起き上がろうとします。実際それは無理でしたが。

「痛っ!!」

「アルマ、今は動かないで。お姉ちゃん」

「ええ、そのつもりよ」

ヴェルニスが目配せし、ニーミアが立ち上がります。


そのつもり?

どういうことでしょう?


ガチャリ。


ニーミアは入り口とは別のドアまで行き、その取っ手を回します。

「あなたたち、入ってきなさい」

そして、ドアの向こうへ声をかけます。


『ナー』

「……その声!?」

いや、鳴き声でしょうか?

ともかく私はその音に反応し、また体を動かそうとしました。

「痛たっ!!」

「アルマ! 動くなって言ってるでしょ!!」

「……はい。ごめんなさい。」

ヴェルニスの言うとおりに、私はその場で力を抜きました。どのように動いても痛む体はなかなか不自由です。


ともあれ、私は改めてゆっくりと声をした方へ目を向けます。

そこには__



『ワンッ!』

『ガウ!』

『ナー』

『チュンチュン』

__たくさんの動物がいたのでした。


「……みんな。」

私が安堵の表情をすると、皆は私へと向かってきます。

どうやら、怒っているようでした。

『ガルルルル!』

「ご、ごめんって……」

『フシャーッ!!』

「う……猫さん、毛を立てないで……」

『チュンチュン、チュンチュン!!』

「……うん。でも私、後悔はしてない」

そう、何も後悔は無い。その言葉に皆が黙ってしまいます。


私は言葉を紡ぎました。

自分の思ったように。

もう、()()()()()()()()()言葉で。


「確かに今回は、こんな怪我しちゃった。けど、それで守れた人がいた。だから私は……例えあそこで死んだとしても、後悔しなかったと思う」

話している内に、部屋がシンと静まり返ります。

山の皆だけでなく、フェリス達も黙って聞いていました。


「少しでも、魔女は怖くないものだって分かってくれたらよかったんだけど……逆に、みんなを怖がらせちゃったかな。フェリスにまで庇ってもらっちゃったし」

「アルマ!! 私は私がやりたくてアルマを守ったんだよ!」

フェリスが私を咎めます。温かい言葉。とっても嬉しい。

「……ありがと、フェリス」

「えへへー」

フェリスが笑顔になると、つられて私まで笑ってしまいます。今は表情筋が焦げてて痛むけど……いつかまた、笑い合いたいな。


いつかまた、笑い合える。

こうして生きてるんだから。

「……うん! どうせ生きてるんだから、もっと皆と楽しく過ごしたい! これからたくさん楽しいことして、『こんなこともあったね』って笑い合いたい!!」


私がそう言うと、皆が笑いました。

「アルマ、私も!」

「私は……スクラップにされて、もう嫌になってた。でも、アルマや皆とだったら一緒に居たい!!」

「ふふ、ヴェルニス。私も同感」

「もう皆、言うまでもないわね♪」

そう。言うまでもない。


皆、互いに一緒にいたくて此処にいる。

一緒に生きていたくてここにいる。


これから課題は山積みです。

どこに住もうか。そこでは魔女は暮らしていけるのか。

フェリスの親……エティールノは、私達にどう仕掛けてくるのか。

もし仕掛けてくるなら、どう対処するべきか。


いずれにせよ、もう()()()()()()()()()

皆を守るために、私は魔女として生きていく。

沢山の人と対立し、諭し、共に生きていく。

皆と一緒に、生きていける世界を目指す。


それはとても難しいことかもしれません。

今回のような危機だってあるかもしれない。

皆が、危険な目に遭うかもしれない。


その時は、私が助けるんです。

()()()()()



……そんなことを考えながら、私は一日を皆で過ごしました。

皆で話し合って、笑い合って。ここにいる誰もが、私こと魔女を認めてくれていました。



__いつの日か、全ての人間が私を赦してくれる。

そんな日を願って。



ありがとう。

さようなら。

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