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世界を詠う慈悲の魔女  作者: 『H∀Qqy∃ИD』
28/32

独立


※第二の『真理コード』の停止を確認※


※起動します※



※ようこそ、マスター※

※マスターを検索中※


※マスターを検索中※


※マスターを__



「う、うぅ……」

何もない空間で、アルマは……


いいえ、()()


目を覚まして、キョロキョロと辺りを見回しました。

「……ここは?」

見渡す限り白、白、白。

まるで終わりが見えない白に、私は思わず立ちくらみを起こします。


そして同時に思い出しました。さっきまで、私が何をしていたか。

「あっ……フェリス!?」

私を庇い、上から覆いかぶさっていてくれたフェリス。

彼女がどこにも居なかったのです。


※マスターを特定しました※


「ひゃっ!?」

私は飛び退き、警戒して辺りを見回します。

突然、どこかから声がしたのです。


※マスター権限所持者・()()()()()


「だ、誰……?」

どうやら声は、私の頭の中からするようでした。

私はキョロキョロするのを止めて、声と向き合おうとします。


※お手元の魔導書より操作してください※


魔導書?

って、もしかしてコレ?

私はスカートのポケットから、魔導書を取り出します。

フェリスと見つけあの魔導書です。


……実はあの魔導書、とんでもない代物でした。

あの後、私は魔導書を解析したんです。どんな魔法が書かれているんだろう、私にも使えるかな、もっと生活が便利になったらな__

そんな、期待と好奇心を込めて。


その結果、書かれている内容が明らかになりました。

まだ私には使えませんでしたが、その魔法は、とても恐ろしいものでした。


名付けるなら『真理コード』。

世界を改変し、宇宙の法則を利用し、現実を捻じ曲げ、それを真理として定着させることができる魔法。

例えばテレポートだったり、重力を操ったり。

一度使ってしまえば世界の法則が乱れる魔法が、そこには載せられていたのです。


ただ、私にはこの魔法の使い方が分かりませんでした。

知ろうともしませんでした。

ずっとスカートに隠して、誰の手にも渡らせないつもりでした。


そんな魔導書が今更、なぜ?


※詳細含めお手元より確認できます※


私の心を読んだように声が響きます。

……いえ、読むまでもないかもしれません。

例えば、既に私の中に『真理コード』が埋め込まれて。私の要望に応じてアドバイスしてくれる、みたいな。


「……それ、なんか怖いな。」

そう口にした直後でした。



※自動ヘルプ機能をオフにしますか?※


「……え、そんな細かいことできるの?」

案外便利だった。

とりあえず、私が訊きたい時だけなにか言ってほしいかな。


さてと、確か詳細でしたね。

魔導書をパラパラめくると、そのページはすぐに見つかりました。


それを見て、私は息を呑みます。



『マスター・アルマの身体状況』

その見出の下に、絵が描かれていました。服を着た人のような、けれど中身が真っ白な人型の絵。

私が驚いたのは、その全体が赤く点滅していたことです。


『身体異常・火傷(進行度7)』

……やっぱり。

私は確信します。ここに描かれている絵は私。

赤い部分が、負傷した部分。つまり私は現在、全身に火傷を負っている状況です。

それと、横に書かれた身体異常。

この進行度っていうのは……?


※マスター・アルマの身体異常の進行度です※


※1から10で算出、人間の致死進行度は4です※


……だ、そうです。

つまり私は、もう死んでてもおかしくないんですね。




「……ん?」

そこで、新たな疑問が生まれます。

そんな火傷を負っているのに、どうしてここに立っているのでしょう?

今、私の身体には傷一つありません。ですが確かに、私は大火傷をしていたはずです。

というか、フェリス達は何処に?


……うーん、教えて偉い人っ!!


※お手元の魔導書より詳細を確認してください※


あっ、はい。頼ろうとしてごめんなさい。

しかしページをめくると、すぐ次に詳細が書かれていました。なんという偶然。


「ええーと……『魔法の使用により一時的に空間を保持状態として術者の精神のみ機能、動作する環境を生成し__』」。



要点を掻い摘んで話します。

私は現在、私の精神世界にいるようです。

現実にいるフェリスや私は時間が止まっていて、私だけ……さらに言うなら、私の精神だけ時間が進んでいる。


つまり、事態は一向に好転していません。


していない、けど。



※魔法の使用により、現実の改変を行えます※


……そう。

私には現在、真理コードがある。


この力を使って、現実を改変すれば。

例えば私を、マグムのような凄い魔女にすれば。

例えばここで、周りにいる人間の命を全て奪えば。

そうすれば私は助かる。


※人間を殺害しますか?※


逆にもし、ここで何もしなければ……私は、死ぬ。


※人間を殺害してください※


魔力の不足は……多分、考えなくていい。

真理コードがあれば、いくらでも融通が効きそうです。


※人間を殺害しましょう※


そうなれば、もう怖いもの無しです。

真理コードがあれば私は__



「いいえ」


私は、首を振りました。


※真理コードの使用を推奨します※


「いいえ」


※真理コードを使用しなければ、あなたの命が奪われる可能性があります※


「ええ」


※真理コードを使用しましょう※


「いいえ」


※あなたの命が奪われてもよろしいのでしょうか?※



「ええ」


私は、頷きました。

自分の命が奪われてもいいと言ったのです。


「私がそうやって人を殺めるのって、変じゃない?」

そう、変。彼ら人間は単に、私が怖いだけなのです。

もし私が人を殺めてしまえば、魔女は本当に怖ろしいものになってしまう。

そんなこと私はしたくない。そうやって、魔女を怖いものだと思わせ続けるのは嫌だ。

だから、私は死を選ぶ。


確かに死ぬのは怖い。

怖いけど、それだけ。私はもう十分生きた。


それに、私には友達がいる。

お兄さん、シエラさん、ルディーノさん、ヴェルニス、ニーミア__

彼らなら分かってくれるはず。

魔女が、本当は怖いだけの存在じゃないってこと。

私のような、人間が大好きな魔女もいたってこと。


そしてフェリス。

彼女には感謝しても仕切れない。

初めて友達になってくれて、初めて魔女を赦してくれて、最期まで私を守ろうとしてくれた彼女。

例え私が死んでも、フェリスのことは絶対に忘れない。




()()()()()()()真理コードを使用しました※


「……そう」


※真理コードを使用しましょう※


「いいえ」


※人間に命を引き渡すのですか?※


「ええ」


※命が大事ではないのですか?※


「いいえ」




※真理コードを終了しますか?※



「ええ」




プツン。

私の頭の中で、何かが途切れる音がしました。


これでおしまい、か。

私はちょっぴり、ほんのちょっぴり後悔していました。


やっぱりもうちょっと生きていたかったなぁ、とか。

死にたくないなぁ、とか。

フェリスのこと助けたかったなぁ、とか。

皆にさよならを言いたかったなぁ、とか。


……でもそれ以上に、これでいいと思っていました。

私の人生、何も間違っていなかった。

何も間違った選択をしていなかった。

とても楽しかった。



辺りが暗くなると同時、身体に激痛が走ります。

あぁ、そっか。火傷してたんだっけ。

私は顔を歪ませつつ……ですが、同時に安堵します。

身体全体に、何かが抱き付いている感覚もしたのです。


……フェリスだ。

私と一緒に死んでくれた彼女。

私のことを、いちばん好きでいてくれた__



意識が、覚醒する。



※『真理コード』停止※


※権利者の意思を確認※




※意志の確認完了※


※『真理コード』を抹消__※



※プログラム再構成完了※


※プログラム名※





※『奇跡コード』※



__奇跡。

運命の積み重ねによる現実の改変。

本来ならあり得ないはずの未来を__ねじ曲げる。

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