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世界を詠う慈悲の魔女  作者: 『H∀Qqy∃ИD』
26/32

燃え尽きた街と魔女


目が覚めても真っ暗なままだった。


目が開けられないだけだった。


なぜ目が開かないのか?


……瞼がこびりついていた。



目を無理やり開けようとするとバリバリ、という嫌な音がする。

それと同時、目に激痛が走る。

それでも何とか、私は……アルマは、目を開けた。


まず見えたのは崩壊した街。

燃え尽きた家々。

そして、黒焦げになった自分の体。


喉が乾いた。

全身が痛かった。

辛かった。

苦しかった。

誰かに救ってほしかった。

誰かに、誰か……



「おーーーい!! 居たぞーー!!!」


遠くから、人の声がする。



「魔女だ! 街を燃やした魔女が居たぞーー!!!」


(……え?)

その声に一瞬耳を疑う……が、すぐ理解した。

フェリス達と触れ合って、忘れていたのかもしれない。

人は魔女を嫌う。なにか理由をつけて、アルマを嫌う。

なにか理由をつけて……殺そうとする。


アルマはすぐ、街の住民に取り囲まれた。その全員が鈍器や銃等で武装していた。

「ふむ……やはり魔女による火災だったか。」

その中から、一人の男が出てくる。

無精髭にやや剥げた頭の偉そうな男。


「しかし……()()()()()()()()。なぜ、彼女が魔女だと……?」

「これほどの火災で生き残っているのだぞ?魔女でないわけがあるまい」

エティールノ。

その名字は、何処かで聞き覚えがあり……

(……フェリスの、お父さん?)

そう。

エティールノというのは、フェリスの名字。

つまり、アルマの目の前にいるのは……


「……エティールノ街長、どうするのですか?」

住民の一人が、男……エティールノに訊く。

「どうするか、だと?」

「は、はい。随分傷付いていますし、まずは治療を……」

「フン、そんなことはしない」

一蹴して、エティールノはアルマへ向く。

そしてアルマへ、住民へ、そこにいる全員へ言い放つ。


「この魔女を殺せ。今すぐ」


(……あぁ、来た)

エティールノの姿は見えないが、アルマは思う。

ずっと人との関わりを避けてきた。最悪の事態を避けるため。

なんでもない理由で……殺されないため。


期待していた。

人を、皆を助ければ人に溶け込めるんじゃないか。

フェリスのような人が沢山いるんじゃないか。

そうして、魔女か受け入れられるんじゃないか……



「殺す!?」

「あぁ、やれ」

何でもないかのように、エティールノが言い放つ。

「この街を焼いた魔女だぞ。簡単だろう?」

「いや……しかし……」

エティールノ以外の住民は皆、戸惑っているようだった。

当然だ。誰もが魔女を恨んでいるが……誰もが、魔女を殺したいと思っている訳ではなかった。

誰もが、人殺しにはなりたくなかった。



だから。


()()が来ると、誰もがソレに目を奪われた。



「駄目えぇぇぇーーーっ!!!」


叫んだのは

同じ、エティールノだった。

「……おい、何をしている?」

その光景が目に入った時、真っ先に不安を顕にしたのはエティールノだった。

一人の少女がアルマを庇う。それによって、そこにいる全ての住民が戦意を失う。


「ぁ……?」

「……アルマ」

黒く焦げたアルマを抱きしめながら、少女……フェリスが言う。

「馬鹿……バカ……! なんで、こんな街……! アルマには何の関係もないじゃん!!」

フェリスが少し力を込めるだけで、アルマの体に激痛が走る。

「……えへへ」

……だが、それ以上にアルマは笑っていた。

まだこんなに、自分のことを思っていてくれる存在がいる。

限界まで汚れた自分を抱きしめてくれる存在がいる。

それが、すぐ近くにいる。



だが、二人の時間を遮る者が一人。

「おい、フェリス」

「…………」

「フェリス」

「……」

「フェリスッ!!!」

エティールノが少女の名前を呼ぶ。

フェリスは応えない。


「何故だ? 何故、()()()()()()!? お前が発端だったんだぞ!?」

フェリスは何も言わない。

「ソイツは魔女だぞ! 悪魔だぞ!? 貴様、魔女の手下か!?」

「…………」

フェリスは喋らない。


「私の顔に泥を塗りたいのか!?貴様はいい加減、自分の立場を……」

延々と怒鳴り続けるエティールノ。

それに対し、堪えきれないように呟く。

「……るさい」



「何か言ったか!?貴様は何よりもまず、親に対する態度を__」

怒りを隠す気もなく、エティールノが叫び続ける。

それに対し、フェリスはバッと顔を上げ言った。


「うるさい、人殺し!!!」

エティールノと視線を合わせる。その表情は憤怒に染まっていた。


「……何だと?」

「人殺しって言ったのよ!!」

一度始まるとフェリス自身止められない。堪えようとした矢先、口から言葉が出てくる。

「私のお母さんを殺して、沢山の人を殺して、アルマも殺そうとして……恥ずかしくないの!? 人として、街長として、何とも思わないの!?」

止める人が居ないから。

止める人が、すぐ側で横たわっているから。


「こんな親に……生まれたくなかった!!!」


__死ね、とは、言わなかった。

それを言えば、アルマが悲しむことを知っていたから。



「貸せ」


エティールノが住民の一人に言う。

「は……?」

「貸せと言っているんだ。」

「貸せ、と言うと……?」

「その銃を貸せと言っているんだ!!」

そう叫び、一人から武器を奪う。

それはなんてこと無い、オートマチックのハンドガンだった。


そう、ハンドガン。

たった一発で人の命を奪える物。


「フェリス、貴様も始末する!!」

そう言って顔を真っ赤にし、フェリス達に銃を向ける。

その距離は約5メートル。狙われればフェリスでも助からない距離。

反撃もできないだろう。

「……最低な親」

「煩い!!」

エティールノがそう叫んだ直後だった。



バンッ!


「ぐガっ……!?」

フェリスから、変な声が出た。

「ふぇ……リス……!!」

「うぐ、はぁ、はぁ……」

肩から零れ出る紅に、アルマが目を見開く。一方のフェリスは、覆いかぶさるようアルマに抱き着いた。

アルマを庇うように。銃弾が、アルマに行き届かぬように。


なんの躊躇もせず、エティールノは二人に発泡したのだ。

「エティールノ、街長……!?」

「何をしているお前ら!!」

周りが狼狽えていると、今度は彼らへ激昂する。

「魔女と、その参謀だぞ!? 殺せ!! 我々の全勢力を持って悪魔を消せ!! 悪魔共を許すな!!」

「「「っ…………」」」

全員に、嫌な空気が走る。


人は殺したくないという気持ち。

だが目の前には魔女がいる。

そして、自分達は武器を持っている。


何より……エティールノが命令している。

これまで彼らは、何度もエティールノに歯向かった者を見てきた。その末路も見てきた。


根絶対象血族スクラップ達。

エティールノが政府を動かすことで定めた事実上の犯罪者。

事実上の独裁。


あんな風にはなりたくない。

その思考が、彼らを動かした。


「……フェリス、さん……」

涙を流しながら、一人の女性が近付く。

その手には、槍を持っていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「…………」

言われても、フェリスは黙ったままだった。

それに合わせ、他の住民も近づいてくる。それぞれ武器を手にして。


「フェリスさん……」

「許してくれ……俺は、俺は……」

「嫌……!」

その誰もが心からフェリスの、アルマの殺害を望んではいなかった。

だが皆、自分のことが大事だった。皆が皆のことを大事だったがために……アルマとフェリスの二人を蹴落とすことを決断した。



…………。


「アルマ」

武器を手にした住民に囲まれ、フェリスは囁く。

「……な、に?」

「私、これで良かったと思ってる」

「そんな……わけ……」

首を振ろうとするアルマだが体が動かない。微笑を浮かべ。フェリスが続ける。

「アルマみたいに仲良くなれる友達、いなかった。アルマみたいな格好いい友達、いなかった。アルマみたいな……好きになれる友達、いなかった」

「……フェリ、ス」

「じゃあ私、もういいよ。十分幸せだった、楽しかった。ここでアルマと死んじゃっても……いいかなって、思っちゃった」

「…………」

ずっと落ち着いたトーンで、フェリスが話す。その言葉に涙を浮かべた。


悔しさの涙だった。

もっと、アルマに力があれば。

もっとアルマが強ければ。

街の皆を助けて、フェリスも助けれるぐらいアルマが強ければ……

結末は変わったかもしれない。皆、幸せになれたかもしれない。


そうならなかったのは、魔女として実力が足りなかったから。

人として振る舞ったが故に、魔法の力を鍛えなかったから。


フェリス達と……仲良くなってしまったから?



(……じゃあ、私もいいかな)

ほとんど動かない腕で、フェリスを抱きしめ返す。


フェリスと会えて、命を捨てるなら。

皆と会えて、生きるのを止めるのなら__それでいいのかもしれない。

魔女として生まれてしまったが故に、人として生きるには短命だった。

それでいいのかもしれない。


そう、これは寿命だった。

魔女アルマが、人として生きられる寿命。



__ポツリ、ポツリと雨が降り出す。


雨は嫌いだ。

何故かは分からないが、性に合わない。


その雨粒は、涙のようでもあった。

魔女が流した、大粒の雨。



(せめて、最期に知りたかったな)

ボンヤリ、アルマが思う。

山の友達は皆、雨が好きだった。

雨が嫌いなアルマは一人、仲間はずれにされた気がしていた。だからせめて、その理由だけは知りたかった__


「やれ!!!」

エティールノが叫ぶ。

それと同時に……沢山の槍が、刃物が、武器がアルマ達に向いた。


ドスッ。

…………


……



※オートシステム 起動不可※


※※エラーが発生しました※※

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