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世界を詠う慈悲の魔女  作者: 『H∀Qqy∃ИD』
21/32

集まる異端者達

・第10話をかなり変更しました。

興味があれば御一読ください。

2018/6/11

フェリスに扮装していた相手……その正体を知り、二人は困惑せざるを得なかった。

「ヴェルニス?」

「っ……覚えてて、くれたの?」

また、フェリスに扮装していた本人……ヴェルニスも、戸惑った様子で二人を見る。

そうして、三人の間には膠着状態が続__


「ヴェルニスッ!!」

大して続かなかった。

何を思ったのか、アルマがヴェルニスに向かって抱き着いたのだ。

「え、ちょ、ちょっと……」

「良かったー! あれから中々来なくて心配してたんだよ? 大丈夫? 元気にしてる? ニーミアはどう?」

「あ、あわ、あわわわわ……!」

矢継ぎ早に質問され、目を回すヴェルニス。

こうして歓迎されることが久しくなかったので、軽いパニックを引き起こしているのだ。


「……ねえ、あなたヴェルニスっていうの?」

そのやり取りを近くで見ていたフェリスが口を開く。

「あなた、偶に私を見てるわよね? 物陰に隠れて、こっそり。」

「…………」

ヴェルニスは話さない。というより、目を合わせない。

アルマに抱かれていることをいいことに、なんとかフェリスを無視しようとしているみたいだった。

「何なの? なんで私を見てるの?」

「…………」

「理由があるなら言ってよ!」

「…………」

「黙ってたら、何にも伝わらないよ! 何でもいいから私に伝えて!」

「……う、ううぅ……」

ヴェルニスは喋らない。

代わりに出てきたのは、何かを堪えるような嗚咽。



そして、返ってきたのは明確なこたえ

「簡単よ。フェリスさん……あなたを恨んでいるから」


「わあああああぁぁぁぁぁっ!?」

「アルマちゃん、いい加減に慣れたら?」

後ろから聞こえた声に驚くアルマ、それを見て失笑するルディーノ。

ルディーノと同じようにして入ってきたのは……ヴェルニスの姉、ニーミアだった。

「どうやって入ってきたの!?」

「鍵、空いてたわ。それよりフェリスさん……いえ、会長の娘さん?」

驚くアルマを気にせず、ズカズカと歩いていくニーミア。

アルマの家なのに。デジャヴである。


「私を恨んでる?」

冷や汗を流し、フェリスが復唱する。

その様子はまるで__何故自分が恨まれているのか、理解しているようだった。

「あなた、『根絶対象血族スクラップ』って言葉は知ってるかしら?」

「スクラ……?」

「あなたのお父さんが自分勝手に定めた烙印よ。それを押された家族は人権を失って__」

「あぁ、根絶対象血族こんぜつたいしょうけつぞくのことね」

「……それを包み隠さず言葉にするのは流石ね。」

根絶対象血族。その言葉を直に聞き、苦虫を噛み潰したような表情をする。

一方のフェリスは、さもどうでもいいような口調で話した。


「馬鹿馬鹿しいよね、ほんと。それを取り決めるお父さんも、それに従う皆も」

「……でも、それで実際に死者が出てるとしたら?」

「…………ほんと、最低な親って思う」

それを聞いて、アルマが反応する。「ちょっとフェリス……!」という声と、「あらあらフェリスちゃん♪」という声が被った。


「自分のお父さんでしょ? 最低なんて言っちゃ……」

「だって最低なんだもん!自分勝手で、自己中で、馬鹿でどうしようもなくて……!」

「でもフェリスちゃん、たった一人の親でしょ? 大切にしないと♪」

「知らないよ!!」

ルディーノも諭そうとするが、フェリスは止まらない。

「あんな親いらないよ! あんな親……あんな奴……!」

それどころか堪えきれないように、顔を真っ赤にし、そして次の一言を__


「死ねば__」

「フェリスッ!!」


その一言を言い切る前に、大きな声が部屋に木霊する。 

アルマだった。


「駄目だよ、フェリス!! 自分の親だとしても……人にそんなことを言ったら、駄目なんだよ」

「…………」

「人を、他人をそんな風に傷付けたら……後悔する。絶対に。だから間違っても、死ねばいいなんて言っちゃ駄目」

「……それは、私達への言葉でもあるのかしら?」

二人の会話に首を入れたのはニーミア。

「前も、あなたは静止してたわね? ヴェルニスが『死ねばいい』って言ったのを」

「……うん。そんな言葉、使ったら駄目」

ニーミアから睨まれてもなお__反感を買う覚悟で、アルマが言う。


「私……しばらく、ずっと一人だったの。一人で起きて、一人で過ごして、一人で寝て……友達はいたけど、こんな風に話すことは無かったの。」

確かに、森の動物達はアルマの心を癒やしてくれたかもしれない。

マグムも……最近は会ってないが、フェリス達に会う前は偶に会話をしてくれた。

だが、違った。


違ったのだ。

だから偶にアルマは、無性に人恋しくなったのだ。

人の温かさなんて知らなかったはずなのに。


「皆と出会えて、私はよかったと思ってる。だから私はこの出会いを大切にしたいし……皆がいなくなったら、寂しい。だから、その……」

そこまで言って、アルマは困ったように言葉を濁す。


話している内、自分の言いたいことが分からなくなってしまったのだ。

確か自分は、『人に「死んだほうがいい」なんて言ってはいけない』ということを伝えたかったはず。

そこから少し話が逸れて、でも話を戻すにはどうしたら__



「……じゃあ、それでいいんじゃない?」

話が滞っているのを見切り、ニーミアが横槍を入れる。

「皆がいなくなったら寂しい、それは私も同じよ。でもフェリスさんの親……会長がいなくなったところで、私は悲しくないわ?」

「……あっ!ううん、そんなことはない!!」

しかしその横槍のおかげで、アルマは話を戻すことに成功する。ニーミアもそれを狙っていたのか、微笑んだあと静聴した。


「きっと、フェリスのお父さんも同じような人がいるはず。あなたに会えてよかった、あなたがいなくなると寂しいって、お父さんに対して思ってる人もいるはずだよ」

そう、例え沢山の人から嫌われていても__その人を愛する人は、いるはずなのだ。


例えばアルマ。魔女であるアルマは嫌われ者だが、それに負けないくらい沢山の友達がいる。

だからアルマは、死んでいい存在なんかじゃない。


「だから、そんな人を……誰かが愛してる人を、死んでいいなんて言っちゃ駄目。死んでいい人なんて、この世に一人もいないんだよ」

そう言いながら、アルマは夢想する。

もしアルマが危険に晒されたら、アルマが死ぬようなことがあったら……フェリスは、アルマを助けに来てくれるだろうか。

ニーミアは、ヴェルニスはどうか。

もし、この三人の誰かがそうなったら……アルマは、身を投げ出してでも助けに行くだろう。


それと同じはずだ。

誰にでも、愛してくれる人はいる。

その人のために、身を投げ出す人がいる。

だから__他人に向かってでも、死ねばいい、なんて言ってはいけない。



「……じゃあ、私はどうしたらいいの?」

口を開いたのは、フェリスだった。

「どうしたらって……」

「最低な親を持って、そのせいで恨まれて、でも私自身じゃどうすることもできなくて……私、どんな顔して生きていけばいいの?」

その目は、潤んでいた。

思い悩めば悩むほど、涙が溢れるようだった。


「目の前でひどい目に遭ってる人がいて、それに手すら差し伸べれなくて……私、その人たちになんて言えばいいの?」

その弱気な言葉に、アルマも言葉を返すことができない。後ろで聞いていたニーミアも、何も言わず佇むだけだった。

どうすればいいか分からず、アルマはその場でオロオロとし始め__



そんなフェリスに声を掛けたのは、第三者だった。

「いいよ」

先程から、ずっと机に座っている一人の少女。

フェリスと全く同じ服を着た、ヴェルニスだった。


「ヴェルニス?どうしたの?」

「アイツの子供……フェリスだっけ。その子のフリをしてて分かった。フェリスは何も悪くない」

ニーミアに怪訝な顔をされても、ヴェルニスは続ける。

その視線は相変わらず鋭いが……いつもより少しだけ、柔らかい気がした。

「こっそり聞いたんだよ。私、盗み聞きとか得意だから」

「聞いた?」

一旦落ち着いたフェリスが訊く。


「フェリス、聞きたい?」

それは質問というより、確認のようだった。

フェリスが頷く。そして全員が、ヴェルニスの話に耳を傾ける。

「じゃあ、始めるね。これは、私がそこのルディーノって奴に会ってからの話なんだけど__」

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