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世界を詠う慈悲の魔女  作者: 『H∀Qqy∃ИD』
13/32

探索者

フェリスとあの会話をしてから一週間。



アルマは家で紅茶を淹れていた。

次フェリスが来たときの為、練習しているのである。

「うーん……? 自分じゃよく分かんないかも」

だが自分で淹れた紅茶は、自分ではイマイチ味が分からない。

溜息を吐きカップを置こうとした__その時。


悲鳴が山に響く。

「キャアアアアァァァァッ__!」

「うわっ!? ……あ、やっちゃった。」

びっくりして、自分のスカートへ紅茶をひっくり返してしまう。

しかし、アルマが着ているのは魔法の服。紅茶をひっくり返すくらい何とも無いのだが……


「そんなことより今の悲鳴、フェリス?」

いや、ニーミアかもしれないしヴェルニスかもしれない。

甲高いその声は誰のものか分からなかったが、もし自分の知り合いだったら……

「す、すぐ出なくちゃ!!」

背筋がゾッとして、アルマは家を飛び出す。



結果から言うと、急ぐ必要はなかった。


悲鳴を上げた人物は、フェリスでもニーミアでもなかった。

ヴェルニスでもない。

悲鳴を上げたのは__アルマの知らない女性だった。

山中には似合わない白衣に、黒のミニスカート。見る人が見れば、医者か何かのフィールドワークと勘違いするだろうか。

「い、いやっ!」

何かに怯えるように、その女性は後ずさる。肩まで伸びた青髪が揺れる。

彼女の目の前、茂みの奥には___


金色に光る目が、六つ。

『ガルルルル……』

『グルル……』

『…………』

三匹の何かが、そこに居た。

アルマがそれを見つけると同時、その三匹は茂みから飛び出し__


「駄目っ!!」

それを見つけたアルマも同時に、女性とソレの間に飛び出した。



ガリッ。


「いっ……!」

「ワンッ!?」

噛みつかれた腕から、血がダラリと垂れる。

茂みの奥から飛び出してきたのは、灰色の狼達だった。

「いたた、駄目でしょ? 人に飛びついたりしたら」

「ガルルル……」

「君は一番お兄さんなんだから、皆を纏めないと」

「グル……」

「次男の君も。危ないと思ったら、お兄さんを止めていいんだよ?」

「グルル……」

「最年少の妹さんも。飛びついちゃ駄目!って思ったなら、君だけでも踏み止まらないと」

「クゥーン……」


それぞれ顔見知りのようで、アルマは三匹を軽く叱る。

「……それじゃ、気を付けてね。」

「「「ワンッ!!」」」

やっと開放されたと言わんばかりに三匹が茂みへ戻る。その様子はまるで支配者と奴隷……というより、先生と生徒だった。デジャヴを感じる。

無論、アルマが支配者もとい先生である。


「……ふう。行ってくれたね」

狼たちを見送り一息つくアルマ。あとは後ろの女性をどうするかである。

「あ、あの。怪我はありませんか? 大丈夫?」

「え、えぇ……って、怪我したのは貴方じゃない! 腕は!?」

フェリス達と話したせいか、アルマの人嫌いはかなり緩和していた。今回のように話しかけれる程度には。

「腕……?」

「ほら、噛みつかれて血が出てる! 今すぐ治療するからそこに座って!!」

「いや、大丈夫。このくらいの怪我なら__」

ほんの少し血が出ているだけなので騒ぐ程でもない。

そう言いかけたところで、相手の目の色が変わった。


「ふざけないで! 放っておいちゃ駄目でしょ!?」

女性が怒鳴る。その突然の変貌に、アルマは思わず後ずさってしまう。

「あ……えっと、あとで治療するので……」

「後でって何時? 何分後? 何秒後? 地球が何回__何かあってからじゃ遅いのよ!?」

「う、うん」

「ほら、包帯巻いてあげるから! そこに座りなさい!」

「は、はぁい……」

まくしたてられるように、その場で座らされるアルマ。


しかし治療は非常に早く終わり、アルマは再び驚かされることになった__


一通り女性の治療が施され、「ふぅ」と溜息を吐かれる。

「ごめんなさいね。私、怪我人がいたら放っておけなくって。つい無礼な口を……」

「いや、それは全然大丈夫ですけど。コレ、上手ですね」

自分の腕に目を向けるアルマ。不自由を感じない程度に包帯でガッチリ固定、止血が施されている。尤も魔女であるアルマは体の再生能力も高く、狼の噛み跡くらい一日で完治するのだが__


人前でそんなことを言えるはずもなく。

「こら! 傷跡を触らない!」

「すみません……」

とりあえず頭を垂れておくアルマだった。



その後、辺りの丁度いい切り株に腰掛ける。先日、フェリス達のためにアルマが用意したものだ。

「私ね、街の医療を担っているの」

「医療?」

聞き返されると、女性は胸を張って言う。

「街には病気の治療をできる人が少ないのよ。だから私は、数少ない医者の一人なの。まあ、まだ病気の対処とかはできないけど勉強中。どう?」

「どうって……」

「凄いでしょ?」

「……うん」

そんなの魔法ですぐ治せばいいのに……とは、口に出さない。


ここだけの話、魔法は恐ろしく都合のいい技術である。

本人の素質さえあれば念動力、超常現象、生体操作など何でもできてしまう。魔法を使う本人に負担がかかるのが玉に瑕だが。

アルマはそれを常日頃、無意識に、自然に使っていた。

傷の治療や病気の回復なんて日を待たずとも、チチンプイプイで一瞬なのである。


そんなことを知る由もない女性は、誇らしげにアルマへ語る。

「医学を扱う権利を得るには、会長が決めた試験を受けなくちゃいけないの。それが大変で、そもそも医療に興味を持つ人が少なくて__」

「うんうん」

アルマが頷いたのを見つつ、女性の話はヒートアップしていく。

「__だから、私の父は薬草を栽培するようになったの。麻薬じゃないわよ、薬草よ? ちゃんと特許も取ってて__」

「ふ、ふーん。凄いね」

「__それでね!?この私が医療を学べば、きっとこの街のためになると」

「……ちょ、待って! ストーップ!!!」

……女性が語り始めてから約二十分。あまりにも彼女の一人語りが長かったため、アルマが終止符を打つのだった。


突然大声で話を止めたアルマに、今度は女性が驚く。

「…………えっと?」

「あ、その、長くなりそうだなーって」

「もしかして、話に興味無かったかな? それは、その……ごめんなさいね」

「いや、そうじゃなくて!」

そして、シュンとする女性を慌てて元気付ける。

「その、医療に興味があるのは分かったんですけど……なんでこんな山の中に?」

「……あぁ! 私、『開拓班』のメンバーなのよ!」

アルマが訊くと、女性は再び誇らしげに言う。


開拓班。

その聞きなれない言葉に、アルマが首を傾げる。

「開拓班?」

「え? 貴方知らない?」

「い、いや!アレだよね、あの有名なやつ……」

無論、アルマが知るわけない。

「でも詳しくは知らないから説明してほしいなーって……」

「そ、そう? それなら丁度いいわ! 何と言ったって私が! 開拓班の医療担当だものっ!!」

幸運なことに、女性はアルマの言葉で舞い上がっていた。豚ではなくても、おだてれば木に登るくらいには。

そんな女性の反応に、内心胸を撫で下ろすアルマであった。『自分で調べろ』なんて言われたら手詰まりだったからだ。


だが女性の話を聞いて、アルマは思い知ることになる。

その開拓班が、自分にとって有害な存在であることを。



※原因不明のエラーが発生※



※原因不明の____

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