童話『魔女』
__あるところに、一人の女の子が住んでいました。
女の子は魔女でした。
魔女は、皆から嫌われていました。
魔女とは人を食べ、災厄をもたらし、破滅を呼ぶと信じられていたからです。
村を追いやられた魔女は、山の中で一人、家を建てて暮らしていました。
悲しいことはありません。
魔女は、小鳥と一緒に歌います。
子犬と一緒に野ばらを走ります。
猫と一緒にお昼寝をします。
しかし、家に帰ると誰もいません。
それを目の当たりにする時、魔女は悲しくなるのでした。
そんなある日の夜。
村を、火事が襲いました。
山の上から見える炎を見て、魔女は驚きました。
『今すぐ、皆を助けに行かなくちゃ!!』
そう。
魔女は人を食うことも、災厄を呼ぶこともありません。
魔法が使えること以外、人間と何も変わらないのです。
村についた魔女は、まず火を消し始めました。
得意の魔法で、沢山の水を作り出しました。
魔女は、目眩がしました。一気にたくさんの魔法を使うことで、疲れてしまったのです。
しかし魔女は構わず、魔法で安全な道を作りました。
『みんな! ここを通って逃げて!!』
魔女は、生き残っている村人へ叫びます。
村人は魔女によって、炎上する村から逃げ延びることができたのでした。
火事は、一晩中続きました。
魔女はずっと、火災を食い止め続けていました。
朝日が登る頃、ようやく火事は収まります。
一晩中、魔法を使い続けた魔女は地面へ寝そべりました。
疲れてもう、手足に力が入りません。
そのとき。
『いたぞ! 魔女だ!』
村の門から、村人達の声が聞こえます。
『あいつが、俺達の村を壊したんだ!』
村人達は、火事の原因が魔女だと思い込んでいました。
魔女は村人に説明しようとしますが、お腹と喉に力が入りません。
それくらい疲れていたのです。
やがて、魔女は村人たちによって処刑されました。
沢山の槍で串刺しにされた魔女は、それはそれは悲しい姿でした。
こうして魔女はいなくなり、村人たちは平和に過ごしましたとさ。
めでたし、めでたし。
ゆるサナイ。