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オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!  作者: 羽田 智鷹
二章 交錯・倒錯する王都
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第二章 三十八話 遠くにいる者は

少し手直しが雑になってるかもしれませんが、早く二章を終わらせるためなので……

 

 ギルバードさんによると、戦いになった"邪翼族"は三人でそのうちの一人をギリギリのところまで追い詰めたらしい。

 というか、その一人を追い詰めたところで二人が加勢に来たらしいのだ。


 「ギルバードさん、それでは"ロット"は終わらないのですよ」


 確認するかの様にスチュアーノさんが言った。


 「スチュアーノ、吾輩は何度も言うてるやろ。"ロット"は民が愉しむものであって、吾輩らが気にするものではないと」


 ギルバードさんの諭すような強めの発言にする。


 「すみま……」


 スチュアーノさんが謝ろうとしたところでシスが間髪入れずに油を注ぐ。


 「この人、自分のところに票がなかなか入らないから結構気にしてるんすよ」


 「シス……。だったら、シスの人気度の問題もあるかもしれません。貴方が陣営を移動するという異例の行動をするから」


 「こっちにも色々とあるんすよ」


 片手を胸においてシスさんが自身有りげに言う。


 「どうせ、ろくな内容でしょうし」


 「へへっ」


 シスさんは。結局何がしたかったんだ……。

 

 「えっと、フィルセくんだったかな。スートラには戦火は及んでいない。大丈夫だ」


 それはありがたい。


 「騎士もう一人は寄り道をしていくそうだが、吾輩は王都へ戻るつもりや」


 スクリーンに映るギルバードさんの顔は確かに疲れでやつれているように見えた。


 「そうだ」


 シスさんが何か閃いたように声を出す。


 「急に何だ?」


 「ギルバードさん。王都に帰る前に寄り道でクルスクの街に寄ったらどうですか? ここらで有名な温泉街だし。疲れを取るには最適だと思いますよ」


 スクリーンの向こうでギルバードさんが顔をしかめている。


 「シス。お前の目的はなんだ?」


 「やっぱりそこ気になるっすか。しょうがないっすね。温泉街の近くに鉱石の取れる山があるんすよ。最近スチュアーノがあのこの世に七種類しかない貴重品アイテムの瑪瑙が破壊されまして、そのせいか最近スチュアーノおかしいし……。ギルバードさん、ついでに何か見つけて来てくださいよ、この人のために」


 「へえ、そうなのか」


 そう言って、スチュアーノさんの方へ視線を向ける。


 「確かにそれは事実ですけど、僕はもとから変ではありませんよ」


 「ハハッ。我はそんな石っころに興味はないし、スチュアーノとも陣営でいえば協力する必要は……」


 「その温泉街で一週間恋人と過ごすと、一ヶ月間はその関係が続くとか」


 ゴゴゴーーウ。

 背後から何やら不穏か気配を感じる。


 「我がそんな効果を信じると思うか?」


 「なんなら、俺が同行いたしましょうか」


 「いらん、やめろ。やっぱり寄るの辞めるぞ」


 流石にシスさんは、ギルバードさん相手にはなかなか話の主導権を握れないようだった。

 なにより、シスさんの軽口をきっぱり断られている。

 

 それにしてもその街に二週間いたら、二ヶ月は恋が続くのだろうか。

 それなら、そこに永住したらやばくね?

 

 「そういえば、温泉街にはギルバードさんが研究してる他の種族についての文献もあるらしいですよ。紅翼族は温泉好きらしいのでね。もしかしたら、エルフの姉ちゃんが隠居していたりして」

 「……。しょうがない、お前の冗談に乗ってやる。クルスクの街だな。それと、我が貴重品アイテムを手に入れれるかは別だから、期待しとくなよ」


 「ギルさん、ナイスです」


 「シス、お前とはもう当分喋らなくても良さそうだな。それとシェレンベルク。最近王都でも不穏な動きがあるらしいな。気をつけとけよ」


 「ああ、何かあったらこちらから連絡する」


 「そうかい、では我はこれで。若き皆さんがこれからの王都を担っていくことを考えると、感慨深い気分になりますな。では」

 そう言って、通信が切れた。

 

 スートラの街に被害が及んでなくて心底ホッとした。

 今や俺たちは、スートラにいた時には考えられないような生活をしているが、このような生活をしている反面、実はスートラでは重大なことが起きていて、それから俺が目をそらしているだけなのかもしれないも思っていた。


 それにこの五大明騎士でも苦戦するような相手を到底、一街の騎士団で対処できるとは思えない。

 あの時聞こえた様々な声は何を意味していたのか未だにわからない。

 しかし対極の感情が存在していたあの場には確かに正義と悪のような関係があったのだろう。

 正義も悪も紙一重の相対的な関係だ。

 

 ここ王都では、魔法はおろか武器でさえ使えない。

 しかし、そのことが逆に魔法を使えないというディスアドバンテージを持つ俺にとっては望んでいた公平な場なのではないのか。


 魔法が使えないということだけで上から見てくる輩がいないだけで、なんと過ごしやすい環境か。


 よく考えてみれば分かるはずだ。

 魔法というものが今日の生活に根深く浸透している中で、ここでは魔法というものの概念がない。

 むしろ体術が使える俺にとっては、望み以上の環境なのではないか。

 

 しかし、こんな望んでもいいような環境にいながらも違和感を抱えていたのを俺は自覚している。

 街中で武器を見かけないことに、不安なのだ。

 魔獣と戦う感覚を忘れてしまうのではないか。

 ただ毎日が同じように過ぎ去っていくのではないか。

 

 

 俺は気づいてしまったのだ。

 

 ただ守られているだけでは俺の望む環境ではないのだ。

 

 確かに王都はこの大陸一平和なのかもしれない。

 しかし、それは俺にとってはキャパシティーオーバーなのだ。

 平和すぎる。

 

 最近は不穏な動きがあるらしいが、それも大胆なものではなく、小細工じみたもの。

 例のウルス・ラグナでさえ、ましてや俺に敗れた者。

 この王都への侵入など不可能にほど近い。

 それは、俺が数日ここで過ごした実感だ。

 

 俺は魔法が使えない。

 しかし戦うことはできる。

 俺は魔獣と日々遊ぶような感覚で力をつけてきた。

 根っからの好奇心旺盛な少年だ。

 

 戦闘の高揚感と緊迫感、駆け引きの面白みを知っている。

 

 たとえ俺がここにいようとも、この街の外では日々戦闘が行われている。

 あのスートラの日々忙しく、決まった生活をしていない方が毎日が鮮やかだった。

 もちろん、その分危険は存在する。

 

 しかし、この街では外でのそのような事実さえ実態味を帯びない。 

 つまり見せかけの平和。

 

 確かにここに居れば、外のことは気にならない。

 しかしそれはただ目を背けているだけではないか。

 

 ここにいるだけで、外の街に自らの力で出ることができなくなる。

 拘束的な呪縛。

 そのようなことをミオとの遠出でふと思った。

 

 しかしいずれはこの王都から出なければならない。

 なぜなら、俺たちの帰りを待っている人がいるから。

 いや、いると信じていたい。

 

 「シス。ギルバードさんによくそのような提案ができましたね」

 「そりゃあなたの部下ですから」

 

 「セロ様。シスは私たちのところにいたからあのような度胸がついたと思いますよ」


 「そうだぜ、セロちゃん。君の面倒を見るためにはこのようなスキルも不可欠」


 「セロ様はそんな……に、面倒をかけてないのですよ……」

 イルさんが否定しようとする。



 分かったから興奮するなって、とシスがイルさんの前に両手を突き出す。


 「あんたなんか、ギルさんにギタンギタンにされればいいのに☆」


 そんな彼らの態度を見ていると、俺が今日王都のためにと、少しばかし砕身したことがバカらしく思えてくる。

 

 五大明騎士は強いらしいことはわかったのだが、この街にいることで宝の持ち腐れに感じるのは俺だけなのだろうか。

 

 善は急げ。

 いつか出るなら、今でいいじゃないか。

 「王、俺たちは少しばかりしたらこの街を出て別の街にも行ってみようと思います」


 今と粋がったくせに、当たり障りのないように少しばかりと言ってしまった自分が少し情けない。

 

 俺はそんなことを心の中で思っていたが皆はポカンとしている。

 流石に話の流れを読まなすぎたかな。

 それから一テンポ遅れて、


 「えっ」「うそ」「まじかよ」


 王を除くすべてのものから、何かしらの感嘆詞が聞こえた。

 もちろん、ライアンたちからも。


 「もしや、そのクルスクの街に行ってみたくなったんでしょ」


 ルカがやや挑発的に言ってくる。


 「それもある」

 「うっ……」


 きっぱり言うと、ルカはそうくるとは思っていなかったらしく、返答に困っている。


 「止めたりはしないが、少年よ。いつここを立つつもりだ?」


 「二、三日後のつもりです」


 「ここに戻ってくるつもりはある☆?」


 「それは、まだ……」 


 「流石若気の至りといったところか。若いうちにいろいろやるのはいいことだ」


 「それっ、セロちゃんにも言えるんじゃない?」


 「いらん、やめろっ☆」


 「全然可愛い……」

 

 「『風の精霊よ、汝の力を持ってこの男を奈落の底へと……』」


 「ちょっ、ごめんって。まじ、シェレンベルクさん。この街の中で魔法詠唱禁止にしません?」


 「普通の人ならここで詠唱しても効果はないから意味ない」

 「そんなーー」

 

 「なぜ唐突にクルスクの街に行きたいと思ったのですか?」


 スチュアーノさんがシスとセロを気にもせず、放っておいてそう訊ねる。


 「俺たち、いずれはスートラの街に一度戻っておかないといけないかなって。で、そのついでにクルスクの街があるなら」


 「クルスクってどんなところだ?」


 ライアンも疑問に思っただろうが、俺もあまりよく知らない。

 

 「えっと、スートラの街ほどの大きな街ですよ。近くに鉱石の取れる山や火山があって、温泉も湧きますね」


 「そう。で、近くにはまだ解明されてない鉱山跡や遺跡もあるな」


 「シス、そこは本当だったんですか?」


 「当たり前じゃないですか」


 この人の言うことは何が真実がわかりにくい。


 「でも、それだと当初の計画が……」


 「ちょっと、スチュアーノ☆」


 「はいはいー。ちょっと向こうで会議しようぞ。フィルセくん、まだ三日あるなら、明日にでも王都の魅力を案内したげるぜ」


 「そうだね。ここを出ていくなら、しっかりとここの風景を目に焼き付けておかないと」


 ルカはあながち、俺の突然の提案を嫌っていないらしい。


 「そろそろ、"ロット"の金額が大きくなってきたから、誰か決めてくれるやつはいないんかな」


 俺たちが部屋を出て行く前に、そうシェレンベルクさんが呟いたのが聞こえた。

 確かに回転率を上げておかないと、一度賭けておいた人が、次になるまで賭けなくなってしまうからね。

 

 「じゃあ荷物でもまとめておこうぜ」


 ライアンも乗り気で若干嬉しい。

 俺たちは、廊下を歩いてそれぞれの部屋を目指した。


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