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オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!  作者: 羽田 智鷹
二章 交錯・倒錯する王都
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第二章 二十七話 御宅訪問

  

 ライアン達が俺の部屋に来ると、会議感を出すために円形に座った。


 その割には皆早く話がしたいのか、近づいて座っているため、互いの顔が少し近すぎる気もするがまあ気にしないでおこう。

 


 俺がミオの店で聞いた話を報告し終わった後、まさかのライアンからも報告があった。


 まさかの彼も街で同じような話を聞いたようだった。


 「まだお子様は戦場に加わるべきではない。セロは安全なお家の中でおねんねしていろ、って陰でスチュアーノが言ってたそうだ」



 ますます五大明王騎士というものが怪しいなあと思っていたところで、ライアンの口から予想していなかったさらなることが告げられた。 



 「それとこの中にクーレナをここに加えていいか?」


 ライアンの自信満々の表情。


 ??? 


 俺たち三人は固まってしまった。


 

 「どうしてだ?」


 固まりながらも俺は口をどうにかして動かした。


 「今日会ったときにさ、クーレナ、俺たちから威厳を感じたって話してくれたんだ。俺たちなんか大物になりそうな雰囲気だってよ」


 ライアンが自分の胸に手を当てている。


 その言葉がライアンの魂に響いたということか。


 

 「まさかライアン、俺たちのことをクーレナさんに教えたのか?」


 「いや、性格のことぐらいしか喋ってないぜ……」


 「ウルス・ラグナのことは?」


 「いや」


 「スートラのことは?」


 「いや」


 となると、何を基準にしてそのようなことを言ったのだろうか。

 

 「それってただ単に褒めてみただけ、とかじゃないの?」


 ルカがライアンの思い違いだとばかりに言う。


 「いや、そんな感じでもなかったな」


 いつの間にか、ライアンとクーレナが仲良くなっていたようだった。


 というか、今日も会ってたのかよ。


 「まあ、俺は別にいいと思うよ」


 「そう言うと思ってたぜ、フィリー」


 手を俺の肩に乗せながら、ライアンが嬉しそうに言った。

 

 「というわけで俺は明日の朝、スチュアーノさんの屋敷に行ってみようと思うんだけど、お前らも行くか?」


 「何を聞いてくれてんの?」 

 「当たり前じゃん」 

 「久しぶりにみんなで行動できるんだー」

 


 皆がそれぞれの言葉で賛成する。


 「でだ、ライアン。そんな危険かもしれないことにクーレナさんも行くと思うか?」


 「多分行くと思うぜ」

 

 しかしそれにはルカとユーリは少し不服そうだった。


 「まあいいけど、フィリーちょっと優しすぎだと思うよ」


 「うん、都合がいいというかなんというか……」


 ユーリさん、その後なんて言おうとしてるんですか?

 


 俺は多分断る方がめんどくさいから、そっちに流させているだけだと思う。


 優しすぎも気をつけたほうがいいのかな。



 それから各々の部屋に戻った。

 

 見慣れたようで見知らぬ天井。


 手を伸ばしても決して届かないが故に魅力がある星空とはそれはまるで違う。


 どこか人が作ったものの中に閉じ困っているような錯覚。

 気づけば俺の部屋のモノの配置が少し違うような気がする。

 


 さてはルカたちが昨日この部屋を訪れたのだろう。


 俺はベットに潜り込むと窓の外から漏れる光から背を向けて、まぶたを閉じた。


 今日は久々の遠出の疲れからか、ぐっすり寝れた。

 

 

 翌朝、ライアンに言われた場所に来てみるとそこにはクーレナさんがいた。



 「私をこのメンバーの中に入れてくださってありがとうございます。私もある程度は戦えるので、好きなように使ってくださいね」


 礼儀正しく清楚な方だった。


 では……、


 「単刀直入に聞くけど、スチュアーノさんのことどう思う?」


 「えっっ。スチュアーノ……。変わってる…………じゃなくて、私たちにいろいろと良くしてくれてると思いますよ」


 いきなりテンパってるし、抽象的な物言いだったが……。


 

 肯定側が一人、と。


 「今からスチュアーノさんの屋敷に行ってみようかなって、思ってるんだけど、一緒に来ますか?」


 「え……。それは私からは……あんまりおすすめしないというかなんというか……」


 「それって、どういう……」


 「あ。まあ、行ってみればわかりますよ」


 それなら行ってみるまでだが。


 

 「じゃあ、行こうよ。フィリー、こっちらしいよ」


 ルカが先行して歩く。


 「なんで知ってるんだ?」


 「昨日あれから調べたのよ」


 ルカが誇らしげに言う。


 「すげーなルカ」

 「やること早いですね」

 「ありがとさん」

 


 「みんな本当にそれ、心から言ってる?」


 半眼で皆を一通り見渡した。


 「まじだって」


 「そう? ならいいけど」


 「昨日一番遅くまで起きてた説あるわ」


 「それはご苦労さまだな」


 ライアンが他人事のように言う。


 と言うことはライアンも俺と同様に昨日は速攻で寝たということなのか。

 


 「なんかこの感じ、好きです」


 何かと比べていったのだろうか。


 まだクーレナさんは俺たちと少し壁を作っているように見えた。


 「多分ルカさんの道で合ってると思いますよ。行きましょう」


 そういえばクーレナさんは王都育ちだったな。

 なら道案内をクーレナさんに任せたほうがよかないか?

 

 

 スチュアーノさんの屋敷の前まで来てみると、王の屋敷同様に彼の屋敷もそこそこ大きな規模だった。


 門の衛兵に彼に会うために来たことを伝えると、少しして屋敷の奥まで案内してくれた。



 俺たちは暖色系の絨毯が引かれた長い廊下を歩く。



 しかし廊下には、あるはずのない"武器"が飾ってあった。

 


 俺は久しぶりって感じではないが、みな興味津々で一つずつ見ていく。

 

 短剣ダガーに、短剣ククイに、?型の剣(確かジャマダハルと言ったような)変わった武器に、長剣(レイピアやサーベル、バスタソード)など種類も豊富なようだった。


 なかには魔獣と戦ったときの戦利品だろうか……、そんなものも飾ってある。

 


 「あれ、武器ってこの街にないんじゃねーの?」


 「ライアンさん。五大明騎士は武器を具現化できるんですよ。多分それを使って飾ってると思います」


 「へえ、飾りか。クーレナもできるなら武器を飾ろうとするのか?」


 「いえ。むしろ私は花とか観葉植物ですね。飾りたいといえば」


 「だよな。武器は飾るよりも、実際に使ってこそだよな」


 若干話がズレてきている気がするが……。

 


 「それって、この武器は使えるってことなのか?」


 「いいえ、多分スチュアーノ以外の人が触ると消えると思います」


 俺が試しに触ってみると、クーレナさんの言ったとおりに消えた。


 「ホントだ……。やべ。これ、だいじょぶかな?」


 「まあ、目から消えただけなので大丈夫だと思いますよ」


 バタン!!

 


 いきなり奥の扉が開いた。


 俺とユーリは思わずビクリと震えた。


 シスが慌てるようにしてこっちに来た。


 「すまないね。客人が来たっていうのにうちのリーダー、今手を離せない状態なんだ」


 えっ??


 「おっと、なんか一人増えてるね?」


 「はい、クーレナです。どうぞよろしくお願いします」


 「うん。ようこそ俺の屋敷へ。で君たち今日は何の目的だい?」


 なるべく穏便に……。


 「俺たちここに来たことがなかったし、それにスチュアーノさんと話をしてみたいなあって」 


 おお、とシスさんが感心したような声を出す。


 「彼今、朝テンションだから話なら喜んでしてくれると思うな」


 そう言ってシスさんは俺たちを彼の部屋まで案内してくれた。

 


 部屋に入ってみると、部屋中の至る所に紙が貼ってあるのが分かる。


 よく見ると街の地図や建物の図面のようだった。


 部屋には武器類はなかったが、代わりに本棚がずらっと並べられている。


 部屋の真ん中には丸机が置かれ、それを覗き込みながら何やら考え込むスチュアーノさんがいた。


 「スチュアーノさん、ここで何やってるんですか?」


 「その人、建築術とか測量術に長けてるんだよ。おーい、スチュアーノ!!」


 呼ばれた本人はびくっと、震えてからこちらを向いた。


 今気づいたようだった。


 「おや、おはようございますです。フィルセくんたち。よく僕の屋敷に来てくれたのですよ」


 です?


 なんか口調が違う。


 「この部屋にあるものって何すか?」


 ライアンが単刀直入に訊ねる。


 「これですか? よくぞ聞いてくれたのです。まずはこれ。書かれているのは王都の中でも僕らスチュアーノ陣営が管理する地区ですね。他の地区と比べて家がギュウギュウには揃って建っているのですが、その分屋根などを道として使うことも僕には可能になるところです。ここにはこのような抜け道もあり、時間短縮や人目を避けるときなどに有効で、さらにここの丁字路では……」


 スチュアーノさんは地図に描かれた細かな道を俺たちに丁寧に説明していく。


 「俺、いつもの結界見回ってきますね」


 シスさんがスチュアーノさんからの返答も聞かず、そそくさと部屋を出ようとしていると、


 「待つのです、シス。今日はここらへんを見回るのですね? ならばここの道をこうして、こんなふうに行くべきなのです」


 これが朝テンションと言うものだろうか。


 「はあ。スチュアーノさんが言ってる道筋は確かに効率がいいんだろうけど、俺にとっては複雑すぎて逆に迷うから、やっぱいいわ」


 「勿体無いのです。この分からず屋め。僕はここらの道なんか、全部頭の中に入っているですのに」


 「俺とあんたは全然ちげーよ」


 そう言って、シスさんが部屋を出ていった。


 別にスチュアーノさんも気分を損ねたようには見えない。


 「相変わらずあの気分屋は。何を考えているのか分からないのです」


 スチュアーノさんは扉から目を離すと、俺たちの方を見た。


 「そういえば、クーレナさんがいますですね。あなたも僕に会いに来たのですか?」


 しかし、クーレナさんは凛とした態度で、 


 「いいえ。私はライアンたちに興味があるので違います」


 「へえ。詳しいことは知りませんが、そうですか。……まあいいですけど」


 あからさまに落ち込んだ態度をとるスチュアーノさん。


 ここはないか話題を変えた方がいいのかな。

 


 「スチュアーノさんは今日何をやる予定だったんですか?」


 「えっとですね……。いつも通り街の警護と郊外の見回りですかね」


 「なんかもっと派手なこととかしないの?」

 とユーリが訊いた。


 意味が分からない。

 一体ユーリの言う派手なことって何だろうと俺は思ったが……。


 「そうですね。五大明騎士が揃ったときなら、たまに大掛かりなことをするですね。でも、大抵の作戦は王かギルバートが考えたものなので、僕はそれに沿うだけになってしまうのですが……。それか王都で重大な事件が起こったときとかですかね」


 重大な事件……。


 「今それが起こったらどうするんですか?」


 俺は聞いてみた。


 「そりゃあは僕たちとセロ陣営でどうにかするのですよ。でも、セロ陣営とは最近そこまで仲良くないのは自覚してますし、やっぱり個々で対処ですかも。あんまり考えようとしたこと自体ないです」


 よくよく考えなくても、今王都って手薄なんだ……。

 


 と、部屋の奥に壁にかけられている金で枠付けられたどこかの屋敷の大きな図面がふと俺の目に入った。

 

 スチュアーノさんは俺の見ていたものに気づく。


 「それは今フィルセ君たちが滞在している王の屋敷ですよ」


 「ホントにそれ、合ってんのか?」


 ライアンが訝しげに訊く。


 「そうですね。えっと、ここが大広間で、ここが王室。ここに食堂と」


 「あ、そう言われてみれば、一緒かも。すごーい」


 ルカはそう言っているが、俺には一つ気になった点を見つけた。

  


 しかし。前、自分が訪れた地下室の図面がないのだ。

 地下への階段があった場所も空白だ。


 しかし、俺が行ったことないような抜け道は書かれていた。


 

 まあでもあの地下室は王でもよく分からんって言ってたし。


 「どうやって、これ作ったんですか?」


 「それは実際に僕の足を使ったまでです。王の屋敷は測量し甲斐があったのです」


 その後も部屋にある物をベースにスチュアーノさんと話していると、ふとユーリが何かを見つけたようだった。

 

 それは本棚の上の狭いホコリの溜まりやすいスペースで、しかもそれはその奥の方にあるらしかった。


 

 ライアン、ルカはスチュアーノさんと何やら喋っていて、ユーリが見つけたものに気づいていなかった。


 俺は気になってユーリの方を見ていると、ユーリがこっちに来い、と手招きしてきた。


 

 ユーリについていって、そっと目的の本棚を目指す。


 ここの本棚は部屋の入り口にあったものとは違って背が高い。


 俺たちはライアンたちと結構距離ができ、姿も完全に見えないようなところまで来た。


 確かにここの本棚の上には何やら古めかしい箱がおいてあるのだが、よくユーリがこれを見つけられたなあと、本棚の上を見上げながら俺は感心してしまう。

 


 つんつん。


 本棚の上の方を見上げていた俺の頬に、何やら感触を感じたので、そちらの方を向いた。


 ユーリだった。

 


 「カタグルマしてほしい」


 「えっ?」


 「はいはい、座ってーー」


 脳の処理が追いつかないまま、言うとおりにする。

 しゃがんだ瞬間、肩に軽く衝撃が来た。 


 どうやら、ユーリが上に乗ったようだった。


 「俺はユーリの脚を触っていいのか?」


 「もちろんじゃん」


 我ながら、アホな質問をしたなあと思いつつも、この綺麗でスベスベの脚に触れるのには、少し躊躇がある。


 それにしてもユーリはなんの躊躇も恥じらいもない。


 「お前もしっかり掴まってろよ」


 俺は頭にユーリの手が乗ったのを確認してから立った。


 

 よくこんなことを恥ずかしがりもせずに頼めたものだと思う。


 この瞬間にも俺の心臓がアンダンテから、アレグレット程にペースアップした気がする。

 


 「もうちょっと右、右だよ。あ、やっぱり左」


 ちょっとユーリさん。

 

 言った方向に体重かけるのやめてくれませんか。


 俺にとってはユーリの体重は重くないけど、流石にバランスが取りにくい。


 「フィルセ、共同作業が苦手なんだね」


 顔は見えないが、ユーリは声からして楽しそうだった。

 


 その後もあっちこっちと苦闘しながらも、どうにかしてお目当ての箱をユーリが掴んだ。


 無論、俺の方が随分苦闘した気がするが……。




明日と明後日もしかしたら更新遅れるかもです


次回予告 「騎士としての威厳」

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