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オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!  作者: 羽田 智鷹
二章 交錯・倒錯する王都
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第二章 十話 現在は食事会

 

 「これで終わりましたよ」


 スチュアーノさんが長かった古文書を読み終え、一息つく。


 「今はその兵器とやらは、どこにあるんですか?」


 危険な代物だと言っていたからには、俺はやっぱり気になる。


 「それが実は今それの在り処は分かっていないのです。なにせ残っている記録がこれしかないものですし」


 「そして、お兄さんたちがウルス・ラグナと名乗る者に出会ったことで、この古文書のしんぴょーせーが揺らぎ始めた☆」


 「いやでもあれだろ。百年ほど前ことならさー、もし同じやつだったとしたら少年の姿をしているはずがないんじゃね」


 ライアンが皆の会話の虚をついたとばかりに自分の発言に満足そうに頷いている。

 

 「でも確かにこの本通り、俺たちがあったやつも瞬間移動をしてたぞ」

 

 俺は瞬間移動をおいそれとできる者が、そんなにいるはずがないという思いを込めての発言する。


 「確かにそうだよね。しかも、言動も雰囲気もちょっと今聞いた話と似ているというか……」


 ルカが考え込むように呟く。

 


 「スチュアーノさんたちはその『邪翼族』とやらにあったことはないんですか?」


 「じつは『邪翼族』に限らず、他の種族にもあったことがないのですよ」


 「俺たちと、同じじゃん」


 ライアンが声を上げる。


 

 「でも会おうと思えば会うことはできますよ。なぜなら隣国のオルギンは、まだ『邪翼族』に乗っ取られたままですから」


 「かしみーるの取られた部分は取り返したらしいけどね☆」


 って、待てよ。

 隣国オルギンってここ王都よりも、スートラの街からのほうが近いのではないか。

 古文書でも、スートラの街まで及ぶとかなんとか言ってたし。



 「それって、スチュアーノさんたちがその『邪翼族』を打倒しに行ったりとかしないんですか?」


 「相手がどんな者は分からないからって、皆ビビってこっちから手を出そうとしないんだよ☆ セロは別に攻撃しにいってもいいのに☆」


 見た目に威圧がなく逆に幼さがある分、その発言が余計に場違いに聞こえるのはしょうがないことだった。

 


 「しかし、少年らが言っていたように余の国に侵攻されたら対処する。前線付近のスートラにシャネルを置いているのもそのためだ」


 「そんなにジジイって役に立ちますか?」


 ジジイを置いていると言っている以上、王はジジイよりも上の立場だという自覚があるのだろう。


 もしこれをジジイに言ってみたら、たいそう心外そうな顔をされるだろうな。


 しかし普段から雑務で屋敷からめったに離れない姿を見ているから、俺は王の思惑通りになっているのか疑問だ。


 「やるときはやるやつだ、シャネルは」


 王様から絶大なる信頼を置かれているらしいですよ。

 よかったですね。

 


 「だったらその『邪翼族』の中の別のやつが、ウル……ス?・ラグナってのを名乗ってるのとかあり得んじゃね?」


 こいつは回るときは頭がよく回る。

 


 「どっちにしろ、お兄さんが倒してくれたから敵は一人減ったね☆ 私をお兄さんを回収するついでに、あの時色々と確認してきたから☆」


 「お前ってそんなにすげーのか?」


 俺がライアンを褒めた瞬間、やつは途端に人を舐めたような態度を取りやがった。



 「お兄さんにも言っておくけど、セロこの国随一の魔法使いだからね☆」


 こいついつか、この童女に……とは言わないが、刺されっぞ。

 相手もわきまえず適当なこと言っていると。

 


 食事も一通り終わり、机の上が片付けられる。

 

 しかしただ配膳や警備、この場いることが仕事なのか、後ろで並んでいる人たちは食事をせずにずっとこちらの様子を眺めている。


 

 「じゃあ、セロちゃん。俺たちにこの街イチオシの武器屋教えてくれないか? ウルス・ラグナっぽいやつとの戦闘で俺の武器をほとんど壊されたから」


 せっかくスートラでレイノンさんに選んでもらった愛着があった剣に変わる、同等以上のものを俺の体は求めていた。


 

 しかしセロはほっぺたを膨らませ、俺を指差す。

 予想外の行動だった。

 

 俺に視線を向けたままセロはそのまま静止した。


 そしてこの状態だと誰も何も喋らない、という沈黙に嫌気が差したのか、口にためていた空気を一気に出して口を開いた。


 「もう、お兄さん聞いてなかったの? この街で武器なんて使えないよ☆ だって実態がないんだから。 だ・か・らー☆ ブキヤなんてないよ〜だ☆」



 これがライアンだったら、ひっぱたいてやりたくなるが、この童女にそのような気持ちは全く起こらない。


 「すまん、忘れとった」


 逆に恥ずかしいな。


 

 「ところで、後ろにいる人たちは何なんだ?」


 セロとスチュアーノさんは顔を見合わせる。

 

 「えっと、整列されている騎士たちは僕の方の陣営」


 「で、あっちのお姉さんたちは私のみかた〜〜☆」


 しかし、男女比率がおかしい気がする。

 

 スチュアーノさんの方の方々はピカピカの鎧をまとった、旺盛な男だったのに対し、セロの方は俺たちとほとんどの年の変わらない少女たちばかり……。

 


 俺たちの不思議そうに思っている空気を察したのか、スチュアーノさんは、


 「ああ、セロは部下に男性を入れてないんですよ。そりゃ男の方が力があるでしょうのに、ちやほやされるのが嫌だとかので……。ふふっ。そうは言いつつも、つい先日まで一人男がいたんですけどね」


 そういった瞬間から、セロ周辺の空気が変わり始めていた。

 

 「おい、イプセン。何笑ってやがんだよ。俺様ずっと、言っているよな……。アイツのことは話題にするなと。確かにアイツは例外で俺様の陣営に入っているのを許したし、とても役に立つやつだった。しかし、急にアイツから俺様の陣営を抜け出すと言いやがったんだ。『セロちゃんたちの可愛さは、近くで見るよりも遠くから見たほうが俺にとっては一層際立つと思い始めた。なんだか俺の周りが可愛いい娘ちゃんたちばっかりだと、俺の目が曇っちまったような気がするだ。だから、今ここで俺はセロちゃん陣営やめようと思う』だぜ? 人のするようなことじゃねえ」


 突然声や雰囲気、口調を変えたセロに俺たちは驚く他になかった。

 

 しかし顔つきが少し変わっただけでセロは可愛い顔の幼き女の子のままである。


 その小さい身体のどこに、今までの高かったキャピキャピ声から一転して、威圧の篭った低音がだせるところがあるんだよ。


 

 チョー怖い。


 ライアンだけでなく、実は俺もセロのことを舐めていたのかもしれないと思い始める。


 周りを見ると、ライアンやルカも同じ表情をしていた…………しかしユーリは平気そう。


 「そんなことだろうとは思ってた」


 「まあ、お前も最初は猫被ってたし……」


 一応ツッコミを入れておく。

 


 「そこまで、私のことを見て考えてくれていたんだ……」


 わざとらしくユーリは両手を頬に当てる。


 「いやフィリーは、ユーリのことを見て"可哀想だな"って言ってたことあったよ。"可哀想だな"って」


 ルカが今ちょうど俺が言っていたその状況を思い出したかのように、流暢に言う。


 そういえば、そんなこともあったかもしれない。


 ーー、正直あんまり覚えていないけど……。


 「それでも、私のことを考えてくれていたなら……」

 


 「ふふっ。そんなことだってね。ふふふ、もう話題が逸れているし」


 ユーリの発言をそのままセロへの挑発に、スチュアーノさんは変えた。


 この人は正気なのだろうか。

 俺はそろそろまずい気がする。


 普段こいつらの素直な発言から俺は、スチュアーノさんがそろそろ辞めたほうがいいのではと思った。

 俺は関係ない筈なのに、冷や汗が出そうだった。


 「イプセン、そろそろ俺様をコケにしすぎだぞ。今まで両陣営のために敵対せずにやってきたけど、今はイプセン陣営にアイツは移ったからいるわけだし、そろそろ友好関係を断ち切っても……」



 「もう、セロってば。そんなにツンツンしないでくださいよ。あと権力に物を言わせるなんて、君将来どんなのになるのですか? そんなんだから、アイツ以外に"ちゃんと"セロに正面から近づこうとしてくる男がいないんじゃないですか?」


 「はっ??」


 「えっ、僕? 僕は近づこうとしたんじゃなくて、立場上必然的に近づかされたっていうか、……って冗談ですよ。冗談ですからそれを出して、呪文を唱えないで……」


 そう言ってスチュアーノさんはただ見守っているだけのセロの配下に対して手招きをし、セロを止めるように求めている。

 


 そういうセロはどこから呼び寄せたのか、杖を両手で持っている。


 しかもそれはけっこう作りが複雑で、所々輝き、洗練された武器のようだった。

 ーー、ライアンのものとは比べ物にならない。

 


 って、あれっ、この街の中では武器は存在しないんじゃ……?

 

 「五大明騎士は例外だ。この街の治安を守るために五人だけは武器の使用ができる」


 王の声を久しぶりに聞いた気がする。

 今までずっと、彼が聞くに徹していたからであろう。


 「…………それって」


 「そう察したとおり、この街では絶対的な力。だから誰も罪をすら起こせない」

 


 セロは何かしらの呪文を唱えていた。



 「ちょっと、セロ。僕はアイツではないのです。辞めてください。言いがかりです。このままでは王にも被害が……」


 「大丈夫だ。俺様は随一の魔法使い。イプセンだけに当てることも容易い」


 セロのやや薄っすらと涙を浮かべて、スチュアーノさんに駄々をこねる? のが実に童子らしい。


 しかし全く持って実力的にセロのほうが上らしい。


 スチュアーノさんは本心から焦り始めているからなのだろうか。だんだん早口になってきている。


 「本当に僕が悪う致した。だから魔法を使うのは辞めて……って、あ、セロ。フィルセくんたちに今まで猫かぶっていたっ疑問がられていると思うのですが、いいんですか? いつも必死に訂正していたのに」

 


 それを聞くと、セロは途端に魔法を唱えるのをやめ、こほんっ、ーーーーと一つ軽く咳払いをした。


 

 そして、俺たちの方を向く。


 「えっとね、お兄さんたち☆」


 それは、紛れもなく以前のキャピキャピ声だった。


 「私、別に猫をかぶっていたわけじゃないの☆ というか、こっちがもともとの声なの☆ でもあるときアイツが、『お前、それで"俺様系キャラ"やったら、多分みんなをビックリさせれるぞ。そっちの方が今のお前の可愛さも一層際立つし……、ギャップ萌と言うやつだ』っとか言い出して、あまりにもしつこく言ってくるもんだからね……ため師にやってみたの☆ そしたら、まさかの私の部下に『いいね(≧∇≦)b』とか『その強めの口調で私を罵って……、いや、喋ってください』とか注文されて…………、やってるうちに身に染み付いちゃっただけなの☆ 隠してたんじゃなくて、どっちも素なの☆ 悪気はないから……信じて☆」

 


 程よく潤ませた瞳が、上目遣いにこちらを見る。


 俺からして、正直セロに悪気があるのかないのか以前にセロのことがよくわからん。



 それよりもやっぱり、そのキャピキャピ声から、他人のセリフのところをだけ声を変えて、声真似して言うところがすごい。


 神童かもしれないやい。


 それと、セロ伝いだと"アイツ"の声がちょうどいい感じの低音でイケヴォに聞こえる。

 


 「そこの説明はその声よりも俺様系の声で言うべきでしょ。勢いあるし、説得力あるし」

 

 スチュアーノさんの空気を読まないツッコミがますますセロに火をつけ、俺を内心を冷やしていくのだった。


どうやらスチュアーノさんは不器用なようです。

王都の人たち書いてて楽しい


次回予告 「アイツ現る」

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