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オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!  作者: 羽田 智鷹
二章 交錯・倒錯する王都
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第二章 四話 追想

 

 「そんなことがあったんだね☆」


 俺たちがユーリを連れてカタグプルの街を出たところまでのことを王様たちに話し終えたところだった。



 王やスチュアーノ、セロの後ろで相変わらず微動打にしない方々も俺たちの話を耳を傾けている。



 「カタグプルの街って面白いよね☆ セロも前行ったことがあるよ☆」


 「面白いって、どこをどんなふうにですか?」


 ユーリが目をキラキラさせながら、興味津々といった様子で訊ねる。


 自分が長年住んできた街。

 そういうところには帰属意識が芽生えるのだろう。


 ユーリはカタグプルの街へのセロの評価を聞くのを、うずうずと待ちわびている。



 「ええっとーー。子どもたちが物乞いしてるところかな☆」



 ユーリがビクッと震えた。


 「この前の任務帰りだったかな☆ カタグプルに寄ったときにチョットしたデキゴコロでね、セロもその子たちに混ざったの☆ そしたら、みんなじゃんじゃんセロにお金くれるし、セロをカワイイってほめてくれるし…………、結局その日一緒にいた子たちの中でセロが一番稼いじゃったんだー☆」



 みるみるうちにユーリの顔が青ざめていった。



 「私が一生懸命いろんなことして金稼ぎをしていたのに、セロちゃんはただ物乞いするだけで儲かるなんて………。街の人たちほんっと最低」


 「おい、仮にも少し前まで同じ街に住んでた人たちを最低呼ばわりしたらだめだろ」


 同じ街という共同意識なんてユーリにはあったもんじゃなかった。



 「私なんて一時期遠ざけられていたときもあったのにぃ」


 「かわいそっ」


 ライアンがそっけなく言った。


 するとユーリ食って掛かるように、


 「アンタだけには言われたくない」 とライアンに怒鳴った。


 しかしライアンはなんともない様子でさあねっ、て表情をしている。


 「でも僕はやっぱり地方ごとにいろんな風習があると思いますよ」


 「というと、スチュアーノさんは地方出身ですか?」


 王都にはお金に余裕がある人々しか入れないので、地方出身ということは成り上がったっていうことか。




 「僕は違うのだけど、セロはそうですよ。……、そうでしょう?」 


 「うん、セロは南の方の街からだね☆」



 こんな年端も行かない童女が地方出身で今はこの王都にいて………………、いろいろと変わった人生を送ってそうだ。



 やっぱりスチュアーノさんは王都育ちだったか……と思う。



 身なりから来て豪華絢爛でいかにも貴族って感じだった。



 「じゃあなんで今は王都にいるんだ?」


 これは話が長くなると俺が敢えて質問しなかったことをライアンは何の恐れもなく童女に聞く。


 俺はヤバイ、と内心思っていたのだが……。



 「う~ん。話すと長くなっちゃってお兄さんたちの話のコシを折っちゃうから辞めとくね☆ 早くお兄さんたちの話の続き、聞かせてほしいな☆」


 よかった。


 多分自重というものだろう。


 案外ライアンよりもこの童女の方が頭がいいのかもしれない。



 

 こっから先の俺たちの旅の回想は所々四人の共通認識が異なるため、全てを俺が話すことにした。

 



 コートにフードで身を包み、右手を包帯で巻いていた少年のこと。


 手で変わった動作をしただけで俺の剣が割れたこと。


 魔法を使っていなかったこと。


 「それって、何で魔法使っていないって分かったの☆?」


 ーーおっと、普通の人にはこの感覚が分からないんだったな。


 あんまり悪目立ちしたくなかったので、ノーマルな返答を。



 「ええっと、魔法詠唱してなかったから」


 「おおっ。お兄さんって耳がいいんだね☆」


 「おうよ。だってこいつ、スートラ周辺の森で毎日俺から逃げ回ってばかりだったからな。耳も良くなるってことだぜ」



 逆にライアンの爆音を毎日聞いているから、耳が悪くなっていてもおかしくない気もするが…………。



 「前なんて、私を盾にしたこともあったよね」


 ーーちょっと……、ルカさんまで……。




 「お兄さん、そんな性格を隠しているの…………」



 「セロ、あなたがいうのでスヵ……」


 なぜかやや怯えた表情のスチュアーノさんが童女に突っ込む。


 「やっぱり、セロはなんでないよ☆ 続けて続けて☆」



 「じゃあ続けるけど…………、俺はそんなやつじゃないからな」


 この童女は楽しそうだった。



 

 黄金の剣のこと。


 ライアンとルカの猛攻を防ぎ、瞬間移動したこと。


 

 「ここで、私の出番だね。儚く散るよ」


 ユーリが胸を張る。


 そこは胸を張る場面なのか多少疑問が残るが、俺はそのまま話し続ける。

 


 「少年がいきなり、見てるだけじゃだめだよっていって、ユーリを集中狙いしましてね」


 「そうそう。執念深く、熱烈なアタックだったよ」


 ユーリが胸を張るのをやめない。



 まあ、終わったことだからいいけど……。


 「俺たちは必死にユーリを守ろうとしましたが……」


 「フィリーはそこで私のポイントが稼ごうと思っての行動だったが、そんなに私のポイントは容易くはなく……」


 「おいっ!!」



 一言一言にツッコミを入れてくる。


 ユーリは少し悪びれたように舌を出す。


 まあ、終わったことだからいいけど……。


 ポイントがどうこう言っているが、よく分からないのでここもスルーすることにする。



 「やつはユーリの攻撃をもかわし、ついにはユーリの目の前で手を開いて閉じたらユーリが倒れてたんです」


 「私にそんなことが起こっていたのか……。フィリーたちの防御というか私への対処がゆるかったからだね。もっとしっかりしてほしかったなあ」


 そんなどこか遠いことのように言うのはやめてほしい。

 



 「包帯のある右手か……」


 王は考え事をしながらつぶやく。



 「そういえば、僕はすぐには決着を決めないー、とか、この忌々しい体めー、とかいってなかったっけ?」


 「俺もなんか言ってたような聞いた気がするぞ」



 

 「言っている意図がさっぱり分かりませんね」


 スチュアーノさんでもだめらしい。


 「なんか他の体もあるらしい発言だね☆ それか体のどこか悪くなったとか」



 「うむ、そもそもこんな王都近郊に現れたわけが分からんしな」


 王でさえ、分からないらしい。



 「その後、やつは魔法を詠唱して、俺とライアンの心に何か語りかけてきまして。体を乗っ取りに来ました」


 「今度は魔法を使ってきたんだ〜☆ その時のお兄さんの意識はどこに行ったのかな☆?」



 なかなか質問が鋭いな。


 「俺はしっかり周りも見えていたし、考えることもできたんだけど、体だけが他の誰かに操作されてるような感じだったな」


 「えっ、お前そうだったのか? 俺はその時どうなったか全然覚えてねえーぞ。気づいたらお前がその少年に剣刺していたし」


 「……まじか……」




 「なんで違いが生まれたのか少年らは分かるか?」



 王は俺たち二人を順に見る。


 「分かんねえーな」 「俺も同じく」


 自分の体質はできるだけ黙っていたい。



 「で、そしたら少年の外套が黒い流動する物体に変化し始めたんだよね」


 「気づいたときにはそれは四枚の翼に変わって、今までの傷が消えていました」


 「そう、それだよ☆ その黒い翼からやつらは『邪翼』って呼ばれてるんだよ☆」


 「やっぱりその少年は『邪翼』だって疑いようもないな」


 スートラの会議で聞いた言葉を再びここで聞くことになった。



 

 「やっぱり、王様はその『邪翼』のやつらと戦っているんですか?」


 俺が訊ねると王は頷く。


 「しかし、『邪翼』といってもそこまで数がいるわけではない」



 「ちょっとーー。また、『邪翼』の古臭い話でお兄さんの話のこしを折らないでもらえます☆?」


 ぷくーっとその童女はふくれっ面をする。



 王に対しても態度が変わらないこの童女はいったい何なのだろう?


 「まあまあ。じゃあ詳しいことは後で話せばいいんじゃないでしょうか」



 透かさずスチュアーノさんが王のフォローに入った。


 ーーまだ、俺の話を続けていいってことなのかな? 


 

 「その後、こいつの魔法が運良く決まって、やつは翼がボロボロになって落ちてきたんですよ」


 「運よくじゃない、必然だ」

 

 ライアンが凄む。


 「それはすごいな」

 

 本心からかは分からないが王は感心する。


 

 「そしたら、やつはいきなり人が変わったように喋りだしまして。一瞬で終わらせる、とか言って瞬間移動しました。ユーリにしたように同じことをルカとライアンにもしたんです」



 「あれは一瞬だったよ」


 「俺は抵抗しようとしたけど、背後に回られたもんなあ。あれはセコい」


 

 「で、俺はしっかり“くない“で対抗したってわけ。それで心臓部に刺したら、灰になって消えてった」


 ーー、カノンさんの力を借りたって言うことは言いたくない。あくまでも、俺自身の力で。

 


 「やはり、ヤツ自身が“ウルス・ラグナと名乗り、古文書にあった姿をしている。やつは死んだと思われ、長年姿を見せなかった理由は分からぬが、『邪翼』の棟梁であるそいつで間違いない。少年らは自覚していないようだが、相当すごいことをしておるぞ。だって、国の五大明騎士でさえ、成し遂げれなかったからな」


 分かりにくかったが王は俺たちを褒めたらしい。



 「五大明騎士って言うからには五人いるっていることだよな? スチュアーノさん以外にあと四人もいるってことなのか?」


 ライアンにそう言われてみれば、確かに誰がその五人に入るのか俺も分からない。


 「そうだな。ここにいるスチュアーノとセロ、その他は今王都にはいないな。少年らが言っていたスートラの街、及び国境付近へ行っておる」



 スチュアーノと、……………セロ?


 この俺たちの半分以下ほどしか生きていなさそうな彼女が……?

 


 「セロちゃんって、もしかして強いのか?」


 「もしかしなくても、セロは強いよ☆」


 「言っちゃ悪いけど、その体で……?」


 期限を損ねるかと思いきや、急に顔を輝かせて、


 「体なんて関係ないよ。だってセロ、魔法使いだから。あと将来体もしっかり発育させて、いろんなところもそっくり大きくするつもりだから☆」

 

 ルカは別にいいのだろうが…………。


 そこまで発育良好じゃないユーリはセロを睨む。


 

 「あっ、そうだ。王様はスートラの領主とお知り合いなんですよね?」

  

 

熱にうかされながらスプラ2やってます。

病人は寝ろよって…………。


次回予告 「親父と王」

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