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オン・ワンズ・ワァンダー・トリップ!!  作者: 羽田 智鷹
二章 交錯・倒錯する王都
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第二章 三話 王との対面

 

 俺とユーリは、自分の宝物を早く俺たちに見せたくてうずうずしているような年齢相応の元気な童女に、引っ張られるようにしてどこまでも続く長い廊下を進む。



 両壁は銀で塗装され、廊下は輝きに満ちている。

 ホコリなんて一つも見当たらない。



 「この屋敷、いろいろと立派だな」



 俺はこの童女と何を話せばいいのか分からず、かと言って何も話さないのもあれだ。


 見ての通り幼い彼女は自分のことを話したくて、俺がたとえ何を質問したところで無下に断ったりはしないと予想する。


 

 だからは俺はふと思ったことをこのまま口に出す。


 「当たり前だよ☆ だってこのカシミール王国の王都にある、王直々に住んでいる屋敷だからだね☆」


 「まじか」


 「まじ〜☆」


 じぃ〜、と彼女は歯を見せて、笑顔で発音する。




 「お嬢さんは、この場所で何をやっているんだ?」



 しかしこの大きな屋敷に対して、童女がこの場にいるという不釣り合いな状況について聞いてみることにする。



 「セロも今日は王さんに招待されたから来たんだよ〜☆ セロは将来有望なんだ〜☆」

 


 聞いてみたものの、俺は知識のなさからなのかすっと納得することができない。




 「フィリーが寝ていた間、私結構この王都の中を探索してきたんだけどめちゃくちゃ広いよ、ここ。あと、住人みんな穏やかで優しい」



 楽しそうに口を開くユーリ。 


 「ユーリは一昨日に起きたんだっけ?」



 「そうだよ、一番起き。でその時に、今ライアンたちが一緒に行動してる五大明騎士の一人、スチュアーノさんって言う人と会ったんだよ」



 「そうそうあのときは、すちゅあーのがお兄さんたちの様子を見ていたんだよね☆」



 すちゅあーののときじゃなくて、私のときにお兄さんは起きてくれてよかったなあー☆、と童女はつぶやいた。



 しかしそれもしっかりと俺の耳に入ってくる。


 「なんでなんだ?」


 「だって、最初にあった人の方が印象に残るでしょ☆ ことりさんもはじめてみたものを親だって思うんだってね☆」



 そうですね。

 確かに自分よりも歳の若い子を王都に来て一番初めに、俺をしかも見下されるような形で会うとは思ってもみなかった。

 


 「フィリーたちは寝てたし、一人行動できる時間は貴重かなって思って、実は私一人でクソ兄に探しようとしてたんだけどね」



 ーーーーユーリさん、あなた好きで俺たちと一緒についてきたんだし、一人行動を貴重っていうのやめてもらえます?

 


 「なんかわかったのか?」



 「いやまだ、ぜーんぜん。私もクソ兄にの特徴忘れたし」

 

 それでどうやってその兄貴を探すのか俺には分からない。




 「お姉さんがもしよかったら、セロも一緒に手伝ってもいいよ☆?」



 

 「ぜひ、ぜひお願いします!!」



 「お兄さんもどう☆?」


 

 この可愛い童女に言われて、断るに断れない。


 「まあ、いいぞ」


 「やったー。……………でも、あのライアンだけは一緒に誘って来ないでよ」


 若干喜び方に差があったような気がしたが…………。



 「はいはい」

 

 


 「もうすぐだよ☆」


 そう言って少女は前方に向かって小さな指を指す。


 

 そこには黄金に輝く扉があった。


 「席までエスコートしてあげるね☆」



 童女は俺たちの方へ振り向きざまにそう言うと、扉に小さな手をかざした。

 


 すると、音を立てて扉全体にかかっていた鍵が動きながら外れ、扉が開き始めた。

 


 童女はニコニコとしながら完全に扉が開くのを待っている。



 俺は扉の中を覗き見ると、そこには長い食卓があり、その上にはたくさんの料理が載せられている。




 その部屋の一番奥にはこの場にいる中では最年長っぽいが、若くも見えるし歳をとっているようにも見える男の人がいる。



 食卓の周りに並べられていた椅子とは違った、豪華な装飾がされクッション付きの椅子に座っている。




 その斜め向かいには俺たちよりは年上だが、やや長身でイケメンの男性が座っている。



 その男の後ろには数十人の鎧を身に着けている人たちが縦隊で待機している。



 その向かいにはライアンとルカの姿もあった。



 「ホントに俺があそこに座っていいのか?」


 ルカの隣に空いた椅子が置いてあるのが見える。



 少女は何も言わずに俺の手を取った。


 隣でユーリが驚愕している。



 「じゃあ行くよ☆」



 彼女は俺の手を引いて先をゆったりと歩いた。



 俺はされるがままに歩いていると、ユーリはしばらく固まっていたが、遅れまいと急いでついてきた。

 


 「じゃあ、私は反対側に座っているね☆」


 俺がライアンの近くまで来ると童女は手を離して言った。



 

 よく見ると、鎧集団の隣に三人ほどの女性(少女?)がいた。


 しかし彼らは鎧は被っていない。

 



 「やっと起きたか?」


 その声を聞く限り、ライアンも元気そうだった。


 「今しがたな。そっちは俺の勝った現場を見に行っていたらしいな」


 少し自身有りげに問いかけてみる。



 「フィリー、ホントすごいよ!! あれを倒しただなんて。私なんて気づいたときにはベッドの上にいたし……。いつやられたんだろう?」



 「俺もそんな感じだな。しかもそれがなんかだいぶ昔だったような感覚が……」


 ガハハハハ、と笑っている。



 いや、笑い事じゃないと思う。



 下手したら俺たちは全く違う状況、つまるところバッドエンドになっていたかもしれないし……。



 「いやいや、俺にとってはつい数時間前って感じだな。っていうかお前らここでなんかのびのびし過ぎじゃね?」



 俺は思いのほか、彼らの言葉が軽くてびっくりしている。



 「フィリーはまだ外には出てないんだよね? なんかこの街自体が伸び伸びしているんだよ」



 見ると、先程の童女が皆とは違う小さめの椅子に腰を下ろしたところだった。

 



 コホン。


 ーーーーーーーー。


 

 特別な椅子に座っていた男が一つ咳き込みをした。



 この瞬間、空気に緊張が走る。


 

 「私はこの国の王、シェレンベルク・ティティーだ。旅の皆さん、ようこそ。このプレシオラへ」



 ーーーーーー。


 「ホントにそれだけなの☆?」


 まさかの彼女…………童女が、男改め王ーーシェレンベルクに意見を出した。



 よく見ると王は右目を眼帯で覆っていた。


 唯一の左目には赤の瞳。


 右頬には赤色の模様をつけている。



 白髪の髪を長く真っ直ぐ伸ばし、後ろで一つにまとめている。


 腰には剣をさし、両手は指を抜いたグローブ。



 ジジィのような男臭はしないような対照的で冷静で狡猾そうな男であった。




 「ああそうだな、…………誠にありがとう。シャネルの元から来た少年少女方」


 

 俺は王の口からその名前が飛び出してきたことに驚いた。


 俺のジジイの名前だ。


 ーシャネル・アーカイム。



 「この王都手前で敵……邪翼の長であるーー“ウルス・ラグナ“と戦い、ついには倒してくれてありがとう。少年らが戦ったやつは幾度となく有能な人間族を殺し、覇権戦争の時代から生きていると言われていた。実際は昔、賢者に倒され死んだものだと思っていたが…………。もしそんなやつが再びこの時代で何かをしたら、おそらくは計り知れない大惨事が起きていただろう。それを未然に防いでくれて、本当に多大の人が助かったと思う」



 “ウルス・ラグナ“



 あの時、俺の心へ語りかけてきた声が口にしていたものと同じ単語だった。



 「それが、俺たちがここで看病されている理由ですか?」


 俺たちはそんなヤバイやつを倒したから?



 「それもある。が、王都目の前でまだ若き少年少女らが倒れていて、それを見捨てるなんて。王として、失格なんじゃないのか? 民に慕われる王として」


 「そうですか……」



 王ってそういうものなのか。


 「いや、多分違いますよ。このシェレンベルクはシャネルさんにどやされたくないんですよ。あ、えっと、僕も一応名乗っておきますね。僕がスチュアーノ・イプセン。よろしくお願いしますね」


 王の斜め向かいに座っていた男がそういった。


 藍色のその髪は清楚さを漂わせている。



 「どうぞよろしくお願いします」


 俺は挨拶する。



 ちょうど目に入った彼の首元には、光り輝く鉱石のようなものがついたネックレスがついている。



 見るからに、この人は財力がありそうだ。



 そんな偉い人たちと俺たちが今後関わりを持つことになるのかは、今のところよく分からないが一応挨拶をしておく。



 「セロはセロ・べアルね。えっと……、後でまたおしゃべりしようね☆」


 童女はそう名乗った。


 彼女のが一番角ばっていなく、俺たちの方も自己紹介しておきたくなってくる。



 そんな友達通しでするような柔らかなもの。



 今のところ、俺がその童女ーーセロと一番話しやすいのは事実だ。



 「実際、少年らがここまで来る間の出来事について色々詳しく聞きたいところだが、目の前に並ぶ料理を前には無理であろう。話をするのはあとからでもできる。さあ、遠慮せず熱いうちに食べてくれ」



 「よっしゃーー」


 こいつはここでも遠慮と言うものがない。



 ライアンが叫ぶ。



 皆が手にスプーンやらフォークを持って、王の一声がかかるのを今か今かと待っていた………。  



 ーーーーーー。



 「一つだけお聞きしたいことが……」

 

 俺が声を発すると、皆がこちらを見る。



 ???!!!


 「いいぞ、申してみろ」


 これだけは今言っておいたほうがいいだろう……。



 「僕たちがこの王都へ来たのには理由があるんです。実は……」



 「おお、そのことならもうそこの少年から聞いたし、客人をここへ招き入れたときに何か怪しいものは持っていないかと、ちと手荷物を確認させてもらってな。あの『親書』も読ませてもろうた。大丈夫。客人が来る前にスートラへは刺客を送り込んでおる」



 ??!


 「そうなのか?」


 俺はライアンたちを見る。 



 「ああ、そうだな」


 ライアンが頷く。



 「だって、フィリーがいつ起きるか分かんないじゃん」



 ルカは手を頭に載せ、ちらっと舌を出す。



 『親書』をスートラから長い距離を大切に運び、王へ直接渡す。



 王がその手紙をすでに読んでいたことに俺は驚いた。



 テキパキと部下に適切な指示を下す王の姿を拝んでおきたかった。



 俺がその瞬間をどんなに楽しみにしていたことだろうか。



 

 俺は少し落ち込んでいると、突然ライアンが俺の背中を叩き出した。



 「まあフィリーが渡せなかったように、俺らもフィリーがあの少年にとどめを刺すところ見られなかったんだから。おあいこだろ。なあ?」

 


 あの時、とどめを刺すと同時に俺も刺されたけどな。

 


 「じゃあ、ここに集まった何かの縁で繋がっている者たち全ての、功績とこれからを祝って、かんぱいだ!!」



 王の渋い声で、祝勝会とでもいうべき食事会が始まった。

 



 見たこともない料理の数々が食卓いっぱいに並ぶ。


 

 ライアンはいつもの決め言葉を言うこともなく、黙々と手を進めて始めている。

 



 「後で、作り方教えてもらおうかな」


 ルカがこれを作れるようになったら、俺たちとしてもとても嬉しい。

 



 舌の上でとろけるような舌触り。


 洗練された味。



 数分の間、俺たち四人は言葉を一切発しなかった。



 そんな様子を王を含め、騎士たちは満足そうに見ていた。



 

 「フィルセ君、君たちはスートラの街からここへやって来たんですよね」



 イケメンさん。


 言い換えスチュアーノと言っていた男が口を開く。



 「はい、そうなんですけど……。なんで俺の名前知ってるんですか?」



 「それは、私たちが教えたから!!」



 ルカが、手を止めてこっちを向く。



 「じゃあ、セロちゃんも俺の名前を?」



 「ぎくっ☆ ごめんなさい。実は知ってたの。それでも………………、セロ的にはお兄さんって呼びたかったの☆」


 その健気な対応に俺は返答に困る。



 「そっ、そうなんだ……」



 返答に困ってしどろもどろしていると、ルカの俺に対する視線が凍り始めていた。

 



 「でも、親書の内容と君たちがここまで来るのにかかった日数が若干合わないような気がするけど……………。本当に四日間でここまで来たのですか?」



 そんな俺とルカの状況に助け舟を送るかのように、スチュアーノさんは別の質問をする。



 「確か、四日間だったはずですけど……」



 「では、どうやってですか?」



 そういえば、カノンさんも秘密のルートって言っていたような……。



 「えっと、俺たちはスートラの街に住む騎士団の隊長さんが言った通りの道を来ただけですけどね」




 「ふう〜む」



 スチュアーノさんが顔に片手を当てて、考え事をしている。

 「スートラの街といえば………、うん? ……、知ってることといえばあの豪快な領主さんと青髪のレイノンさんぐらいだが……」



 レイノンさんは美しいから、スチュアーノさんの記憶に残っていたのかもしれない。



 「カノンさんですよ」


 カノンさんだって、美形だが雰囲気が薄かったり濃かったりするのを俺は知っている。



 俺は耐えきれなくなって、地図をくれた人物を言ってしまった。



 「ああ。あの不思議な…………異彩とでもいうべき印象を放つ子ですか」



 スチュアーノさんは何かを思い出したように声を紡ぎ出す。



 「すちゅあーのが苦手そうなタイプだね☆」



 「人に向かって好き嫌いをはっきりと言いたくはありませんが、その言葉否定できませんね」



 俺の隣でルカも、うんうんと頷いている。


 一体どこに共感したんだろう。

 



 「お兄さん☆ もっとここまで来る間にあったこと、話してほしいな☆」


 童女は目をきらめかせる。


 「そこまで期待するようなことは起こっていないよ」



 そんな言いつつも、俺は自分の中でここまで来る間に起こったことを思い返してきた。



 彼らには俺たちが見てきた者の分からなかったことが分かるかもしれない。



 なにせまだ俺たちは知識というものが乏しい。



 拙い文章であったかもしれないが、俺は俺たちがここまで来るまでに特に気になったことを喋るーー語ることにした。

  


風邪引きました。

夏に風はキツイですわ


次回予告 「追想」

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