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想い華  作者: 冴木花霞
4/5

花を想う


 おうちで、ママと二人でパパを待つ。パパがおしょうゆを買いにいってる間に、ママにも、夢の話をしようと思った。思ったんだけど、お昼ごはんを作ってるから、ごはんを食べ終わってからにしようって、さち、お部屋に戻ったの。そしたら──。


「うわぁああん!!!」


 さちは走ってパパとママのベッドに向かった。


 ──怖かった。

 ──なんで? どうして???


「爽知!? どうしたの! 何かあったの!? 爽知!」


 ママがキッチンからすっ飛んできてくれたけど、何も、考えられなかった。


 赤いのが、黒いのが来る……。

 さちを、壊しに……。


「爽知……」

「……さち…」


 パパとママの声。

 くるまってる毛布にも手が置かれて、なでなでしてくれる。


「爽知、夢はゆめだよ。この世界にまで爽知を追いかけてくることはないよ?」


 パパが言った。なでなでしてくれる手は止まらない。

 夢じゃない…。ゆめじゃないの、パパ。


「花が、あるの………あの花っ……うぅ……」

「お花?」

「……っさわると、パッて黒く、なるの……消えちゃうの……こわい、お花なの……」


 きっとパパとママは、さちのこと不思議な子だと思ってる、よね。嫌われちゃったらどうしよう。

 思わずぶちまけちゃったけど。まだ、せなかなでてくれるけど、気味悪いって思ってたら……どうしよう。


「爽知」


 ママの、さちを呼ぶ声。すき。


「爽知のいう、お花。ママには見えなかったの……」


 え………パパとママには見えないの?


「ぁ……ぅ……」


 こわいっっ!!


「だけど、爽知だけに見えるのは、きっと意味のあることだから、パパとママと爽知で、意味を見つけましょう? パパとママを仲間はずれにしないで?」

「ママたちを仲間はずれなんて!!」


 毛布をのけて、ガバッと起き上がってしまったけど、その場合、仲間はずれっていうの? って、そんなことを考えてしまうくらい。

 パパもママも泣いてた。ママは、さちとおんなじくらい泣いてる。びっくりしすぎて涙がひっこんだ。


「ママ……」

「爽知、やっとママの顔を見てくれたね」

「ママ……」


 さちとママとでぎゅーってしてたら、さらにパパがぎゅーってしてくれた。三人でぎゅうぎゅうして、それから、笑った。ママも、さちも。


「爽知、やっと笑ったね」

「さぁ、まずはごはんを食べましょうね」

「うん!!」


 怖いと思うことはまだあるけど、さちが笑うとママも笑う。わたしは、それがうれしい。


 三人で向かい合って、ごはんを食べる。顔を合わせて、笑いあう。

 いつもより、ご飯がおいしい気がするけど、きっと、気のせいじゃないよね。


 ごはんを食べおわって、片付けものをすませて、ホッと一息ついた。

 L字型のソファに座って、パパとママにお花のことを話した。


 わたしのつくえの上に、花があること。

 さわると黒くなって、消えちゃうこと。

 お花見から帰ってきたら現れたこと。

 そしてママが言ってた。わたしにしか見えないこと。


 話すと怖い思いが出てきて震えちゃったけど、ちょっとスッキリというか、せいりできた気がした。


「爽知、そのお花、どんな花なの?」


 ママがわたしの背中をさすさすしながら聞いた。わたしは怖がりながらも、思い出して、少しずついう。


「えっと、赤い花で、花びらはベロみたいにベーってしてて、真ん中は短いのが立ってて……」


 言ってて訳がわからなくなってきたとき、パパが植物ずかんを持ってきてくれたから、あれじゃなくてそれじゃなくてってしながら見た。


「花びらが下がってるので始めに思い付くのは、かきつばた、かしら」


 お花大好きのママが、ずかんを見てるわたしとパパより先にいう。パパはかきつばたのページをめくりながら、うーんとうなる。


「でもママ、かきつばたって赤じゃないよ?」

「え」

「そうなのよ。青か紫。花菖蒲なら、赤っぽいのもあるんだけどねぇ」


 パパとママはうーむとうなる。ママはわたしの左手を握った。


「爽知、部屋に」

「ねぇパパ。かきつばたの花言葉ってなに?」

「え? えーっと……“幸福はきっとあなたのもの”だね」


 パパがなにかを言いかけたけど、ママがそれに被るように花言葉と言った。もちろん、パパはママのしつもんに答える。


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