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想い華  作者: 冴木花霞
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花を楽しむ

誤字、脱字、へんな日本語等ありましたら、教えていただきたいです。



 今日はお花見!

 近所のおじちゃんおばちゃんも集まって、うちも家族で桜やお花を見ながらご飯を食べます。

 ママが言うには、えんかいするんだって。

 いつも爽知さちたちが遊ぶ公園に集合です。

 ママは朝からお料理してて、パパは、えっと、場所の整備……だっけ。

 お昼に集まって、夕方には寒くなるから帰るよって言われたけど、パパは夕方からが本番って言ってます。

 近所のお友だちは、大人はお酒を飲むんだって言ってたけど、お酒って美味しいの?


「爽知ー! 暖かいかっこうしてね!」

「はーい!」


 ヒザにかけてもいい、くるまってもいい毛布を爽知のリュックにつめこんで、わたしは準備できた。

 あとはママのお手伝いをします。


「ママ、わたしは何をする?」

「じゃぁふたをしてもらおうかな」

「あ! 玉子焼きだぁ! 甘い?」

「甘いよー! チーズも入ってるよ」


 やった! 大好き!!

 わたしがふたをかぶせると、ママがささっとつつんじゃいます。早い。


「ご飯食べ終わったら、プリンもあるよ」


 ママの手作りプリン!

 ママのプリンはとろとろでおいしいです。爽知のお友だちにも大人気です!


 プリンも入れて、ママのお仕事が終わり。ほかのは他の人がやるんだって。

 ママ荷物いっぱいだから、爽知もちょっと持つ。

 玄関を出ると、三つとなりのハルくんとハルくんのパパがとおるところでした。


「さっちゃん! こんにちは! さっちゃんもいっしょに行こう!」

「こんにちは、ハルくんとハルくんパパ」

 四人で行くことになりました。


 ハルくんのおうちはママがいっつもむずかしそうなお仕事をしていて、ほとんどおうちにいないです。だからハルくんパパがおうちにいて、おうちのお仕事は全部できるんだって。うちのパパとママのお仕事が逆になってるんだって。


 ハルくんとハルくんパパのお荷物は、四角い箱みたい。ママがびっくりしてる。でもにっこりしてます。


「重箱……中身が楽しみです♪」


 うちのママのご飯はおいしい。でもパパの方がきれいだからか、ママはいつも気合いを入れて作ってます。パパはぜったいにご飯を残さないし、残さないようにねって言われてます。

 おうちからてくてく歩いて、まずは神社をとおります。

 小さい神社だけど、みんなとここで遊びます。ハルくんともここでお友だちになったし、ほかにもいっぱいいます。

 神社を通りすぎて、車が来ない道を歩くと。


「あ! おじいちゃんだ!」

「こんにちはー!」


 かどから出てきたのは、白いおひげのおじいちゃん。名前はわからないけど、神社や公園であそんでると、お菓子をくれたりおもしろいお話をしてくるおじいちゃんです。


「こんにちは。ハルくんとさっちゃん」


 わたしとハルくんがペコリとおじぎをすると、おじいちゃんはわたしたちの頭をなでてくれた。

 そのあとで、ママたちとおじぎしあってました。


「こんにちは。もうけっこう用意は済んでる様子でしたよ」

「あら。私たち遅かったかしら……」

「ははは。時間はおよそですし、大丈夫でしょう」

「教えてくださって、ありがとうございます」


 ママがかるくおじぎをして、わたしとハルくんはおじいちゃんに手をふった。

 おじいちゃんは、神社の方に向かっていった。


「ママ、おじいちゃんはお花見いかないの?」

「え? 参加されると思うわよ? 公園の様子もご存知だったし」

「さっちゃん、きっとおじいさんは忘れ物を取りにいったんじゃないかな?」


 ハルくんパパが教えてくれたことは、すとんとわたしの中におちた。

 うん、そうだよね。みんなで笑うと楽しいもんね。かるめにスキップしてルンルンで公園にむかった。


「パパー!!」

「おおっ! お弁当ありがとう、爽知」


 パパはにっこりしてるけど、なんかちょっと、いつもより声が大きい。


「あら、パパさん? もう呑んでるの?」


 あ。ママがちょっと怒ってる。パパはママの顔を見て、ちょっと声が小さくなった。


「いやー、ママ? おれにも付き合いってのが……」

「あと一杯までです」

「えっ……そんな殺生な……」

「もとより今日は休肝日のはずですからね」


 ママが怖いかんじでにっこりしたら、パパがしょんぼりした。

 ハルくんとハルくんパパが、びっくりしてるような、ちょっと笑ってるような顔をしてる。でも、このやりとりは、わが家のいつもの日曜日のことなんです。


「は、ハルくんパパさんは、どうです?? 一杯?」


 パパがあせあせしながらハルくんパパに近づいていきます。でもハルくんパパはおじぎをしながら手を横にふってます。


「いや、ボクは弱いので、すみません。今日は妻も居ないし、ハルも一緒ですので、ボクがお酌にいきましょう」


 そう言って、パパが持っていた缶ビールをもらって、騒いでる方へ行っちゃいました。パパもついていきました。


「……パパもあれくらい言えるようになってくれると良かったんだけどねぇ」

「ママ、しゃくってなに?」


 ひしゃく??


「お酌はお酒をつぐ人よ。自分が飲むとき飲まないときとあるけど、ハルくんパパはひたすらついで回っていらっしゃるでしょうね」


 へぇー、大人の世界って大変そう。


「さ。私たちも座って、お弁当を食べましょう! ハルくんも、一緒に座りましょう」


 ママとハルくんと、他のお母さんたちが集まっているシートの方へいきます。シートにはいろいろなお弁当やおやつが並んでいました。


「ぼくもうおなかペコペコ……」

「わたしも」

「ハルくん! さっちゃん! こんにちは!」

「こんにちは! 今日暖かくなって良かったわね♪」

「ほらほら、立ってないで座って! 手を拭いたら食べなさいな! お皿とお箸はここにあるから」

「「いただきまーーす!!」」


 子どもは子どもどうしでわいわい騒ぎます。なんのおかずが好きとか、あれは食べられないからとかから話して、やっぱり新学期が楽しみだねってお話しします。

 ちらっとママたちの方を見てみると、いつの間にかパパたちが帰ってきていて、大人でお話ししてました。


「ハルくんのパパさん、さすがですね!」

「これ美味しいです。どうやって作るんですか?」

「このキャラクターかわいいわ! なんのアニメかしら」

「さっちゃんのママさんプリンもデザートも見た目もきれいですね」


 大人ってすごいなぁ。わたしもこんなにきれいなお弁当作れるようになるのかなぁ。

 甘い玉子焼きも、タコさんウィンナーもからあげも大好き。みんなで好きなものを食べて、みんなでにこにこしてます。



 春休みって楽しい!

 夏休みは長いけど、宿題いっぱい出るし、とけちゃうほど暑い。冬休みも楽しいけど、春の方がだんぜん好き。

 ポカポカしてると、爽知もママもパパも、みんなにこにこ笑顔な気がする。

 うれしいなぁ、楽しいなぁっていう気持ちが、たくさん生まれてくる感じ。好きだなぁ。


 ああ、プリンに行きつく前におなかがいっぱいになっちゃった。となりを見ると、ハルくんもお皿をおいている。


「ママ、お腹いっぱい」

「あら」

「じゃあ爽知の分のプリンはパパが食べていようか!」

「えぇー!」


 パパがにっこりしながらいじわるなことを言います。


「ハルもお腹いっぱい?」


 ハルくんパパに、ハルくんもうなずいてます。いつもよりご飯いっぱいあるし、ポカポカしてるし、しかたないよね。


「じゃあ、さっちゃんのママのプリンのためにも、少し遊んでこようか!」

「行く!」

「行ってきます!」


 ハルくんパパの提案に、わたしもハルくんも立ち上がります。


「すみません」

「いえいえ。そんなに食べてないし、少し動けば帰ってきますよ」


 ハルくんとハルくんパパと、三人で神社の方までてくてく歩きます。風が気持ちいいです。

 神社には、神社だけど、ブランコやてつぼうがあります。蛇口もあります。小さな小さな公園みたいです。

 ハルくんとブランコにのったり、ハルくんパパと逆上がりをしたり。三人で鬼ごっこしたり。いっぱい走り回りました。


「待って二人とも。パパ、ちょっと、休む……」


 ハルくんパパがベンチでぐったりしてる。


「さっちゃん、神社のうらのほうを回ってこよう!」


 ハルくんパパに行ってきますと手をふって、二人で走り出しました。


「他の人や車に気を付けてね!」


 ハルくんパパが言ってくれたけど、神社のうらは柵があって、車も自転車もきません。わたしもハルくんも、もちろんハルくんパパも、みんな知ってます。何度も何度も遊んでいる神社です。


 当然、神社のうらがどうなっているのか、みんな知っています。

 なんにもない、ちょっとした庭になってるんです。裏庭、ってかんじです。草が荒れ放題になっていて、細ながい葉っぱで船を作ったり、アリさんの行列をじぃっとながめていたり。ぐるぐる回って終わらない鬼ごっこしたり。

 ちょっと大きくなると、階段の下にある物置みたいな小屋の屋根に飛び乗ったりできますが、わたしやハルくんにはまだできません。怖いし。


「さっちゃんのママの玉子焼き、甘くておいしかったね」

「ね! わたし大好きなの! でもハルくんパパのお弁当、ふたを開けたらキラキラしてたね! 食べる前からおいしいんだろうなって思ったよ」


 わたしたちは歩きながらお弁当の話をしていました。

 今は三時のおやつの時間くらい、のはずです。戻ったらプリンがあるねって、笑い合っていました。



『────』



「ん? ハルくん??」

「なぁに?」


 今、なにか聞こえた気がしたんですが、ハルくんじゃないし、ハルくんには聞こえなかったみたいです。

 わたしも、ぜんぶ聞き取ったわけじゃないけど……。

 まわりを見ても、人はいなくて、わたしたちのうしろは神社です。いつのまにか、ポカポカしてたお日様が雲にかくれていました。


「え……?」

「どうしたの? さっちゃん?」



『────』



 あ。また。

 こんどはハルくんにも聞こえたみたいです。

 なんて言っているのかはぜんぜん分からないのに、なんだか怖いって思うの。


「さ、さっちゃん、これ、もしかして神さまの声とか?」

「ま、まさか!!」

「でも……」


 ハルくんの手が、ちょっとふるえてる。きっとわたしもふるえてるかも。


「だってここ、神社でしょ? 神さまがいるんじゃ…」

「ハルくんのパパのところ、行こう!!」


 なんか、こわい。

 二人で走って戻ろうとしたとき、前からあのおじいちゃんが見えました。知ってる人に会えたことで、わたしとハルくんはそろってホッとしたと思います。

 夢の中で迷っていたけど、目が覚めた、みたい。


「おじいちゃんだ」

「よかった。大人がいるなら、もう大丈夫だね、さっちゃん」


 てくてくとおじいちゃんと目が合うところまできたとき、なんかちょっとだけ、変なかんじがしました。

 それがなんなのかは、分からないんですけど。

 なんだか、違う人のような……。

 だって、おじいちゃん?


「おい! そこのゴミムシども!!」




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