地球からの贈り物 (ショートショート62)
地球から三光年。
そんな近い宇宙空間に、生命体の存在する惑星が発見された。
人類はためしに電波を送ってみた。
するとおどろいたことに、その惑星から電波が返ってきた。惑星の住人は人類と同じほどに知能が発達しており、文明も同じように栄えていたのだった。
その後。
電波は言語に翻訳され、簡単なことであれば意思が通じ合えるまでになった。
惑星の住人はきわめて友好的だった。
『ぜひ、我が星へおいでください』
地球人を招待したい、そう伝えてきた。
『では、三年後にお会いしましょう』
人類も惑星への訪問を約束した。
人類を代表する使者――パイロット三名を乗せた光速宇宙船が地球を飛び立った。
惑星に向かって、宇宙船は星々の間を順調に飛び続けた。
飛行はすべて自動操縦である。
惑星に到着するまでの三年間。
パイロットは冷凍カプセルで冬眠状態を保ち、それは到着と同時に目覚めるように設定されていた。
となりの部屋には惑星人への贈り物――大きなマグロ三匹が乗せられていた。鮮度を保つため、やはり冷凍カプセルに収められてある。
地球を離れて三年。
光速宇宙船は、ついに友好の星――目的地の惑星に着陸した。
だがこのとき……。
パイロット三人は、いまだカプセルの中で眠っていた。セットされていた冷凍解除の時間がわずかに遅れていたのである。
かたや惑星。
親善の使者を乗せた宇宙船がはるか遠くの星から到着した。ところがいつまでたっても、なぜか一人として宇宙船から降りてこない。
心配した惑星人は、宇宙船のハッチを開けて中に入ってみた。するとそこには、初めて見る異星人がカプセルの中で眠っていた。
「飛行冬眠が、いまだに続いているようだな」
「どうもそのようだ。とにかく王様のもとにお連れしなければな」
「ああ。カプセルをお城に運びこんで、そこで目を覚ますのを待とう」
惑星人は六個のカプセルをお城に運び入れた。
カプセルを前に――。
「遠い星の使者でございます。いまだ飛行冬眠状態にあるようですが……」
大臣が王様に説明した。
「今夜の歓迎式典までに、目を覚ましてくれるといいのだが」
「ところで王様。使者は三名で、贈り物が三つだと……。どちらが使者でございましょう?」
「贈り物は、おいしい食べ物だと聞いている。しからば、こちらに決まっておるではないか」
王様は目の前の三個のカプセルを指さした。
「たしかにそうですね。こちらは、まったく食べられそうにありませんので」
大臣が別の三個のカプセルを見る。
「使者たちも、そろそろ目を覚ますであろう。失礼のないよう、歓迎式場へお連れするのだ」
「さっそくそういたします。で、王様。贈り物の方はいかがいたしましょう?」
「長い冬眠の旅で、使者たちはなにも口にしていないはずだ。これから料理して、歓迎の場で食べていただくといい」
三個のカプセルは丁重に式場へと運ばれ、もう一方の三個のカプセルは地下の調理室に運びこまれた。
「これを料理して、式典の晩餐会に出すんだ」
大臣がコック長に命令する。
カプセルの中身はすぐさま調理台に移され、大きな包丁を手にした数名のコックらによって解体が始められた。