シルヴィア、シャルロットについて知る。
「まぁ、お美しゅうございます、シルヴィア様」
「そ、そう?ありがとう」
シルヴィアはドレスの端を持ち、膝を折ってお辞儀をする。勿論リリアンナは数秒と経たないうちに辞めさせる。
「それではシャルロット様の所へ参りましょうか」
リリアンナはシルヴィアを先導するかのように前に立つ。実際、シルヴィアを先導するのはリリアンナの役目だ。シルヴィアにはこの王宮の知識がない。
王族の住まい、王都ジェズアルドに位置する王宮、チェルゼン宮殿は迷宮としてその名を知られていた。当代の王族ですら知り得ない通路や空き部屋、そしてそれらに隠される秘宝があると専らの噂だ。勿論、噂にすぎず本当である確証は無いのだが。
「シャルロット様はどんな方なのですか?」
「シャルロット様は大変美しく、気位の高い方です。ですが王妹ということを鼻にかけたりせず、民にも平等に接するお優しい方です。王族に生まれていなければ王妃に相応しいのはこの方だったでしょう」
内親王は、逆立ちしたって王妃にはなれない。皆、シャルロットが王妹に生まれたことを残念に思っているのだとか。
「先代の王、そして現陛下も他国の王へ嫁ぐように何度も説得されました。しかし、シャルロット様は大変兄上様である国王陛下のことを……その……お好きでらっしゃいまして」
リリアンナは言いづらそうに口ごもる。
「お兄様と離れるのは嫌、と結婚話を突っ撥ねてらっしゃいます」
「まぁ……」
聞いたところ、シャルロットは重度のブラコンらしい。シルヴィア自体も兄姉弟達のことは大好きだったため、気持ちはわからないでもない。シルヴィアと違うところは、シャルロットは他の兄弟には見向きもせず、国王陛下を一心に慕っている所か。
「そして大変、贅沢好きな方です。まあ、キチンと自制心をお持ちなのがせめてもの救いですが。ことあるごとに陛下に金銀をねだってらっしゃいます」
「えぇぇ……」
シルヴィアとして、それはいただけない。陛下におねだり?もしかして民からの税等を使っているのだろうか。
シルヴィアの不安を読み取ってか、リリアンナが口を開く。
「シャルロット様は趣味の洋裁でご自分でお金を稼いでらっしゃいます。シャルロット様の腕はそれはそれは見事で。どれだけ高かろうと貴族の皆様はこぞってお買い求めになられます。陛下にねだったお金で布や装飾品を買っているのです」
シャルロットは幼い頃から母である皇太后、パーシーに洋裁を習っているのだ。6歳になる頃には母の手じゃ飽き足らず、洋裁の家庭教師を雇うようになり、その頭角をメキメキと現したとか。
「シルヴィア様もお会いになったらドレスを頼まれては?恐らくシルヴィア様ならお安くしてもらえますよ」
「か、考えてみるわ……」