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シルヴィア、宮殿に着く。

「うわぁ……ここが、王様が暮らしている所……チェルゼン宮殿」


シルヴィアは、目の前に聳え立つ巨大な宮殿を見て感嘆の声を上げた。

ブルーメイン家も、伯爵家ということで大きく、他の貴族からも一目置かれていた屋敷だったが、やはり王族の住まいとなれば違う。

敷地はブルーメイン家の4倍程あった。


「立派ね。」

「そりゃあ何たって王様が住まわれているんですもの……」


馬車の窓を開け、呟くシルヴィアに返事をしたのは門の前で待っていた侍女のソフィアだ。


「あ、申し遅れましたシルヴィア様。今日からシルヴィア様のお付きになりました。ソフィアと申します」


シルヴィアが馬車から降りると、ソフィアは改まった姿勢になり深々と頭を下げた。


「そ、そんな!頭下げなくてもいいのよ!えーと……、ソ、ソフィアさん?」


遠慮がちに言えば、ものすごい勢いでソフィアは頭を上げる。

その俊敏さに、シルヴィアは驚くばかりだった。


「なりません!シルヴィア様!わたくしの様な者にさん、など……」

「えええと、じゃ、じゃあソフィア様?」

「違います!」


ソフィアが悲鳴に近い声を上げる。

ハリスが大事に育てすぎたせいで、シルヴィアはあまりにも世間知らずだった。

シルヴィアは何がいけないのかわからない。


「んー……ソフィア殿?」

「全然違います!どうか、ソフィア、と!お呼び捨てください!」



明らかに下の身分の女に、さん付けなどしてくる高貴な女性を、ソフィアは今まで見たことがなかった。

ただたんに世間知らずなだけなのだが、その姿がソフィアには新鮮に見え、優しい人とうつった。


「……うーん、それじゃあ貴方に失礼じゃない?」

「そういうものなのです!」

「あら、そういうものなの?」


クスリ、と妖艶な笑みを浮かべたシルヴィアに女の身でありながらもソフィアは少しドキリとしてしまった。


(――なんて、儚げに、美しく笑う人なんだろう。)


「じゃあ、よろしくねソフィア」

「はい。よろしくお願いします、シルヴィア様」


ニッコリと人の良さそうな笑みを浮かべてこちらを見るソフィアを見てシルヴィアは思う。


上手くやっていけそうだ、と。





「ここがシルヴィア様の室でございます」

「へぇ、ここが」


ソフィアに案内され、宮殿に足を踏み入れたシルヴィアだったが、その壮大さに度肝を抜かれていた。


全ての額縁が金って何よ。


どうして鏡に一々ダイアモンドが嵌め込まれてるの!?


そもそもどうして全部の床が大理石なのよー!



ハリスの正妻であり、シルヴィアの母のエリザベスは大変慎ましやかな人で、贅沢や無駄を嫌った。


その為、伯爵令嬢とはいえ、あまり豪勢な暮らしをしていたわけではないのだ。




「……ここ、ほんとに私の部屋?」

「正真正銘、シルヴィア様の室にございます」




まず第一に、広い。

シルヴィアがもと居た部屋の10倍は超えているだろう。

家具が少ないせいかもしれないが、シルヴィアにはそう思えた。


そして、床、ベッド、壁、天井……至る所までギンッギラギン!


豪華なシャンデリアが天井からは吊り下がっており、ステンドグラスの窓から射し込む日光にキラキラと反射して光っている。


天蓋付きのベッドの天蓋のレース部分には細やかな宝石が縫い付けられている。



「もしかしてお気に召しませんでしたか?」

「いいえ!そんな事ないわ」


きっと、自分のために誰かが用意してくださったのだ。


そう考えるシルヴィアだったが、この煌びやかさは頭が痛くなるほどだ。


「王妹シャルロット様がこの室の家具やらなんやらを全てお選びになったのですよ」

「王妹、シャルロット様……」


改めてぐるりと部屋を見渡す。


なるほど、王の妹が選んだとなればこの豪勢さも頷ける。



「シャルロット様は16歳。皇太后様腹の末子であられるものですから妹ができるのよ、とそれはそれは凄いはしゃぎ様で」


妹、か。

ふっとシルヴィアは微笑む。


仲良くなれたらいいな。



「その方についてもっとよく教えてくださらない?」

「あー……」

「?何か問題でもあるの?」


突然口ごもってしまったソフィアにシルヴィアが問う。

ソフィアは困った様にはにかんだ。


「あのー、わたくし、王宮に来て日が浅いというか、シルヴィア様の為に呼ばれた様なものですので……」



あまりよく存じあげません、と申し訳なさそうに言う彼女に、シルヴィアはそう、と言うしかなかった。



「でもご安心ください!」

「え?」

「もうすぐシルヴィア様付きの女官長様がいらっしゃいます」

「じょかん、ちょー?」


聞き慣れない言葉に首を傾げる。


「王宮について誰よりも詳しい方です」

「誰よりも、詳しい……?」



……と。




コツコツ、と控えめにドアをノックする音が響いた。




「ほら、いらっしゃった!」




そう言うソフィアの目には尊敬の念が溢れていた。





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