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捌《私》



「みーちゃん!」

「ちちーただいま帰りましたぁ」


飛び出てきた父に、帰ったことを報告。

その後ろに本郷がいることは気づいていない、堅物に見える父しかしらなかった本郷は唖然としている。

「み、弥代…」

本郷に気づき、姿勢を正したが遅い。完全に私をみーちゃんと呼んでいたのはバレバレである。


そんな父の焦りは無視だ。


「もうばらしちゃったから。 姫巫女様が戻っておいでと言ってくれるから甘えちゃったわけ」

「弥代、父も帰ってきてもいいといっていたが?」

「やっぱり、姫巫女様は素敵だなぁ。慈愛に満ちてる、崇拝するのもおこがましく感じちゃう」

「父の話は無視?!」

「あの、その姫巫女とは一体?」


本郷がそう問うが、私と父の琴線に触れた。

「敬称をつけなさい、本郷。姫巫女様は偉大で、私たちが容易に近づいてはいけないと思わせるお方よ」

「姫、巫女様……」

そう呟いた本郷に、一つ頷いて。私は、語る。

「この日出、国に伝う神話の神々に愛されし神が娘。時折、その御霊はここに生まれ変わり、この世を統べる。その姫巫女に仕える一族はこの国に点々と存在し、私、百々依も古くから仕える神使人。それまで、そんな歴史に馬鹿馬鹿しいとさえ思っていたけれど違った」

一目、見る前に彼女のテリトリーに入った瞬間に虜になった。凄まじい神聖さと慈愛、愛されるために生まれた人だと理解してその美貌と声色すべてが仕えたいと思わせる。彼女の側にいたい、父も、兄も妹も言った。そして、母も。母もその時、百々依とは別の神使人の一族出身なのだと知った。

そして、姫巫女様は言った。

「私は傅く人より、手を取り助け合いたい。」

そう言った、彼女に見も心も捧げたいと思った。


「つまり、私が信仰するのはたった一人よ。様は、あなたがた矢蔓一族があの男に崇拝するのと一緒、ではないか。格が違う、だって神なのだから」

私の矢蔓家での処遇をしった姫巫女様は、戻ってきてと私に言った。なら、私は戻って姫巫女様のもとへ行こうと決意したのだ。姫巫女様は、県外のとある所にいる。ここよりずっと遠い、その前に、だ。

「私、姫巫女様のもとへ行く。父、いい?」

「我が神使人は、あの方に仕えるためにいるんだ許さないわけはない。」

「待ってください、でしたら…木暮様は!木暮様はどうなさるんです?!」

「だから、離婚届にサインを貰いにいくんだってば!本郷!」


本郷は、押し黙りボソボソ呟いた。

「………本当に全然伝わってない」

「何か言った?」

「いえ、あの!弥代様、どうやって木暮様の所へ?まだ、所在も不明なんですが」

「そこは、大丈夫。今、まさに探してるから」


そう本郷に言ってから、実家での自室へと歩を進める。

あ、ヤバイ。忘れていた、わけじゃないけれどこれは本気でヤバイやぁ。押し寄せる、吐き気と怠さ、そしてズキリと痛む胸を咄嗟に押さえた。


もう一歩、踏み込んで視界がぼやける。そして、ふらついた足どりはいとも簡単に傾いて行く。


やっぱり、無理…

「みーちゃん?!」

「弥代様!?」

驚く父と本郷の声をどこか、遠くに感じつつ私の意識は閉ざされた。



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