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陸《危》

呼び止められ、驚いた拍子に式紙の元の紙がひらりと舞った。

「なに、」

それに気をとられながら、振り向きかけて一歩下がる。

「っち!」

明らかに今のは、殺意剥き出しすぎた。完璧に振り向くと先ほど私が立っていた所に刃を持った分家筋の男が立っていた。

「あからさまだね」

男、つまり私の一応旦那さんの守りが消えた瞬間これだから思いっきり溜め息を吐いた。

「聞いておくけど、旦那さんはどうしたの?」

そう問えば明らかに動揺した。それを見逃す私ではない。

「式紙が消えた、だからあなたは私を殺す?」

「ええ、そうです。木暮様があなたと結婚した、間違いだったのですよ。一般人と結婚、それは一族に全くもって不益です」

ジリジリ間合いを狭めようとするが、私はバカじゃない。さっと式紙の紙を取ると、男に向けた。

「木暮様の力がないソレでどうするのです?」

笑みを浮かべる男に、私も微笑む。

「私を殺してどうするの?旦那さんが死んでいるなら私を殺したとしても問題ないかもだけどね」

唐突に式紙が消えたのは、あの男の力が及ばなくなったから。ソレは、なにかがあったという証拠だ。式紙に与えていた力を解くか、もしくは術者が死ぬか、それか遮断された場所、この世界とは違う場所に入り込んだとき。男は私にそう言っていた。

「僕が居ないとき、勝手に消えたら死んだときか異世界に入っちゃったときだからね。僕がわざわざ解いたりはしない、もし消えたら逃げて。お願いだからね。」

逃げる、か。もう、面倒なんだよね。


「木暮様が死ぬわけなかろう、必ずや一族が救うに決まっている。その前に目障りな小娘を始末する」

そうだ、この男。この男の妹が、旦那さんの婚約者だったのだ。今更思い出してしまった、そもそも私に怒りを向けないでほしい。私は結婚を固辞したというのに、半ば無理矢理結婚に漕ぎ着けたのはあなたがたが崇拝する木暮、様なんだけれど。


「私は、死ねるわけないじゃない。そんな理不尽な理由で?バカじゃないの」

「死んでもらう、」

男が思いっきり踏み込んでくる、それと同時に紙を放る。

「ねぇ知ってる?紙の使い道は結構あるんだよ?」

ニッコリ笑みを浮かべて、私が言うことをバカにした目で男が見てくる。しかし、すぐに驚愕の表情を浮かべることになる。

徐にポケットに手を突っ込んで、金平糖が一粒だけ入ったケースを取り出す。目の前の男は不審がりつつも私の動向を見届ける。一粒、赤い金平糖を口に含みカリッと噛み砕く。やっぱり、甘い。

『言霊聞き取らば、我の命を全うしここに現せ。散れ、』

ボソボソ呟くと、急激な突風が吹き荒れ放った紙が散々になる。

『我を害する者へ』

男に向かって紙がひゅるりと舞う。

「……っ!」

紙というものは時には凶器になる。無数の紙の刃が男へ向かい男のあちこちを刻んでゆく。

かすり傷程度でも痛いものは痛い、男は苦渋の表情を浮かべ膝ま付いた。

そういえば、この男。一族に稀にあらわれる、才無しだった。陰陽師としての霊力が皆無、少々異形が見える程度であった。

「いつ、言ったっけ?」

「な、なにをだ…」

「いつ、言った?私が一般人だなんて」

男は油断していた、否。私を殺そうとする一族皆、私を油断していたんだ。



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