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肆《謎》



紫色の金平糖を口に頬張る。小さな粒だが、ほんのりと砂糖の甘味が口に広がる。



本日は日曜、よって男は休日だった。

私が座っているソファーに近寄り、コトリとコーヒーカップを置いた。湯気がゆらりと揺れる。男は専らブラックコーヒーである。

それを視界の端に見つつ、さっき紫色の金平糖を取り出した瓶とは違う方を取り出す。こちらの瓶は、色鮮やかな金平糖たちが入っている。

その中のひとつ、黄色の金平糖を摘まみ頬張る。やっぱり、

「甘い」

当たり前だけど。そう一人ツッコミを入れて、くすりと笑ってしまう。それに気づいた男が、じっと私の顔を見つめる視線を感じた。そっと確認すれば、やっぱり、見ていた。

「なに?」

耐えきれず聞けば、ぱぁっと花が咲くような笑顔をプレゼントされた。

「美味しい?」

「砂糖味」

「それはそうだけどー。僕のお土産のヤツだよね。」

ニコニコしながら言われ、コクリ頷く。

「でも、さっきは前からちまちま食べてるヤツだったよね」

気づいたのか、それとも気づいていたのか。どっちにしろ、核心は知らないだろう。

「これ、私の父が買ってきた高級金平糖。勿体なくてちまちま食べてる」

「えーこれも結構な値段だったよ」

ツンツン、男が買ってきた金平糖の入った瓶を指で弾く。私がそれを、揺らすとからんと音がなる。

「こっちの方が美味しく感じるから、結構食べてる」

男が買ってきた金平糖を見つめながら言う。本当にこっちの金平糖の方が食べてるから。事実にほんの少しの嘘を混ぜる。


男はよりいっそう笑みを深めた。


*****


「そうだ、来週の連休にね、出張が入っちゃって。弥代も行こうよ」

「行かない、飛行機は苦手だし」

本当に苦手だし、どうして出張についていく必要があるのだろうか?

「寂しい、だって2日も会えない…」

結婚してからたびたび、陰陽師として出張してはいたが日帰りをしていた。だから今回のは珍しいことは珍しい。しかし、男はどうして私に拘るのだろうか?


秘密を知ってしまったから、口止めのかわりに婚姻を結んだ相手にこんな態度をするのだろう?ずっと探ってきたけれど、よくよく分からないまま。


この家で一番権力があるのが、この男。なにせ、力がずば抜けているらしく現当主よりすごいらしい。世間話の中で拾った事実だ。

この男が私を見限る時、即座に抹消されることは直ぐに把握した。

この男が私に術をかけて、周りから守ってくれていることを知っている。私を殺せば男を裏切ることにもなる、だから誰も殺しには来やしない。殺意はあるみたいだけれど。



この男が私を捨てるとき、それと何らかの拍子に術が解けてしまったとき、それと男が死んでしまったときが私の抹消される日である。



考えていて頭が痛くなる、こう言うときは甘いモノに限る。一粒、男からもらった金平糖を口に入れる。やっぱり、

「甘い」




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