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弐《識》

陰陽師、これは結構有名だ。安倍晴明、彼の名前をよく聞くと思う。矢蔓家はその昔、安倍晴明が没した後、頭角を表した陰陽師一族なのらしい。

要するに、あの男も陰陽師にあたるわけで。


毎夜のようにああしてベッドから飛び起きていくのはその理由からだ。

私が彼のその正体に気づいてしまったから、現在こんな関係に陥っているのだ。



矢蔓木暮を面識したのは、高校3年になって同じクラスになったから。もともとその存在事態は有名で、だってあの容姿にスペックが高い男を女子が野放しにするわけないのだ。それに、彼女もいないなら尚更そして、ミステリアスさもある。そんな男は、いつも女子に囲まれ団子状態だったからどこにいるのかは見もしなくても噂で勝手に流れてくる。初めて団子状態をみた、のは高校1年になって2週間目だったかなぁ。


クラスが同じでも、私は全く興味がない。ただ、休み時間のたびに瞬く間に団子状態になるのがすごく面白く、授業が終わる数分前から男の方を見る癖がついていたくらい。


初めて言葉を交わしたのは、厄日だと私は思う。なにせ、それが原因で私が矢蔓弥代になったのだから。

それは突然だった、1日中ふらふらする頭に辟易した私は放課後、保険医が不在なのをいいことにベッドに潜り込んだ。10分ほど眠っただろうか。一頻り寝たことで少し和らいだので帰ろうとした。人がいない、なんとなくそう思った。放課後といえ、部活動もあっている。現に、遠くでは野外の部活動の声が聞こえてくる。しかし、保健室一帯はなぜか静まりかえっていて。不思議に思っていたら、男が現れた。要するに、陰陽師が退治するべくモノと一緒に。


「あ、」

男は私の存在に気づき、焦った顔をしたのが遠目でもわかった。

「え、」

男が声を発して、私は我に返った。即座に保健室に戻り、戸を勢いよく閉めようとしたが閉まらなかった。ガツン、音がして見ると男の足が邪魔をしている。

「………」

なんで、こんなに早く!

男は先程までの保健室から一番遠い廊下の端にいたはずなのに、戸を閉めるまえに足を滑らせていた。結構な勢いと力で閉めようとしたのだが、男は涼しい顔で言った。

「バレちゃったね、僕の秘密」

バレたのに愉しそうに笑う男に、私の目は釘付けになった。この、男は一体なにを考えているのだろうか?その前に、

「ソレ、早くどうかしたら?」

保健室の戸の隙間から覗き見えた、オニのようなモノを指差して私は言う。それに男は、一瞬だけ驚いたが即座にソレに向き直った。

その隙に私は抜かりなく、保健室の奥へ引っ込みはしたないと思いつつも窓から外へ飛び出した。 



次の日、男は放課後私を待ち伏せしていた。珍しく取り巻きを付けていないな、と思いつつもマズイと焦る。だって、聞かれたくない話しかないじゃないか。

朝、普通に教室に入った時既に団子状態を形成されていてホッとしてから忘れてしまっていた。なんて私は、忘れっぽいのかと思った。


「逃げないでね、百々依さん。昨日、必死に探したんだよ?」

一歩、後ずさった私に男がそういったので諦めた。

「なに」

「秘密、知っちゃったよね?」

私の態度に、愉しそうに笑って男はそう言う。

「口封じ?古風だぁね」

「んー、ちょっと惜しいかな?近い、けど」

男は私に近寄って、一枚の紙を取り出した。

「身内にしちゃえば問題ないし、いざというとき役に立つし…。結婚、しようか」

男の言葉を咀嚼して、理解して。

「は?!」

虚を突かれた私は、すっとんきょうな声を出してしまう。そう、来ます?

「結婚。拒否権はないよ、だって僕の秘密知っちゃったからね。」

男はさもありなん、そう言う。しかし、私にも言い分はある。

「結婚は無理、秘密をばらすほど口は軽くないし」

私は後退しつつ、そう言う。

「私になんのメリットもない」

「メリットがあればいいの?」

「そういうわけではない、けど。」

困った、こういうことになるなんて想像もしていなかった。動揺、私は珍しく動揺をしているらしい。言葉がうまく思いつかない。

「なら、どうして?」

………困った、今思い浮かんだことを話して。結婚できないのだと納得出来るわけない、けど。思いつかない。

「…好きでもないのに、よく結婚なんてできますね」

「好きだよ、弥代」

唐突に名前を呼ばれて、ドキリと胸が高鳴る。目を見開いた私に、愉しそうに笑う。

「……簡単に言うんだ。」

ソレだけ残して私は、駆け出した。とんでもない状況に陥ってしまった、解決策を早急に考えなければ本当に結婚させられてしまう。そう、思った。




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