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拾弐《神》



あの男は、まだ生きているのだろうか?否、それは確かだ。なにせ、あの姫巫女様が死んでいると言わなかった。たとえ、隠したとしてもあんなに美しい笑みを浮かべないだろう。


「ああ、そうだ」

私が倒れ、意識を失ったからあの子はただの札に戻ってしまったんだった。

妹である、妃代が着替えの途中に渡してきたモノを手のひらに広げる。

「なにを、されているんですか?」

本郷がメガネを整えつつ、こちらに向いて問う。その横で私は、手のひらに広げたそれをみせる。

「ああ、式紙だったもの。そして、これからまた命を吹き込むわ」

ふぅと息を吹きかけ、イメージしやすいように瞳を閉じた。紙吹雪が私を包む。言葉をのせると、より強力になるがあまりここで力を使うのはよろしくないだろう。そう考えつつ、意識をそちらに向ける。


「おいで」


瞳を開き、出来上がったその子を呼ぶ。

少し前、初めて作った式神より上手く出来た?

「先程も連れていましたね?その、式紙を」「この子は、私が生み出したモノ。だから、神様と書いて式神の方」

「神、ですか。」

「そう、神様の力を借りているからね。源は、神だから」

尾を振りつつ、トコトコと近寄る犬の形をした式神の頭を撫でる。それにさらさらと尾を振るから可愛い。

「神、と見えることも力に当てられるなどとは思いもしませんでした。それに、先程のあの式神より力をより強力に感じますね」

「ああ、たぶん。姫巫女様が側にいた分だけ私達神使人は力を増すらしいから」

「え、それはどういった」


「それは、……の前に進もう。本郷」

灯籠に灯された道を、二人と一体の式神とで歩く。時折、後ろでふっと灯籠が消えるのがびくりとしてしまう。もう、後には戻れない。私には、帰る方法が一つだけあるが本郷にもあの男にはないのだ。たぶん。

黙ってついてくる本郷に、なんとなく気まずさが立ち込める。それもそうだ。本郷とは時折しか言葉を交わしたことがないし、本郷は私を一般人だと思っていた。いいや、矢蔓家自体が。だから、あんな事態になるのだけれど。

でも、政界にまでパイプを持つ矢蔓家に姫巫女様の存在は知られたくなかった。姫巫女様は、貴重な存在だ。唯一の人神で、国のためにと力をふるえと、野心のためにと言う輩がいないわけじゃない。姫巫女様は、静かにひっそりと代々その魂は生きてきたのだ。煩わせることなど、させたくない。それは、私達神使人たちが皆共通して守ってきたモノだから。



「本郷、姫巫女様のことは忘れろとは言わない。だって、忘れることなんてできないから。けれど、一つだけ。決して、口外しないこと。」

「え」

「姫巫女様の力は凄まじいこと、その身で感じたハズ。なら、分かるでしょう?」

「……その力で、世界さえ覆してしまいかねない?そういうことでしょうか」

「……まあ、大袈裟に言うと。」

「分かりました。それに、私には恐ろしくて仕方ない。弥代様や、ご家族の皆様が平然と対面されていたことさえ不思議で仕方ない」

恐怖を思い浮かべた顔をする本郷にクスリと笑ってしまった。あんなに美しい姫巫女様が恐い。それも分かる、だって初めて会ったとき恐怖で動けなかった……慣れれば心地よくて。これはきっと神使人であることが大きいと思う。きっと。


「神使人、私たち一家はそれにあたるって言ったとこまではいい?」

「ええ、はい。」

「神の使いである人。神の代行とも言えるわけ。その身に神の力を宿し、代行する。その神の力を宿すために器を持つ一族を神使人だとしているの。遡ること、始まりの姫巫女様から始まるわけだけど。」

話は、大分長くなってしまうから手短に。姫巫女様が身に付けていた物を貰った者を先祖としそこから神使人になったのだ。姫巫女様が身に付けていたからこそ、力が宿りそれは神器となった。その神器を渡すと同時に姫巫女様は術を施した。

『もしも、混沌の時が来たとき私の力を少しだけ使えるようにしました。あなたは、絶対に己の欲のために使わない。そう信じています』

姫巫女様の力を借り、術を用いれるように術を施した。それが、代々血として受け継がれ私たちは力を使うための器と呼ぶ。それがないと、神の力を使うのは人の身体には負担が大きいから。そして、姫巫女様が言ったように私たち神使人は絶対に己の欲のために使わない。

もし、使ったならどうなるのだろうか?そう思った時、史実ではこう記されていた。ずっと昔、奔放息子がとある一族にいた。彼は、己の欲のためにそれを使おうとしたとき力を使えなくなり力さえも感じなくなってしまったと記されていた。それ以降、そういった史実は残ってはいない。



「力を使うための器、ですか」

「そう、その器の大きさは人それぞれで借りれる力もそれによって決まる。し、神器から力を本来は借りるのだけれど姫巫女様が側にいれば姫巫女様本人から力を借りることになる。」

「神器に宿った力より、本物だから力が強くなるわけですか」

そう、そういって私は頷いた。


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