1/13
序
お師匠様が行方不明になった。
南の洞窟の封印がなんだか怪しいから見てくると、まるで嵐の日の畑を見回る農民のような言葉を残して。
……お師匠様、それ死亡フラグってやつです。
そう思ったけれど、そんな言葉でお師匠様を止められるはずもなく、それから10日経ってもお師匠様が帰ってこない。
いやちょっとどうしよう。真面目にどうしよう。これはわたしも見に行かなきゃならないのだろうか。どう考えても、ミイラ取りがミイラになる予感しかしない。
とはいえ、いい加減魔道具の注文だって魔法薬の注文だって溜まりつつあるのだ。領主の城から呼び出しだって掛かってる。これ以上放って置くわけにはいかない。
「ああもう、お師匠様のバカ……見習いにこんな心配させないで欲しいわ」
はあ、と溜息をひとつ吐いて、明日の早朝、問題の南の洞窟のようすを見に行くことで覚悟を決めた。
南の洞窟の封印に自分が引っかかっちゃってました──だったらいいんだけど、きっとそうじゃないんだろうなあ。見習いには荷が重すぎるわ。