はじめての
「ななのベッドはそこだろう?
私のベッドはその隣のこれだ。」
新しい同居人ができて嬉しいみたいで楽しそうにベッドの話をする。
違う…私が聞きたいのはそこじゃない。
「その隣にあるベッドのヤツも最近来たやつなんだよ。後で紹介するね。」
違う…それでもない。
「…ここはどこなの?」
「あぁ、そうだったね。
私もよくはわかってないんだけどさ。」
私の同居人はけらけら笑いながら続ける。
「私はここに何年もいるからさ、推測なんだけど、多分死後の世界に行く為の待合室みたいのだと思ってる。」
「…中二病ってやつ?」
「ちげーよ!真面目な話だよ。
定期的にあの黒いドアからお迎えがくるんだよ。」
「黒いドアからお迎えって…天国には続いてなさそうだけど…」
「…私はいったことないからわからないよ…」
「…かんなさんは何年もここにいるって言うけど、みんなそうなの?」
「……大抵のやつは何日もしないうちにここから出て行っちゃうよ。」
かんなは少し下を向きながら話す。
「あとさ、私のことはかんなでいいよ。」
取り繕うようにまたけらけら笑う。
多分この子は今までこうやって生きてきたんだと思う。
私にはできないことだった。
辛いことに立ち向かえなくて死を選んだ私には。
そのとき、突然警報のようなサイレンが部屋に響き渡る。
「お、ちょうどいいや。
聞くより見ろってね。それでこれからどうするか自分で判断して。」
そのときの私にはかんなの言ってる意味がわからなかった。
「これはお迎えが来る合図だよ。
今日は誰が連れてかれるんかな。」
相変わらずかんなはけらけら笑う。
「……さみしいの?」
「……さてね。」
状況はよく飲み込めなかったけどそんな気がした。
自分を取り残してみんな「お迎え」でどっか行ってしまうのはどんな気持ちなのだろう。
人と人として接する機会が少なかった私には難しい気持ちだけどそれはきっとさみしいんだと思う。
「これが終わった後にななに提案があるんだ。
だからあんたは今連れてかれるなんて冗談、なしにしてよね。」
「…何で私なの?」
「あぁ、勘だよ。
ななはすぐにはいなくならない気がしてさ。まぁ、同じ部屋になったのも何かの縁でしょ?」
「……」
きっと今までもその「提案」を何人かに持ち掛けてきたんだな…。
でもすぐいなくなってしまったと。
「話くらいなら聞くよかんな。」
「ん、ありがとうなな。」
ここが死後の世界だろうと生前よりマシだ。
生まれてからはじめての友達が私にできた。




