けらけら
退院後、私は古いけど自然に囲まれた一軒家に引っ越した。
その二週間後にゆいもこちらに越してきた。
引っ越して一月とたたずに新しい仕事を見つけた。
ゆいは私から見たらしっかりしたお姉さんだ。
いじめられるなんて要素が見当たらないくらいに…
私はというと新しい学校に馴染めたか馴染めていないかというとべつに馴染めていない。
仲のいい友達ができたわけでもないし一緒にどこかにいくような友達もできていない。
まぁ、週末はお母さんと過ごすかゆいとどっかに行っているからいいんだ。
少なくともまだいじめられているなんてことはない。
私の夏休みとゆいの夏季休暇が重なった5日間で、私たちはかんなに会いに行った。
かんなはお母さんの同級生で親友だった。
かんなの名前は巫 美緒って言うらしい。
かんなはあだ名でかんな自身もそれを気に入っていたみたい。
かんなが寝たきりになってから何度か会いに行ったみたい。
遠くに引っ越したみたいで中々会いに行けなかったらしいけど。
「お母さん…かんなはね、私を助けてくれたんだよ。」
あの時の話をお母さんに聞かせた。
お母さんは驚き、喜び、悲しんだ。
「あの子にはいつも助けてもらってばっかりだな…」
お母さんは涙を流しながら空を見上げた。
かんな…かんなは救えなかったって言ってたけどそんなことないよ。
かんなはちゃんと救ったんだよ。
お母さんを……私もゆいも…。
そこからお母さんに聞いた話やらお母さんの昔のアルバムやらお母さん繋がりの人に話しを聞いてやらでやっとかんなの居場所がわかった。
お母さんが言っていたかんなが入院していた近くにいなかったから結構大変だった。
「お母さんは仕事で一緒には来れなかったから今回はゆいと2人だよ。」
「久しぶり、かんな。」
私とゆいはかんなの遺骨が埋まっているであろうお墓に軽く挨拶をした。
「もう、探したんだからね……」
返事が返ってくるはずのない文句を言った。
「ななったらね、もうずっとかんなの話ばっかりするのよ。」
ゆいも1人笑う。
「もー…それはあんま言わないでよ。」
「ごめんごめん。」
私たちはまるで3人で話しているように会話をする。
ここにいるわけないのに…
届くはずないのに…
なんて今日は後ろ向きに考えないことにしたんだ。
かんなに絶対届いてるって信じて私は言う。
「かんながいたからね、私とゆいは…お母さんだって今笑って生きていけてるんだよ。
私たちのために悩んで、泣いて、真剣になって、それで一緒に笑ってくれる。
そんなかんなだから私たちは救われたよ。
そんなかんなが私たちを救ってくれたよ。
だからかんなも救われなきゃだめなんだ。」
私は誰もいない部屋で泣いていたかんなの姿が頭に浮かぶ。
「この声届いてるかな?!
毎回ここに来たら大声で言ってやるから!」
「私も!」
私たちは今日は泣かないって決めていた。
だから私たちは笑いながら大声で言ってやった。
「ありがとう!」
その後は大笑いしてやった。
私は少し目が潤んでいたかもしれない。もしかしたらゆいも…
私たちの笑い声がこだまして返ってくる。
気のせいかもしれない。
でもその笑い声のなかに独特な笑い声が混じっていたような気がした。




