普通の親子
それから私は医者から色んな話しを聞かされた。
二週間近く目を覚まさなかったこと。
目を覚ましたのが奇跡だってこと。
お母さんがほぼ毎日ずっと一緒にいてくれたこと。
なんでお母さんが…?
私なんてどうでも良さそうだったのに。
私の脳裏に幼い頃のお母さんの顔が浮かぶ。
屈託のない笑顔が。
私の大好きなお母さんの顔が。
目を覚ましたときお母さんは私に謝り続けた。
「ごめん…ごめんなさい。
私が…私が弱いばっかりに…」
お母さんは父親と別れたらしい。
お母さんは私に興味がなかったわけじゃないんだね…
ただ…ただ怖かっただけだったんだね。
人はそれを最低の母親と称すかもしれない。
でも私はそんなお母さんを許した。
許すことができた。
逆にこんなお母さんだからこれからもぎくしゃくなくやっていけるような気がした。
「お母さん…私のことはいいから仕事行ってきていいよ?
今までのことだって怒ってるわけじゃないから。」
「なな…私は罪滅ぼしのためにあなたといるわけじゃないよ。
私が今までの分も一緒にいたいから一緒にいるんだって。」
お母さんはお母さんで今まで苦しんできたんだろうか。
父親に殴られる私を見て夜な夜な泣いたりとか?
わからないけど今は幸せなんだと思う。
私はお母さんと一緒におばあちゃんの家がある(おばあちゃんもおじいちゃんも最近死んじゃったけど)田舎に引っ越すことになった。
こんな町に未練のない私はもちろんOKした。
新しい生活に胸に期待と不安を膨らませながら、車椅子でロビーにいき自動販売機でイチゴミルクを買った。
「なな……?」
聞き覚えのある声がした。
「………ゆい……?」
そこには松葉杖をついて目を丸くしているゆいがいた。
使者からお迎えがきたゆいはどうやらこちらの世界に戻ってきたみたいだ。
私は少し神様という存在を信じた。
だってまさか同じ病院にゆいが入院しているなんてね。
あとゆいと普通に話してあれは夢なんかじゃないって再確認できた。
「ななに会えてよかったよ…私またこっちで1人で生きていかなきゃいけないのかなって思ってたから…」
「うん……私もちょっと生きていくのに自信ついたよ。」
お互いかんなの話はしなかった。
おそらくゆいの所にもかんなは行ったと思うから。
かんなの話はまた今度にしたいんだ。
かんなの居場所がわかってからにしたいんだ。
「あ…でも私お母さんと田舎に引っ越しちゃうんだ……。」
「そうなの?」
ゆいは残念そうな顔をしてから意を決したような顔をした。
「なな…気持ち悪いかもしれないけど…私も同じ町に引っ越していいかな…?
1人じゃこんなところで生きていく自信ないの…」
答えを聞くのが怖いのか怯えながらぼそぼそ話す。
「……気持ち悪いわけないじゃん…私だってゆいといたいんだから。」
この世界が愛おしく感じたのなんて何年ぶりだろう。
「一緒にいこう。」
私はゆいの手を取って笑った。
ゆいは泣きそうになったけど笑って見せた。
ゆいは私の病室の前まで一緒に来てくれて、部屋の中で待っていたお母さんと軽い挨拶をすると自分の病室に戻っていった。
「まさかななにあんな可愛い友達がいたなんて。」
お母さんは嬉しそうに驚いている。
「私にだって友達くらいいるんだからね!」
「あはは、ごめんごめん。」
普通の親子の会話が嬉しかった。
「……ねぇ、お母さん…」
「ん?なに?」
私は普通の親子の会話の中で何気なく訪ねた。
「かんなって知ってる?」




