核兵器投下
「ん?」
浩二は空を見上げた。飛行機が飛んでいる。
「なんだよ、アメリカの飛行機か?」
それにしては空襲警報がならない。ということは何もないのだろうか。
今の浩二にはそんなことどうでもよかった。二宮真理子と付き合いたい。国籍が違うからなんて理由はいやだ。
「真理子ぉぉぉ!」
あきらめきれない。
浩二はくるりと振り返ってUターンした。
もう一度。もう一度、お願いしてみよう。次は絶対にあきらめない。何が何でも付き合う。
そのときだ。
ドッカーン!!
「うわぁ!」
突然の強い光と共にきた、猛烈な音。
何が何だかわからない。
「真理…子。」
そう言って、浩二は倒れた。
「浩二さん!浩二さん!」
真理子はやけただれた皮膚の痛みを懸命に我慢しながら浩二の下へたどりついた。
「起きて!」
核兵器が投下され、どれくらい経っただろう。真理子はあのあと、意識を失うことなく生き延びていた。
浩二の周りには幾つもの死体。真っ黒で男か女かもわからない。
「浩二さん。」
浩二も真っ黒だ。だが、生きていてほしかった。
「…浩二さん!」
なかなか動き出さない浩二に、真理子はふと思う。
「生き延びていたのは私だけ?」
そうとなれば浩二は死んでいる。
「ダメ。ダメよ!浩二さんっ。」
もう、なんなのよ!?とっととアメリカに降伏しちゃって。
戦争にまけたって別にいい。
罪のない人たちが死なないですむのだから…。
「…真理子?」
真っ黒な口がかすかに動く。
「浩二さんっ…。真理子よ。」
「ヨカッタ…。真理子が生きていてくれた。」
浩二はふと笑う。
「オーイ君達。病院に連れていくよ。」
軍服を着た人だ。
子供のころ教えてもらった、「いい兵隊さん」だろう。
「お願いします。私は大丈夫なので早く浩二さんを!」
「分かった。」
兵隊がこちらに来ようとしたそのときだった。
ドカーン!
またしても、音がした。
「…隣のまちにもおとされたらしいな…。」
「そんな…。アメリカはどうかしてますよ。」
「仕方ない。日本だってアメリカ人を多く殺している。」
少しの間、沈黙が流れる。
「…それより、早く。」
浩二を近くの小学校があった場所につれてきた。おんぶでだ。
「何てこと…。」
りっぱは小学校があったそこは、くずれて階段がなんだんかと、校舎の部分も4分の1くらいになっている。
「原爆の約10倍だよ。アメリカが予告していたのにも関わらず日本は降伏しなかった。」
兵隊は言い、浩二と同じような姿になっている人々がいる運動場へ行った。
「浩二さん、もう少しですよ。」
「…あぁ。」
3人はゆっくりゆっくり、歩いたのだった…。