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力と襲撃の理由

 「ここは、俺の部屋・・・?」


 

 こういうのは見慣れぬ天井が広がっているのがセオリーだが、俺の場合は違ったようだ。

 ごくごく見慣れた、八畳半の俺の自室、なんの飾り気も無い電気があるだけの天井が広がっていた。



 「俺は、やっぱ・・・・しんだのか?」


 

 しーん。

 と、ここでの沈黙は意外とつらかった。


 やはり死んではいない。この独特の空気や体全身の痛みがそれを訴えている。

 痛みがあって嬉しいと感じるなんて、俺はマゾかと突っ込みたくなるがそうじゃない。


 ただ単純に、生きてることが嬉しかった。


 そして思い出されるのは昨日の化け物。

 そして、あの男女二人組みのペア。

 明らかに、両方普通の人間じゃなかった。


 片方は魔法をつかって、もう片方は長剣なんてもってそれで化け物を一刀両断していたのだ。


 ゲーム的にいえば、ソーサラーとウォーリアーといったところか。



 「そうだ、あいつ等は無事なのか・・・?」



 俺のほうへ駆け寄ってきて、そんで爆風で気絶した三人。

 同時に、幼馴染のアイツを思い出して心が揺らぐ。


 本当に後悔しか出ない。

 なんだろう、この喪失感は。

 ぜったい言葉じゃ表せない何かが、俺のなかに巣を作ったように居座っている。


 

 「はぁ・・・・、助け、られなかった・・」



 そうやって、また失敗を思い返す。

 前のときもそうだった。

 こうやって俺が悩んでいて。いっそのこと俺も死のうかなんて考えて。ベッドから起き上がったとき、あいつが・・・・・



 「あら、おきたんですの?」



 そう、こんな感じに・・・・・・・ん?



 「ってあんた!ど、どうしてここに!?」



 驚いた。言葉が出ないとはこのことか!?でてるけど!

 開いた口がまさに塞がらない状態。

 さぞ滑稽だろうが、俺はいろいろ手一杯だ。

 何だこの状況!?

 なんでお前が居る!?



 「あら、どうしてここにとは失礼ですわね?大怪我で気絶して、今にも死にそうな貴方を治療し、そしてこの部屋まで連れ帰ったのは誰だと思っていますの?」


 「そ、そうか・・・・」



 どうやら、この女は俺の命の恩人らしい。

 確かに俺は手ひどい怪我、いや大怪我で死ぬ寸前だったはずだ。

 それをここまで塞いでくれたなんて、現代医療じゃ無理だ。

 やっぱり魔法なのか・・・・?



 「そ、そのありがと、な?」



 やはり日本人たるもの、恩を受けたのなら返さなければなるまい。

 そしてその前に礼の一つをするのは当然で・・・・・



 「まぁ、全部やったのはクロードですけど」


 「俺の礼を返せ!!」



 前言撤回しよう。

 コイツに尽くす礼はない!!

 


 「まぁいいですわ。そ・れ・よ・り!私、貴方に聞きたいことがあるんですの!」


 

 そういうなり、女はずいっと体をこちらへ寄せてきた。

 今更だが、こいつの格好は浮いている。

 茶系の目立たない、全身を覆うようなフード付きのマントを羽織っていて、中になにを着ているのか最初は分からなかったが、今はそれが見えている。

 それはまるで物語の中の冒険者そのものだった。

 白いシャツに銀の胸当て、マントから伸びる腕には同じく銀の腕甲、足にも銀のレギング。

 指には多分ゴールドの指輪が二つ。防具のしたには目立たないほどくらい目の緑のズボンをはいている。


 これが制服だったり、はたまた露出度の高い服装だったならば俺も気が動転しただろう。

 だが、完全装備のフルメタルガールに欲情などはしない。


 ってことで平常心を保てたのは、俺にとっていい方向へ進んだ。



 「なんだよ?俺のほうも聞きたいことがあるんだけど・・・?」


 「まぁ、私の質問に答えていただけるのなら、そちらの質問にもお答えするのは当然ですわね」


 「おっけ。じゃ、なんでも聞いてくれ」



 とまぁ、そんなこんなで。何故か俺の部屋で、何故かフルメタルのガールが、何故か俺の力について質問を始めるのだった。





 ☆☆☆




 「やっぱり!そうでしたのね!!」



 「だからなにがだよ、エレナ?」


 

 「貴方は神殺し!なのですわ!!」



 はぁ・・・。と俺は何度目かのため息をつく。

 露骨に口に出してではない、心の中でだ。やはり自分と話している最中の女性の前でため息をつくのは失礼に当たると思うからで、たんに機嫌を損ねたくないとかそうゆうのじゃない。



 どうにも、こいつ、エレナ・フレイア・クォルティネントが言うには、俺はただの人間ではなく“神殺し”という特殊な条件下で産まれる上位種であるらしい。


 最初に、どうして自分達の姿が見えるのか、同じようなものはいつから見えるのか、何か他人と変わった力は持っていないのかなど、散々根掘り葉掘り聞かれた。

 まぁ、こっちの質問にも答えてもらうってことで、俺は全て正直に答えた。

 普通だと怖がられる俺の力も、エレナの前では興味の対象でしかないと思ったからだ。



 結果はその通り、エレナは目を輝かせて俺のほうを見ている。



 正直その目はやめてほしい。

 むず痒い。


 

 「なぁ、俺がその神殺しってことは置いといてだな。・・・・お前らが異世界から来たって本当か?」


 「えぇ、嘘はついていませんわ。私とクロードはクォルティネント家に依頼された仕事を片付けるためにここへきたのですから」



 そして、俺の予想通りの答えも貰った。


 どうやらエレナとクロードは異世界人で間違いはなさそうだ。

 魔法や剣を見たときからそうなんだろうなとは思っていたが、いざ確認するとなると、やはり心がうずくものがある。


 

 だが、一つ聞き逃せないものもあった。



 「私達がこの世界へこられたのも、貴方に出会ったのも、おそらく偶然ではありませんわ。貴方の神殺しとしての力が魔物を呼び寄せ、そしてそれを追っていた私達をも呼び寄せたのではないのかとおもいます」



 それがこれ。あの化け物どもの襲撃の理由。

 どうやらそれは俺にあるらしい。


 神殺しというのはとても貴重でとても強力である。

 神という、人間の圧倒的高位の存在を殺すことでその力の一部を取り込み、自分を強化できるのだから。


 だが、同時にそれは危険を意味する。


 魔物とは、魔力をくらって生を繋いでいる。

 魔力を内包した生物をくらうことによって、その生物の魔力を自分に取り込むことでエネルギーとするのだ。

 そして、魔物は魔力が強いものにこそ惹かれる。


 つまり、神殺しとして魔力を持ってしまっている俺は、そこらの人間より美味そうで、尚且つ魔物に対する抵抗力も低い、絶好の餌だということだ。


 俺がいつ、どうやって神を殺したのかは知らない。だが、この世界でエレナたちの姿を“許可”される前に発見できるのは莫大な魔力と、そして神の力を持つものだけ。

 つまり、エレナたちや魔物が普通の状態で見える=神殺しとなるわけだ。



 「纏めると、俺が居るから化け物が来て、それを追ったからエレナたちがきた」


 「そういうことになりますわね」


 「・・・・・ッ!なんてこった、ちくしょう!!」



 それじゃまるで、俺のせいで皆が死んだのと同じじゃねえか!!

 そんなの、許せるかよ!!



 涙がとめどなく溢れてくる。

 これは怒りだ。化け物ではなく、弱い俺自身に対する。

 情けねぇ!俺がおびき寄せちまって、そんで皆を守れなくて死なせた・・・・!!



 一人無く俺を気遣ってか、エレナは部屋を無言で出て行ってくれた。

 その配慮が、今はすこし優しくかんじた。

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