ステータスが全部1だった俺、戦わずして世界を救ってしまう
俺の名前は田中ユウタ。
どこにでもいる普通の高校生……のはずだった。
――トラックに轢かれるまでは。
「――勇者よ、ようこそ我が世界へ!」
目を開けると、そこは豪華な王宮だった。
目の前には王様っぽいおっさんと、キラキラした美少女が立っている。
「おお……この者が勇者か!」
「ステータスを確認いたします!」
美少女が水晶のようなものに手をかざすと、俺の目の前に半透明の画面が現れた。
【ステータス】
名前:ユウタ
レベル:1
HP:1
MP:1
攻撃:1
防御:1
素早さ:1
運:1
「……え?」
場の空気が固まる。
「……これは、その……」
「……逆にすごいですね」
美少女が気まずそうに言った。
いやいやいや。全部1ってなんだよ。
「お主……特技とかは?」
「えっと……特にないです」
王様がため息をついた。
「……とりあえず、スライムでも倒してこい」
雑すぎない?
⸻そして俺は城の外に放り出された。
「よーし、やってやるか……」
目の前にはぷるぷるしたスライム。
さすがに勝てるだろ。
「おりゃっ!」
ぺちっ。
ノーダメ。
ぼよん。
「いっっっってぇぇぇぇぇ!!??」
HP1の俺、即瀕死。
無理ゲーすぎるだろ!!
⸻
「……このままじゃ詰む」
俺は考えた。
ステータスがすべての世界。
なら、それ“っぽく見せる”だけでいいんじゃないか?
「……あ」
ひらめいた。
⸻数日後。
王都にできた屋台。
【勇者プロデュース・成長特化ポーション】
「このポーション、なんと低ステータスから精製しています!」
ざわつく観衆。
「ステータスが低い者ほど、“成長補正”がかかる――これはこの世界の常識ですよね?」
「た、確かに……初心者ほど伸びやすいって言うしな……」
俺は続ける。
「そして俺は――全ステータス1」
どよめき。
「つまりこの成長ポーション、“俺基準で作られてます”」
「な、なんだと……!?」
「要するに、“最も効率よく伸びる配合”ってことです」
もちろん嘘だ。
中身はただの水。
でも、この世界の連中は“理屈”に弱い。
「……飲んでみるか」
一人が飲む。
「……お?」
「どうだ!?」
「な、なんか……動きやすい気がする!」
出た、思い込み。
俺は畳みかける。
「それ、“成長初期特有の変化”ですね」
「おおおお!!」
完全にハマった。
⸻数週間後。
「勇者ユウタよ!」
王様に呼び出された。
「お主のポーションにより、兵士たちの士気が爆上がりじゃ!」
「は、はぁ……」
「結果、魔王軍を撃退したぞ!」
えぇ……。なんか魔王軍倒しちゃった。
「よって、お主を“戦わない勇者”として正式に認める!」
拍手。歓声。
なぜか英雄になっていた。
ちなみに俺のステータスは今も全部1だ。
それでも、
「勇者様!新作ポーションお願いします!」
「あいよー!」
今日も俺は、水を売っている。
世界最弱で、
世界一ぼろ儲けしている勇者として。
ーーそのころ、魔王軍では
「馬鹿な!人類が急成長しただと……」
「しかもやたら自信満々で怖い……」
なお、全員気のせいである。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は「ステータス全部1」という、いかにも絶望的な設定から、逆にどうやって世界を乗り切るかをコメディ寄りで書いてみました。
戦う勇者ではなく、“戦わずに誤解で成り上がる勇者”という方向性なので、かなりふざけた内容ではありますが、少しでも楽しんでいただけていれば嬉しいです。
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それでは、また別の世界でお会いしましょう。




