表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

三度目の正直

 目が覚めた頃には、雨が降り出していた。

 ぱらぱらと鳴る疎らな雨は、ベンチで仰向けに転がる少女の瞼を打ち、白いまつ毛には小さな雨粒が溜まる。

「ーーーもうすぐ、仕事の時間ですね」

 瞼の粒が目尻を伝うと、少女はおもむろに起き上がり、かぶりを振って毛先の水を振り払う。

「もう少し眠りたかったですが……まぁ、いいでしょう」

 ぐぐっと伸びをした少女は、乱れた毛先を軽く整えると、傍らに立て掛けてある白の大鎌を手繰り寄せ、ざりざりと峰の部分を引きずりながら柵の際へ歩みでる。


 ここはとあるビルの屋上である。少女がここにいる理由は、仕事のことももちろんあるが、何より見晴らしが良かったからと、至極単純なものだ。

 少女は柵に寄りかかる。ここから眺められる景色は、夜よりもずっと暗い雨の街だ。そこに灯りは無く、ざぁざぁと鳴る雨音だけが満ちている。

 ーーーもうすぐで、本格的に『雨』が始まる。


「ーーー来ます」

 一陣の風が吹き抜け、黒雲(くろくも)に青き稲妻が走り出した。ーーーその直後のこと、少女の見据える黒雲、その奥から無数の青い影が続々と這い出るようにして現れる。

 あるものは小さく、あるものは大きく、あるものは犬であり、あるものは人である。千差万別の姿形をもつそれらは、しかしどれも生命を襲う存在で同じ。

 かれらは『魂霊(こんれい)』と呼ばれる死したものの魂だ。

 魂霊(こんれい)の出現を確認した少女は、早速大鎌を肩に担ぐ。


 少女は『死守(しにもり)』である。

 その役目は、死したものの魂を狩り、天へ還すこと。故にその仕事は、この世の死のあり方を守り、訪れる死から人々の日常を守ることである。

「ーーメメントモリ。仕事の時間です」

 冷淡な口調で仕事の始まりを告げた少女は、柵に足をかけると、一振りの大鎌を携えて死守(しにもり)として冷たい雨に飛び込んだ。




ときどき細かい修正を入れるかもしれません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ