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2章@aoi

『連日の大雨は大変でしたが、今日からようやく梅雨明けのようです…』

 テレビがそう告げている音が聞こえる。

梅雨明け。

その言葉をどれほど待ち望んだことか。

つまり、梅雨明けということは、、、晴れ!夏!

もうずーっと雨でつまらなかったから、やっと晴れて嬉しいかぎりだ。

そういえば。雨のことが嫌いになったのはいつからだろう。


「わっ。 空生。」

「あ、東雲くん。」

「やぁっと晴れたねぇ!」

 東雲くんが嬉しそうに空を仰ぐ。

僕達を照らす太陽は眩しくて、明るい。空は快晴。真っ青すぎるくらいの蒼。

こんなお天気、久しぶりだ。

「東雲くん、今日は中庭でお弁当にする?」

「そーだね!そーしよっか。」

 久しぶりの良い天気に東雲くんは珍しくテンションが高い。


あっという間に昼休みになって、みんなで中庭に向かう。

「晴れって良いね。 そう思わない?晴樹。」

「んー、まぁ俺は雨の日とかも好きだけど。雨の匂い、好きだし。」

「でも、晴れの日のほうが良いでしょ?」

「えぇ、でもなぁ。晴れの日って暑いし。」

「もー、なんで晴樹は素直に“良い”って言ってくれないかなぁ?」

 東雲くんと、時雨くんが話してるのを耳にいれつつ、僕はまた空を仰ぐ。

上を見上げれば青しか見えなくて。本当に、ただ広くて深い青が広がっていた。

『雨の日は、つらい気持ちに、空が寄り添ってくれるみたいで好きなんだ。』

 いつの日か、僕はそう言った。

でも今は違う。雨の日より、今日みたいなお天気のほうが好きだ。

晴れの日は、太陽が僕を勇気づけるように光りをくれて、大丈夫とたくさん語りかけてくれる。 あの時、眩しすぎるくらいの光をくれたのに、影ばかりみて俯いて、きっと自分から歩みを止めてしまった。

もちろん、空だって、君に寄り添って泣いてくれることもあるだろう。いつか、太陽が出てくると信じて、立ち止まって、ただひたすらに泣いてしまうこともあるかもしれない。光りを雲の向こうで待つこともあるかもしれない。悩みがたくさんあっても、結局、変わらない空は無い。

だから、もし君になにか言えるとしたら…

大丈夫だから、笑って。あと一歩、進もう。

なんて、そんな言葉が並んでしまう。


「空生くん?ご飯食べよ。」

 ニコッと優しい笑みを浮かべて、僕を覗き込んだ東雲くんに、僕は大きく頷き返した。

「うん、大丈夫。」

 自分に言い聞かせるようにそういうと、東雲くんは笑いながら空を見上げた。

相変わらず、雲一つない空が、そこには広がっていた。


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