1章@aoi
「変化するのは悪いこと?でも、変化が怖い。助けて。大丈夫じゃないの。」
ハッと目が覚める。
今日は夢見が悪かった。
昔、ずっと考えていたことが頭の中をぐるぐる回って、ぐちゃぐちゃになって終わる夢。
大人になって、何回も見た。
まるであの頃の僕が、今の僕に訴えるみたいに。
カーテンを開けると、明るい朝日が部屋に入る。眩しくて思わず目を閉じてしまった。もう一度目を開けると、そこにはビルの間から垣間見えるきれいな空が広がっていた。
僕は都会の空が好きだ。
自然いっぱいじゃないけれど、そこから垣間見える空という自然は、日常に幸せをくれる。
伸びをして、もう一度気合を入れる。
僕の、空生の、一日が始まる。
バイトをやりつつ大学に通う僕は、比較的忙しい。そんな中でも大学に通い、バイトをする理由はただ一つ。あの頃の、変化が怖いという気持ちを変えるため。あの頃の僕、いや、“君”に大丈夫って伝えるため。君は君で良いんだと、そういうため。
そうやって自分に言い聞かせて、僕は自分を変化させてる。
「やっほ、空生。」
大学に着く前に出会ったのは、東雲くん。僕の唯一の友達。
「東雲くん、おはよ。」
「ねぇ、空生?今日は過ごしやすい天気だってよ。」
「んー。そうだね。」
東雲くんは、基本的にポジティブ。なんでものほほんとしてて、明るい。
「あのさ、空生。 空生は、友達作らないの?」
「んー?まぁね。東雲くんがいたら十分。」
でもだいぶ、僕ものほほんとしてる。
「おーい、光莉。おはよ。ん、空生くんも。」
そんな声が聞こえて振り返ると、そこには東雲くんの友達、時雨くんがいた。
「あ、晴樹。おはよ。」
カラっと笑う時雨くんは、のんびりした僕達に的確なツッコミをくれたり、僕達とは違った明るさをくれたりする。
「光莉も、空生くんも、あんまりのほほんとしてると転ぶよ??」
「晴樹みたいに明るすぎたらうるさくて近所迷惑だと思うけど。」
東雲くんと時雨くんの会話は面白いし、会話に入って無くてもついつい笑ってしまう。
今日もあっという間に終わった。きっと、楽しかった証拠。
東雲くんと時雨くんと大学に行ったあと、授業を受けて、お昼はみんなで自分で作ったお弁当対決とかしちゃって。楽しく話して、笑って。今は東雲くんとベランダで話してる。涼しい風にあたりながら。こうやって過ごすのも楽しい。
あの頃は、ちっぽけで、消えそうだった。孤独で、変化を怖がって。誰も助けてくれなくて。でもきっと自分から殻にこもっていて、誰とも話したがらなかった。変化が怖いゆえに、なにもかもを遠ざけてしまっていた。
君にもし逢えるなら。
今の僕は大丈夫って伝えてあげたい。
「ねぇ、空生、聞いてる?」
「ん、聞いてなかった。ごめん。今日見た夢のことで悩んでて。」
そういうと東雲くんは優しく笑った。
「そっか。そーゆーときは、泣いても良いんだよ! 空生はさ、強くて優しくて、、いつも泣かないけど。きっとたくさん我慢してると思うから。たまには泣いても良いんだよ。」
ふわっと優しく笑みを浮かべる東雲くんが暖かくて。
そうか、泣いても良いんだ。と気付く。
ベランダから見えた傾きかけた太陽が、僕と東雲くんを暖かく
照らした。