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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第7話 『騒ぎ時の知人』

 セルミナが巨大な机の前で立ち止まる。


「どうしよっかなー」


「ちょっと!転びますよ!?」


 セルミナは指を口に当てて並べられた料理たちを見てレインに問う。


「レイ…。ハイタッチ…。ううん。タッチはどうするの?何か食べたいものとかあるの?」


 セルミナさん呼び方を変えてきた。確かに呼びにくいが呼び捨てで呼ぶと逆に違和感が湧く。

 レインは頭をかきながら答える。


「俺は全部見てから決めます…」


「そっか!」


 セルミナが黙々と取り皿に盛り付ける。レインは小声でセルミナに聞く。


「あの、俺はセルミナさんとギルアさんをなんと呼べば良いのでしょうか?」


「あぁ。言ってなかったね。私のことは『セナ』ギルアちゃんのことは『キルア』って呼んでね」


 偽名って言ってる割には全然変わってないじゃないか。

 セルミナもレインの耳元で小声で続ける。


「一応、私たちはお友達って設定にしてるから。パーティの参加者に関係を聞かれて変なことを口走らないでね」


「と、友達?」


 なんだか俺からしたらトラウマな設定だ。

 セルミナはキョトン顔をする。


「え、変える?ギルアちゃんにも設定言っちゃったからなぁ」


「あ、いや大丈夫ですよ。設定だよな…うん」


「あれ?普通にお友達になりたいの?なら早く言ってよぉ!」


「うぐ…俺リーナスしか友達いないんですよ…」


「…あぁ〜。なんかごめんね」


 再びセルミナは取り皿に料理を盛り付ける。

 そういえばギルアさんはどこにいるんだ?まさか、あの人迷子になったんじゃ…。あの人意外と抜けてるところあるからな。

 レインは辺りを見回しながらセルミナに問う。


「そういえば…キルアさんはどちらに…」


「キルアは料理に変な毒盛られてたら困るから食べないってさ。入口の方で待機してると思う。あと、『さん』はつけなくて良いよ!」


「ありがとう。せ、セナ!」


 セルミナの盛り付けていた手が止まり、元気な返事が返ってきた。


「うん!」


 再びセルミナは取り皿に盛り付け始めた。もう小さな山が出来上がっている。


 入り口に向かうとギルアが壁に寄りかかりながら何やら知らない男と話している。周りも賑やかだが、二人の会話も負けないくらい大きい。


「なぁ、姉ちゃん可愛いじゃねぇか。今日の夜…空いてるか?ひっく…」


 どうやら男はかなり酔っ払っているようだ。


「すみませんね。残念ながらこちらは忙しいのですよ。あなたのようにインザヘルにまで来て遊んでいるわけじゃないんでね」


「えぇ、姉ちゃんも綺麗なドレス着てるじゃないか?それって楽しんでるじゃないのかな?ひっく…」


 次の瞬間。男の両手がギルアの胸に近づく。

 このままでは危ない、俺が助けなくては!

 レインが危険を感じたが、遅かった…。ギルアは男の両手を手刀で叩き落とし、鈍い音を出してパーティ会場の扉に強く挟んだ。


「ぎゃあああ!」


 男は地面に転がって悶絶する。

 俺は男の人を助けることができなかった。無念。


「ごめんなさい。この服装に違和感がないことが酔っ払い相手でわかってもあまり効果が感じられないのです。早く散っていただけます?目障りなので」


「は、はいぃ!すいませんでした!」


 男は両手を痛めながらパーティ会場の奥の方に走って逃げていった。男の酔いは覚めただろう。

 レインは人混みの中からやっとギルアの目の前に来ることができた。


「ちょっと何やってるんですかキルア!」


「何って少し暇つぶししてただけです」


「周りが賑やかだったから良いものの、こちらに注目が集まったらどうしようとしていたんですか!?」


「その時はその時です。今のは自己防衛ですから言い訳はなんとでも言えます」


「う、まぁ、そうですけども…気をつけてくださいね。相手は悪党ではなくて一般人なんですから」


「承知しました」


 ギルアはわかったようで、また入口の横の壁に寄りかかった。レインも同じように入口の前に立った。


「キルアは食べなくて良いのですか?」


「そうですね。毒などがあった場合に速攻助けられるように、スタンバイしておきます」


「え、そこまで…。あの、お腹は空かないのですか?」


「そんなことを言っていては長時間の任務の時に大変ですよ」


 思い出したようにギルアが続けて言う。


「あ、入口の前に立つのはやめておいたほうが…」


「え———」


 その瞬間勢いよく扉が開いた。もちろん扉の前にいたレインは吹き飛ばされた。レインは頭から地面に強く激突した。

 開いた扉から明るい声が聞こえる。


「ご機嫌ようですわ〜!」


「メリー!そんなに急がなくても…」


 扉を勢いよく開けた犯人である小柄な少女と目があった。少女の黒い髪が扉の閉まる風によってなびく。


「あら?もう酔っ払って寝ている人が…」


「お前のせいだよ!」


「はい?」


 黒いロングヘアの少女は黒いドレスを着て花飾りを身に付けている。キョトン顔をした少女の後ろから手が忍び寄る。


「ちょっとメリー!先に謝り…ってレイッ…!?」


 茶髪の男と目が合う。その驚いた顔を見るまでもなく声で誰かがわかった。

 茶髪の男がレインに近づいて小声で続ける。


「な、なんでライバルであるお前がこの任務に参加しているんだ!?」


「それはこっちのセリフだ。第二官位でインザヘルリバイバルに参加しているのは俺たちだけではないのか?」


「そうだぞ!他にもインザヘルに第二官位のやつらは複数人来ているぞ!…じゃなくて、俺はこの任務に何故お前が参加しているのかを聞きたいのだ!」


 何故と言われても金欠で参加しない理由がないとしか言いようがない。だが、それではつまらないな。


「実は俺くらいのレベルになるとこのパーティに招待されてしまうのよ」


「んなわけねぇだろ。このパーティに招待されるのは貴族のみだ。戦闘員であるお前が招待されるのは居酒屋くらいだろ」


「バレたか」


「バレバレだ」

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