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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第6話 『ハイタッチ・ロウキック』

 その日の昼。隣の部屋であるリーナスは窓から帰ったらしいので何度もリーナスの部屋の扉をノックしたが、中からは反応がなく留守にしているようだった。金のない今は朝食と夕食の二食だけ。だが、今日はいつもとは違う。任務が三日間のパーティ会場ということは毎食取ることができるということだ。パーティは…任務は夜だから朝食だけ取り、夜は腹いっぱいにする…節約のため昼食は取らないことにした。


 ——夜。


 レインは普段とは違う任務のためスーツに着替えた。愛用しているハンドガンの『ダイアモンドエース』を腰につけたケースに入れ、念のため『ヘイトベイン』を胸ポケットに入れた。

 ホテルの外に確かギルアさんがいるはず…

 レインは相変わらず狭いホテルの前を通り道路を見た。


「わあ…」


 そこには知らない高級車両が停めてあった。車の上部は空いており、車の前部分にはよく耳にするブランド車のマークが付けられている。インザヘルの夜の中、電灯に照らされる高級車両はとてもかっこいい。レインが見惚れて立ち止まっていると運転席の窓が開いた。


「レインさん早く乗ってください!時間ギリギリですよ!」


「すいません!」


 レインは後部座席の扉を開けて高級車に乗る。座席はとても柔らかく重さを吸収するクッションだ。

 車が発進した。車の上部の空いた空間から夜の涼しい風を感じる。


「よおよお、レイン君。スーツ似合っとるね〜!」


 助手席からセルミナの声がした。セルミナは後ろを見て笑顔でレインと顔を合わせる。

 綺麗なドレス…。


「セルミナさんもドレス似合ってますね!」


「ありがと!私、今回は動きやすさ重視で下が短めなドレスなんだ!」


 言われてみれば確かに膝の部分まで見えている。上は可愛らしいデザインで包まれてセルミナの良さが引き立てられている。


「あれ?もしかして見惚れちゃった?」


「あ、え、いや、その」


 レインは頬を赤らめ気まずくなり運転席に目を向けた。そこには黒いドレスを着たギルアが運転をしていた。

 メイド姿に見慣れすぎて変わった気があまりしないが、やはりギルアさんには大きなスカートが似合うな。


「ギルアさんも似合ってますね」


「はい。ありがとうございます。こちらのドレスはセルミナさんが選んでくださりました」


「へぇ、セルミナさん。わかってますねぇ!」


「でしょ?もっと褒め称えたまえ!」


 ノリでセルミナとレインはハイタッチをした。思い出したかのようにセルミナが資料の入ったファイルを取り出した。


「ハイタッチで思い出した!今回の任務は治安定務である私たちがこのパーティにいることは本来ダメなのよー」


 セルミナは後部座席に体を向けファイルをレインに手渡した。


「はい!そこでこれ!今回パーティを開いた任務の提示者が招待状に書かれた偽名と共に三日間過ごしてほしいとのことだよ!」


 レインはセルミナから渡されたファイルを開いて中を確認する。招待状と偽物の名刺が入っていた。


「今日から三日間任務の提示者が五秒で考えたレイン君の名前は…」


「ハイタッチ・ロウキック…。あの、言わないほうがいいと思うですけどネーミングセンス皆無ですね」


「多分忙しかったんだよ。私とギルアちゃんの偽名は自分達で考えたから、疑われたりしたら頼っていいよ!」


「なんで俺の偽名も考えてくれなかったんですか!?」


「いやー、ごめんね。その代わりにパーティを一緒に楽しもうじゃないか!ハイタッチ君」


「なぁっ!まだレインって呼んでください!」


 レインが怒るとセルミナは腹を抱えて笑っていた。


「セルミナさん。任務を忘れてはいけませんよ」


「あははっ!そうだねギルアちゃん!」


 そんな雑談という名のパーティ場の中での計画を立てていると、パーティ会場の入り口止まられる場所に着いた。警備委員が扉の前で五人立っており厳重な警備をされているようだった。地下に広がっているため周りの高い建物に比べては外観は小さい。インザヘルの中でも唯一綺麗に保たれている建物と言ってもいいほど綺麗に見える。

 建物がライトで照らされていて眩しいな。

 ギルアは高級車を建物の隣の駐車場に停めた。生まれて初めて乗った高級車を降り、建物内に入る。

 中は外観からは予想できない広さで美術品が多く置かれている。奥の地下へと繋がる階段へと進む。


「広い…」


 思わずレインはそう口にした。


「私も初めて見たけれどこんなに広いとは思わなかったわ。それにシャンデリア、高級そうな絵画。戦闘に巻き込んで弁償は勘弁だよ!」


「人数もかなり多いですね。楽しむだけのためによくインザヘルに行こうと思えるわ」


 ギルアは呆れたように言い辺りを見回す。


「そんなことよりご馳走!ご馳走だよ!行きましょ!」


 セルミナがレインの腕を引っ張って人混みの中を走り抜ける。巨大なテーブルに並べられた多くの料理たち。昼間に準備したとは思えない量が並んでいる。

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