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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第3話 『金欠間際の大型任務』

 は…!


 目が覚めたとき俺はホテルの部屋にいた。

 すっかり外が明るくなった。暗い部屋に窓の外の光が差し込んで床の一部分を明るくする。

 記憶が定かではないが頭が真っ白になった時に一週間前の記憶を遡った気がする。たしかシャーロという人物に一目惚れで…。ってなんでそんなことで気を失ってしまうんだ俺は。

 レインは片手を頭にやり、謎に痛くなった後頭部を触る。いつ後頭部を打ったのかはよくわからないが、気にしていては先に進まない。

 それにしても誰が俺をホテルに運んでくれたのだろうか。

 その時部屋にリーナスが入ってきた。


「あ!やっと起きたな。レインが急に顔を赤くして倒れたからびっくりしたぞ!」


「ごめん、俺だって疲れるんだ」


 レインは上手く言い訳をつけて、古いホテルの穴の空いた壁を触りながらリーナスに問う。


「今回の任務、報酬はいくらだった?ミレア隊によるブラッドタワーの爆発は阻止したが…」


 真顔のリーナスは右手の指で円を使った。

 ん?がっぽり金が入ったということか!


「ゼロ」


「は?」


「ゼロだよ、レイン」


「なぜだ!グレッドは倒したはず…」


「グレッドをあの場で倒してはいけなかったんだ」


「というと?」


「わからないのか?グレッドが巨大化した時グレッド自体が爆弾になったということだ。つまりグレッドの爆発がブラッドタワーに届かないところで倒さなければいけなかったということだ」


「あの状況で無理だろ!」


 レインは財布を取りだし、逆さまにする。財布から出てくるのは少しの小銭とレシートと一枚の写真だけだった。


「金が…金がないぞ…」


 リーナスは苦笑いをして同じように財布を逆さまにするが、リーナスに関しては何も出てこなかった。


「ただでさえホテル代は依頼金で払えと言われているのに。資金くらい渡してくれたっていい…ってなんだその写真は?」


 リーナスはしゃがみ込み裏向きになった写真を手に取った。


「あ、待て!それは!」


「なぁ…!」


 表を向けるとその写真には学生時代のリーナスの寝顔が写っていた。少し撮るのが下手だったからか、リーナスが写っているのはわかるものの全体的にブレていた。


「ちょっと…なんてもの財布に入れてるんだ!」


「いや、これは…」


「言い訳はしなくてもいい…レインはロリコンって知っているから!」


「違うわ!!それを言うと学生時代の自分がチビだと自虐しているようなもんじゃないか!」


 レインは「返せ」と言い、リーナスの手元から写真を取り上げた。リーナスは不機嫌そうな顔をしながら心の中では照れていた。

 いや、今は写真どころじゃないな。金がないんだ。このままじゃこのホテルにいられない。というか野宿になるぞ。

 あれ?


「てか、誰が俺をこの部屋に連れてきた?リーナスは非力だから重い俺をここまで運んでこれないだろう?」


「一言余計だな…。まあ、事実だが。ここに運んできたのはシャーロだぞ」


「シャーロ?ああ、あの白髪の…」


「どうした?」


「い、いや。なんでもないなんでもない」


 シャーロの顔を思い出しただけで顔が熱くなってきた。初対面で相手のことを何も知らないくせに…なんでだ。


「シャーロは今どこに…」


「洗面所にいるぞ」


「は?俺の部屋の?いつから…」


「レインを運んで来てから今までずっと」


「まじか」


 レインは顔を赤らめ、あたりを見回す。

 好きな人がこんなにも早く俺の部屋に…!変なものはないか?部屋が臭っていないか?

 リーナスは不思議そうにレインを見つめて問う。


「呼んでこようか?」


 あたりに変なものは何もないとわかり、レインは激しく頭を上下させた。リーナスは首を傾げ、頭に「?」を浮かべたまま洗面所に向かった。

 実質初めてのまともな会話だ。取り乱さないようにしないと。

 レインはさっきまであぐらをかいていたが、正座に変え背筋を伸ばした。もちろん空っぽの財布は見えないところに隠した。


 洗面所のドアが開くと、あまり身長差のないリーナスに押されるシャーロの姿があった。光り輝く白銀の短髪がシャーロをより引き立てさせ、白く細い両手両足には黒のラインが入った制服がよく似合っている。その水色の瞳がレインを見つめる。


「あの、私の顔に何かついてます?」


「な、何もついてないよ…!」


「そう、ならよかった」


 レインがずっとシャーロの顔を見てたせいか、シャーロは自分の顔を疑った。

 何か話をしないと、相手に不満がない雰囲気をつくらないと。


「ところで俺の部屋の洗面所にずっと居たらしいけど…その、暇じゃなかった?」


「暇でした」


 シャーロは少し考えたがキッパリと言った。正直なのはいいことだ。


「そ、そっか」


「あ、でも洗面台に水をいっぱい溜めてお風呂のひよこを浮かべるのは楽しかったです」


「そっかぁ!」


 可愛い。可愛すぎる。


「リーナスとは大違いだ!」


「なんだと…!」


 しまった。声に出てた。でも事実なのには違いない。リーナスには少し子供っぽいところはあるが、基本は男口調で見栄っ張りなところがある。見た目は金髪のロングヘアーで紫の瞳を持って可愛いとは思う。けど服装は男物ばかり着ている。スカートを履いている姿なんて一度も見たことがない。


「リーナスさんは可愛いと思いますよ」


「ありがとうシャーロちゃん。レインとは大違いだ!」


 リーナスはシャーロを抱きしめてレインをからかった。二人でほおを膨らませあったが、全員床に座り、すぐに本題に入った。


「って、そんなことはどうでもいい。一週間サボり続けた俺たちには金がないんだ。それに今回任務にも失敗した。もう、あとはないからなんとか1日で金を稼がねば…」


「食費代、宿泊代、そういえば銃弾も残り少なくなるぞ…」


 その時シャーロが小さく呟いた。


「全て免除してくれるような任務を受ければいいのではないのでしょうか」


 レインとリーナスはシャーロの言葉を聞き逃さず「それだ!」と口を開く。シャーロは二人の勢いに驚いて後ろに退いた。


「それはそうと、そんな任務が〈インザヘル〉にあるのでしょうか」


「それは探してみないとわからないだろう!」


 リーナスは〈インザヘル〉に来る時に持ってきたレインのカバンを勝手に漁り、タブレット端末を取り出した。

 いつの間に俺のカバンにそんなもの入れたんだよ。

 リーナスはタブレット端末をいじりながら話す。


「このサイトには〈インザヘル〉にいる数少ない一般人が要望した任務がずらりと並んでいるんだ。地域を選択すればインザヘルの中だって複数あるはずだ!」


 端末をいじり続けるリーナスの顔がだんだんと焦りに変わっていく。


「え、うそ…。あれ?一つもないなんてことあるのか…」


「ありがとう十分頑張ってくれたよ」


「そんな期待はずれみたいな言い方しないでー!」


 真顔でリーナスのフォローをすると玄関からノックの音が聞こえ、外から女性の声がした。


「レインさんいますでしょうか?少し話をしたいのですがよろしいでしょうか?」


 ギルアの声が聞こえ、レインは返事をして外に出た。

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