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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第24話 『夢幻の自由』

 夢の中…。

 レインは困惑した。あまりにも何もかもがリアルだったからだ。ドリーマーは机に座りながら説明をする。


「私は他の人の夢の中に入り込むことができるの。その人がどんな状態でも私には関係ない。いつでも人の夢の中で暴れ回ることができるの」


「俺の記憶から今の空間を作り出しているんですよね……?」


「そうだよ」


「じゃあこの教会は……」


「あなたの記憶から取ってきた」


「どうりで懐かしいわけだ。見覚えありまくりですもの」


 レインの記憶が正しければ〈ピースシティ〉の教会だ。ステンドグラスの配置も周りの椅子、出入り口の扉まで同じだった。レインは自分の精神統一するためによく通っていた。というのは建前。実はシスター服の美人さんがいたから通っていた。

 とすると…。


「俺はシスター服の美人なお姉さんのために通っているということもお見通しですよね」


「ワー、ハジメテシッター」


「何で急に棒読みでしらばっくれるんですか!?」


「あなた美人なお姉さんに目が行き過ぎでシスター服のこと何も見てなかったでしょ?そうでもしないとこんな変なシスター服にならないんだよ」


 ドリーマーまた何処かが欠けたシスター服に戻していた。ドリーマーは両腕を広げて自分の着ているシスター服を見ながら言う。


「まあでも、普通のシスター服よりもこっちのシスター服の方が着やすいんだよねぇ」


 そう言いながらドリーマーは机の上から足をぶらぶらと揺らした。ドリーマーの見た目は大人びているが精神年齢や動きは子供っぽい。変な沈黙が嫌だったのかドリーマーから声をかける。


「よし!今から私があなたの質問に答えられるものだけ答えていくよ」


「え、いいんですか?」


「もちろんだとも。私はここの神だからね」


 手始めに年齢から聞き出したい。疲れるから敬語を使い続けたくない。謎が多すぎて質問の量が考えもせずに次々に思い浮かんできてしまう。

 レインはドリーマーの目を見て聞き出す。


「おいくつですか?」


「ノーコメントで」


「え、それによってどう対応するのか決まるんですけど。本当に無理ですか?」


「今のままで大丈夫大丈夫。というかどうせ私を敬うようになるからこのままでいいの」


 なんかムカつく。自分より格上だとは察することができる。だが見た目なら夢の中だったら変えることだってできる。もしも全て嘘で手品であるなら絶対許さない。

 ドリーマーはレインの頭の中を読み取ったのか、微笑みながら指を鳴らした。


「ごめんねお気遣いできなくて。一応あなたはここのお客様だから平等に接さなきゃね。お客様は神様。神様同士ゆっくり雑談でもしようよ」


 そう言うとレインの目の前に椅子が置かれていた。それも治安定務で使われている。くるくる回ることができる椅子だった。次にレインが瞬きをすると治安定務で使っている白い机が置かれていた。

 まるで職場のような気分。なんか嫌だな。


「なに?女もほしい?やだなぁ目の前に私がいるじゃん」


「そんなこと思ってねぇよ…ってあれ?」


「気づいた?言葉遣いも軽い感じにしてあげたの。これで平等。それに私のプライバシーまで守られちゃう。最っ高だね」


「まぁ、確かに楽なんだが…。なんか納得いかないな」


 ドリーマーは口に手を当てて笑う。そしてドリーマーは手を広げて言う。


「さあ、質問しておくれー。私の個人的な情報は除いてね。住所、本名、スリーサイズなんて質問し出したら口を聞かないからね」


「何だそれ。フリか?」


「フリに見える?」


「いや、ごめん。普通の質問するよ」


 レインは机に頬杖をつく。レインはそれと同時に手が視界に入り気付いた。いつの間にか職場のワイシャツに着替えさせられていたのだ。もちろん胸ポケットには傘の形がしたバッチが付いていた。

 俺の記憶通りで現実と全く同じだ。余計なことを…。

 レインは真っ先に思いついた質問をする。


「何で俺の夢の中に入った?他にもいただろう」


「まあ、そうだよね。それが一番気になるところだよね。……正直に言うと面白そうだったから。ここらで一番精神が不安定だったあなたの夢を見てみたかったの。そしたらものすごくどす黒くて、とても人間の夢には見えなかったよ」


「ただの興味本位かよ」


「何か悪い?冒険家って全員興味本位で動いてるよ。私も一種の冒険家。夢の冒険家ってところかな」


「冒険家って…。夢の見過ぎだ」


「夢見ること以外することないもん。人の夢の中に入って悪戯するのってとっても楽しいよ」


 レインはついさっきの現実のことを思い出した。記憶がくり抜かれたかのように消えたことだ。


「なあ、さっき俺の体でなんかしたか?」


「イヤ?ナニモシテナイデスケド?」


「ドリーマー(仮)さんの嘘は分かり易いな。これは別に個人情報でも何でもない。さあ正直に話してもらおうか」


 ドリーマーは少し躊躇いながらも机の上で土下座をして謝る。主従関係が逆になったように感じる。


「うぅ、ごめんなさい。誰かの夢に入る時って毎回こうなるのよ。三代欲求の何かが急激に増すというか何というか…。あなたの場合は性欲が爆発して———」


「なるほど。納得納得……。するわけねぇだろっ!俺の記憶はどこ行ってしまったんだよ!その三代欲求のやつできるなら記憶消すことも簡単だろ?」


「言いにくいんだけど…。後で恥ずかしくなるかと思って抹消しちゃった…」


 ここでレインは思った。早くこいつを俺の夢から追い出さねば、と。

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