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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第20話 『風呂場での短い時間』

「で、具体的に何処を手伝って欲しいんだ?お前の許す限りは手伝う」


「もう大丈夫なのですの?なら髪の毛を洗うのを手伝って欲しいですの。やっぱり体を洗うのは厳しいかと思うの」


「お前それ風呂に入ったって言うのか?」


 メリーは自分の髪をいじりながらレインに強請る。メリーの身につけているバスタオルが緩みかかっている。


「本当は全部洗いたいですの。今体を洗うとやっぱり痛くて……せめて髪の毛だけは洗ってから寝たいのですの…」


「……潔癖症ってやつか。あ、髪の毛洗いすぎると禿げるとかどっかで言ってた———」


 メリーは顔を赤らめ頭を抑える。その言葉が効いたのか焦った様子でレインの言葉を遮る。


「そ、そんなことがあるなら全員禿げてますの!私は洗いすぎてなんてない…はず。あと私は潔癖症でもないですの!これが普通ですの!」


 メリーの足下に白いバスタオルが落ちてきた。何処から落ちたのか確認するためレインは真正面を向き直す。

 なんだ、メリーの裸足が迫ってきているだけではないか。

 その裸足は止まることなくレインにぶつかった。


「ぶっへぇぁ!」


「み、見てないですの?見てたら即殺すですの!!」


 さっきの赤らめた顔とはまた違った意味でさらに赤くなっていた。

 タダで見れるなら見てやりたかった。俺は同居していたリーナスの裸でさえ知らない。って何考えてるのだ二十三歳俺!ロリっ子の体には興味がない…訳でもない。


「……シャーロは別だな」


「うぬぬ……。死ね変態っ!!」


「……冗談だ。しっかり巻け」


 レインはため息を吐きながら立ち上がり、風呂場に向かう。

 自分の手が器用というのは自分が一番よく知っている。流石に美容師になろうと思ったことがないがリーナスの髪は洗ったことがある。だが、メリーの髪はリーナスよりも長い。


「ここ座れ……」


 レインは風呂場にある椅子を自分の前に置き、指を指す。メリーは少し躊躇ためらいながらもレインの前の椅子に座った。


「じゃあ…お願いしますわ」


「あぁ」


 レインはメリーの黒く、長い髪にシャワーの水をかける。


「ひぃっ!冷た…!殺す気ですの!?」


「え、ごめん。まだこの風呂使ってないからお湯じゃなくて水になってるのか?初見殺しにも程があるだろ」


 レインはシャワーから出る水の温度を温かいものに変える。

 メリーはバスタオルを身につけているが、少し目のやり場に困る。このバスタオルの下は何もつけてないと考えると…。ってまた何考えてるのだ。無心でやれ、無心で。

 レインは温かくなった水をメリーの髪に触れながらかけていく。

 さらさらだ。あんなに怪我を負っていたのにもかかわらず髪は全く傷んでいない。それにこの量は…髪が長い分洗う量も増えるだろう。


「髪は切らないのか?毎回この量洗うの大変だろう」


「…カノルがこっちの方が好きって言っていたから切りたくないですの」


「悪い。気に障ったな」


 メリーは力の入った声でレインに言う。


「違うの。もっと聞いてほしいですわ。この機会にレインの知らなかったこと全部教えてあげるですの」


「え、いいのか?そんな二人だけのことを———」


「良いのですわ。その方が気が楽だし、レインとシャーロのこともあとで教えてもらうの」


「いつ俺がそれに了承した…」


 レインはシャンプーを手に取り、手に何滴か落とす。髪の毛の量に合わせて多く取り出した。レインはメリーの髪に触れ洗っていく。


「お前さっきと話し方変わったな。さっきまではカノルのことを気にして元気のない感じだったろ」


「それは……あなたの異常な行動っぷりを見て少し安心したのですわ」


「本当か?まあ、あの時の俺は確かにイカれてたけど……」


「それ自分で言っちゃうのですの?……本当は、ただ一緒に悩めるような相手がそばにいて安心しただけですの」


「なんだよ、嘘かよ」


 レインは少し笑顔になり、メリーの頭をかき回すように洗う。次はメリーの口から言葉が出た。


「さっきのカノルに言おうとしていた、三つ目の悩みってなんですの?私でよければ聞くのですわ」


「……友達になって欲しかった。それだけだ。だが、今じゃ答えは聞けない」


 メリーはムキになるようにレインに正論で答える。まるでカノルと話しているかのように。


「アメシストとの戦闘の前に言ってたですの!カノルの方から友達になってほしいって、私は聞き逃さなかったですわ!」


「それはあるんだが、俺の口から言いたかった」


「欲張りね。結局友達になれたのなら良いじゃないですの?始まり方は違うかもしれないけど終わりは同じで良かったと捉えるべきですわ!」


「そうだけど…」


 レインはメリーの髪を洗い続けながら少し考える。カノルと友達になれたのは事実だった。だが、それはカノルが友達になってくれると言ってくれたからだ。レインとしては先に友達になりたいと言いたかった。確かに終わりは一緒だ。でも、何かが違う。


「俺のプライドが許さん」


「はあ?そんなプライド捨てなぶくぶくぶく」


 レインはメリーが話している最中にシャワーをかけた。そのせいでメリーの口から聞こえるはずだったお叱りが聞こえなくなった。


「…な、何すんのよっ!」


「洗い終わっただけだ……」


 レインはメリーから目を逸らし、シャワーに手を当てる。


「あ、人生で二人目の友達ですのね!確かにそんなこと言ってたの!それにしてもレインは結構繊細ですの」


「う、うるさいなぁ」

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