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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第1話 『任務中の一目惚れ』

 午後十一時 ブラッドタワー 八十四階


 辺りはすっかり暗くなり短い1日が終わろうとしていた。

 真夜中に悪が活動を始めるのだが、それを嫌うものはもちろん存在する。

 依頼を受けて任務を果たすことで金を稼いで暮らす。そう、彼らは自腹で生活費用を蓄えなくてはいけないのだ。


『おい、レイン。そっちの道は違くないか?』


「大丈夫。しっかりルートは把握している!」


 耳につけた器具で遠くからの人とやりとりができる。

 ブラッドタワーの廊下を走るが、足音は全く聞こえない。


『本当にわかってんだろうな?失敗でもしたら依頼金パーになるからな?慎重に行動するんだ』


「わかってますわかってます。というかこの姿じゃバレないって、今は敵組織であるミレア隊の下っ端の変装してるんだから」


『それならいいんだけど。なんか引っ掛かるだよな。僕の計算が正しければあと五分弱でミレア隊の設置した爆弾が爆発し始めるところだけど間に合う?』


「いつの間にハッキングをしたのか!?急いでいるからちょっと待ってくれ!」


 エレベーターを使えば目標である九十階にすぐに移動できるのだが、今はミレア隊の動きによってエレベーターを壊されてしまっている。何度も動かそうと試みたがびくともしないので頑張って階段で登っている。


『助っ人を呼んどいた。レインがミレア隊の奴らを止めている時には来ると思う。僕もブラッドタワーが見えるところで待っている。応戦がほしかったら言ってくれ』


「おう!サンキュー!」


『あと、また任務終了時にネズミ持ってきたら許さないからな!」


「え?餌とかいつもあげてるの知ってるぞ?俺に隠れて『チュウチュウ』なんて名前なんか付けちゃって」


『み、見てたのか!?か、可愛いけど…これ以上増やされるのは困るからな!』


 そんな雑談を繰り広げていた。


 午後十一時五分 ブラッドタワー 九十階


 ミレア隊と呼ばれる人々が黙々と爆弾を並べている。特徴で言うと顔には角の生えた鳥のような仮面を付けており、服は防弾チョッキで固められている。なので頭以外の部分に銃を当てても死ぬことはほとんどない。

 誰が誰かを把握するには防弾チョッキに書かれた番号が頼りになる。


「よし、あと一ダースだな。おい二十二番!段ボールを片付けてきてくれ」


「はいはい。わかったよ」


「これだけの量の爆弾っていくらかかってんのかな」


「少なくとも百万は超えてるだろ」


「それって俺たちの給料からほとんど引かれるくないか!?」


 ミレア隊の隊員は雑談をしながらも仕事を進める。


「私語厳禁!お前ら一度集まれぃ!!」


「はい!グレッド様!」


 グレッドと呼ばれる隊長がガスマスクを付けながら大きな体格を揺らしながら前に進み、ミレア隊の隊員を呼び集める。

「いいな。予定通りに十一時五分に爆発させるんだ」


「はい!」


「俺たちの目的はブラッドタワーの巨大金庫を開けることだ。金目の物が出てきたらすぐに俺様を呼べ!一人で漁って逃げたりしたら即処刑だからな!」


 一人のミレア隊員が小さな声で隣と陰口を言う。


「あいつ最高幹部っぽく振舞ってるけど元下っ端なんだろ?なんかムカつかねぇか?」


「だよな。噂によれば一つのミッションをグレッド一人でやったとか」


「あの性格だと絶対に味方まで皆殺しにしてるだろうな」


「二十二番。三番。この任務終わったらボコボコにしてやっから俺様の部屋に来いよ」


 小さい声で話していたミレア隊員のグレッドの悪口が本人にバレ、気まずい雰囲気になった。

 グレッドは深呼吸をしてミレア隊員に告げる。


「俺様はお前たち全員の今までの活躍を知っている!目立たない作業だけれど全部のミッションの土台を作ってミッションコンプリートへの道まで導いてくれたのはお前たちがいたからだ!」


「グレッド様ぁ…」


 ミレア隊員はグレッドの言葉を聞いて、見えないが仮面の中で感動して泣いている姿が想像できる。


「俺たちならできるぞ!絶対に今回もミッションコンプリートしような!」


「はい!グレッドさ…」


 さっきまでグレッドの言葉を聞いて感動の雰囲気だったがミレア隊員の言葉が一斉に止まる。


「どうしたんだ?お前たち」


 グレッドが振り返ると二十二番がハンドガンを持って突っ立っていた。


「なあ、俺もミッションコンプリートするにはミレア隊全員の任務を止めなくてはならないんだ。というか気づかなかったのか?」


ミレア隊員から次々と非難の声が飛び交う。


「おい、二十二番何をしてるんだ!」


「常識ってものがわからないのか?」


「っていうかいつの間にグレッド様の後ろに…」


二十二番は思い出したかのように手を合わせた。仮面に隠れて顔が見えないからこそ何を考えているのかがわからない。


「あ、そっか。この姿じゃあわからないのか」


 二十二番がミレア隊員の服を脱ぎ、本当の姿を見せる。

 Tシャツに動きやすいズボン、どっからどう見てもダサい私服。Tシャツの胸ポケットに傘のバッチを付けている。


「な、なんだあいつは!いつから変装を!?」


「俺は〈ピースシティー〉から戦闘員として運ばれてきた『レイン』だ」


 レインは自己紹介をし、その流れで耳に手を当てて仲間に告げる。


「戦闘開始だ。音がうるさくなるだろうから切っとくな」


『お気遣い感謝する。僕の支援が必要なら問題なく言ってくれよ』


 ミレア隊員はすぐに銃を構えて戦闘態勢に入った。グレッドもいつでも攻めて来てもいいように手榴弾の栓を抜いた。


「俺は話で解決できたらいいと思ったけど、そっちが戦う気なら何をしてでも俺が止めてやる」


 レインは銃を持ち、グレッドに飛びかかる。グレッドはレインがガスマスクに張り付いたことで前が見えなくて暴れる。


「邪魔だ!見えん!前が見えんぞ!」


「どうやらガスマスクが邪魔で見えないんじゃないかな?撃とうか?」


 レインがグレッドの持つ手榴弾を蹴り飛ばしミレア隊員の目の前で爆発させる。


「やめろ!」


 グレッドがレインを投げ飛ばし、壊れたエレベーターに衝突し、壊れたエレベーターが凹みさらに壊れる。


「くっ、腕力がえげつないな…」


 レインが服を払い立ち上がるとグレッドが叫ぶ。


「動けるやつは仕掛けた爆弾に火をつけろ!ここは俺様が食い止める!」


「させるかよ!」


 ハンドガンの照準をフラフラと立ち上がるミレアの隊員に向けて撃つがグレッドに全て身体で受け止められる。グレッドがナイフを取り出し、レインの手元に切り掛かる。


 グレッドに力の強さで押されるがレインが素早い動きでハンドガンを盾にする。ナイフによる斬撃はハンドガンによって止められた。


「このままハンドガンごと切り抜いてそのまま死ね!」


「残念だが俺のハンドガンはダイヤモンドで出来てるんだな!破壊は無理だろうなぁ!」


 レインはポケットから今までとは違う弾丸を取り出してハンドガンに入っていた弾を入れ替える。


「弾換!ダイアモンドエース!聖水を流せ!」


 レインがそう言い、ハンドガンの引き金を引くと鋭く尖った水が銃口から発射された。水を何層も重ねられた弾丸は火花ではなく見ることのできないほどの水飛沫をあげてグレッドの手を貫く。


 グレッドは地面に倒れ、レインは覆い被さってきたグレッドを横に倒した。


「俺の銃には名前が付いててな、ダイアモンドエースっていうんだぜ?かっこいいだろ?」


「クソ野郎が…!」


「あ、あとこのセリフは今考えた。ダサいならダサいと言ってくれた方が俺的には助かるな」


 レインがミレア隊の方に向かってもう1発撃ち放つ。

 ミレア隊の1人が銃を構えて対抗しようとするがその銃さえもレインの水の弾丸によって破壊される。


「どうだ?観念するなら見逃してやってもいいぞ?あ、いや、それはダメか」


 レインが煽るとグレッドはまだフラつきながらも立ち上がり、叫ぶ。


「お前を絶対に殺す!———グレネードモード!起動…!」


 するとグレッドの体は急に膨らみ始め、高かった天井に頭が付くくらいにまで巨大化した。

 見た目は丸く手榴弾のような凹みを体全体に見られる。


「ぐ、グレッド様!?」


「なんだあれは!?聞いてないぞ!?」


 ミレア隊員も驚いた様子で巨大化したグレッドを見上げる。


「この姿になった俺様は元に戻ることができない。そのデメリットの代わりにレイン。お前を確実に殺してやることができるぜ!」


 グレッドの大きな声は廊下中に広がりレインを放心状態にさせた。


「い、いいぞ?望むところだ!」


 レインは周りの障害物を使ってグレッドの動きを避け回る。隙を見て何発か水のハンドガンを撃つが全て効果が打ち消された。


「そんな攻撃はもう効かないぜ!」


「ひゅーひゅー!グレッド様!」


 何発か撃った後にハンドガンがカチカチという音を出した。そしてレインが耳に手を当てて言う。


「くっそ。弾切れだ!すまないがリーナス!援護を頼む!」


『了解!』


 その声が聞こえるのは隣の高いビルの屋上からだった。

 屋上にいるリーナスと呼ばれる少女は腰を低くしてスナイパーライフルをグレッドに照準を合わせる。


「動きが遅くて的が大きいから当てやすくて助かるな」


『だろ?俺のダイアモンドエースだって全弾必中だぜ?』


「それはいつもだろ」


 リーナスが言い終わると同時にスナイパーライフルの銃口から先のとがった大きな銃弾が勢いよく発射された。肉眼では確認できないほどのスピードで動き、ガラスを割ってグレッドの右足に命中する。


「ぐああああ!!」


「グレッド様!?」


「く、あそこか!あのビルの上を狙え!下っ端ども!」


「「はい!」」


 リーナスに向かって何発か銃弾が飛んでくる。ほとんどの弾丸は威嚇のようにリーナスから離れたところに飛んでいく。


「ちょっと、あぶな…うわ!?」


 リーナスは体勢を崩しビルから落ちた。重いスナイパーライフルと逆さまに落ちたリーナスは身動きが取れずそのまま地面に近づいていく。


「え!?リーナス!?」


「雑魚は引っ込んでろ!」


 次の瞬間白い影が暗い夜を照らし、落ちていくリーナスを持ち上げた。リーナスを持ち上げた白い影は高いビルを上りリーナスが元居た場所に戻る。

 リーナスも何が起こっているのかわからない様子。


「助っ人のシャーロです。只今参りました」


「シャーロちゃんっ!ありがとー!」


 リーナスはシャーロを泣きながら強く抱きしめ離れない。シャーロは抱かれてしまって頬を赤らめながら少々困っている。

 一方レインとグレッドは全く今の状況が分かっていない様子。


「あの大きいのをやればいいんですね?」


シャーロはグレッドを指差しながら刀を持つような素振りを見せる。


「お願い!」


「朝飯前ですよ」


 シャーロは先程のように白い影にしか見えない状態になり、割れた窓に突っ込む。次に目を開いた時にはシャーロはグレッドの後ろにいた。


「がはっ…!」


「グレッド様!?」


 グレッドはその場に倒れ、気を失っているようだ。シャーロの手元には白のオーラをまとった竹刀がある。


「あんな武器で…」


「なんですか」


レインの目の前にシャーロが近づいてきた。

 俺は思わず声が出てしまった。竹刀で戦う奴なんて見たことがない。その感情とともにシャーロのことが美しいと思ってしまった。白の短髪で整った顔立ち、いわゆる美少女というもの。黒のラインが入った白い制服にミニスカート。初対面なのに人目見ただけでいろんな可愛いところが次々と浮かんできてしまう。


「あの、どうされました?」


「え、いや、なんでもない…です」


 シャーロは首を傾げるが、その姿もまた可愛いと思って…。


 頭の中が真っ白になった。

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