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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第16話 『中身がない体を前にして』

 レインは険しい顔を上げる。そこで見たものは想像を絶するものだった。


「カノル……?」


 カノルの体は操られたかのようにフラフラと倒れているメリーに接近していた。レインは視野狭窄に陥っていたためか今の状況を理解していない。だが、メリーの表情とアメシストの悪に染まった笑みを見てすぐにわかった。


「助けないと…!メリーとカノルを助けないとダメだ…!」


 だが、レインの足は動かない。脳と体は正反対の意志を持っている。理由は定かだ。まだ、怖いのだ。レインには早すぎた任務だった。さっき初めて友達になれたと思えた人間が目の前で人を殺そうとしている。


「くっそがぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 恐怖を植え付けられたレインは銃をアメシストに向けて撃つ。一発ずつ、爆発のする銃弾を打ち続ける。爆発の煙の奥から男の声がする。


「あ、君がいたことを忘れていたよぉ!やあ!どうだい?僕の作り上げたこの二人は!恐怖という意思に満ちた女の子と、恐怖そのものになった男の子!是非感想を聞かせて欲しいなぁ!」


 アメシストに銃弾を当てたはずだが、痕跡が見当たらない。というか。


「銃がない…今手元の銃であいつを撃った…よな?」


「これのことぉ?」


「なっ…」


 アメシストの触手に〈ダイアモンドエース〉が掴まれていた。いつの間に。さっきまで握っていたのに取られたことに気づかなかった。もう、カノルの手はメリーを殴りかかろうとしている。


「最後は自分の使っていた銃で殺されるっていう展開もありだね」


 アメシストの持つ〈ダイアモンドエース〉がレインに向けられる。


「しぃね」


「いやだ…」


 レインの中の何かの引き金が引かれた。

 レインは足元に転がっているコンクリートの破片をアメシストに投げる。


「リーナスが言ってた!仮説を自分なりに作り上げて成功させる!この仮説は嘘じゃない!事実だって証明してやる!」


 何故だか急に自信が出てきた。脳も体も意思は戦闘を望んでいる。

 アメシストは〈ダイアモンドエース〉でコンクリートの破片を撃つ。予想通り、〈ダイアモンドエース〉からは爆発のする弾が出てきて爆煙が発生する。


「無駄ってわかってるなら抵抗するな」


 煙が上がっている今のうちにカノルを止めるんだ…!

 レインはカノルに飛びつき、メリーから遠ざかった方向に転がる。


「やめろカノル!」


 メリーは恐怖で身動きが取れていない。血や涙は出るが、声は聞こえてこない。

 ここは俺がなんとかするしか…!

 カノルはさっきの仮面の敵と同じように頭に穴が空いていた。レインに飛びつかれたカノルは抵抗をするが何も言葉を発しない。


「もう遅かったか…」


 レインは歯を食いしばり、フラフラと立ち上がろうとするカノルを殴って阻止する。


「お前はカノルじゃない…」


 煙が晴れた前方を見上げるとアメシストはメリーに〈ダイアモンドエース〉を向けていた。

 やめろ。失いたくない。仲間を目の前で消したくない。見殺しはさせないでくれ。

 レインは倒れている敵の仮面を慎重に取り上げる。

 アメシストの声が聞こえる。


「最後にお前のパートナーの豹変した姿について感想を聞かせて欲しいなぁ」


 メリーは身動きが取れないまま震えた声を絞り出す。苦痛で飢えた表情は見るに堪えない。


「地獄で、殺して、やるわ」


「最後の言葉がそれか、随分と余裕があるみたいだねぇ。地獄、ねぇ。自覚があるんだ」


 アメシストは微笑みながらメリーに最後の言葉を告げる。


「ロリっ子が自暴自棄になってかっこいいと思うなよ?」


 結界の内で大きな銃声が響いた。爆発から出る煙幕が晴れると共にメリーの姿が浮かび上がる。


「ッ……な、なんで、ですの?」


 敵の仮面をつけたレインが頭を突き出してメリーを守っていた。爆発のする弾はレインのつけている仮面によって弾かれたのだ。


「なんでって、俺もお前と同じようにカノルを失って辛かっただけだ。思いを共通できる仲間を失うなんて、もうそんなことはしたくない…」


「レイン…」


 アメシストは少し驚いた表情で銃を向けるのをやめた。アメシストの額には雫が流れているのがはっきりとわかった。


「おかしいなぁ。意味がわからないなぁ。殺させろやぁっ!!」


「あぁ、わからないなら説明してやるよ」


 レインは仮面を取り外しながら簡単に説明する。少し亀裂の入った仮面は今にも割れてしまいそうだ。


「この仮面には〈ディアメタル〉が使われていたんだ。〈ディアメタル〉は正面からの攻撃にめっぽう強く、おまけに壊れにくい。まぁ、俺が助かったのは戦闘服マニアだったからだ。どんなに加工されたって俺には見抜ける」


 アメシストは理由を聞いて謎の笑いを上げる。まるで悪の死者を蘇らせる前の死神のように。


「殺す殺す殺すぅっ!!絶対にお前だけは生かさない!」


「今ので全部わかった。お前は全て見透かせられることが嫌なんだろ?今からお前の計画全て当ててやるよぉ。言っただろ、俺はお前が嫌い」


 レインにはアメシストを前にして震えがなくなっていた。レインは仮面を横から折り曲げる。


「そして、俺はお前より性格が悪いってな」

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