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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第12話 『激闘の末に知る裏』

 ピピっと耳元で音が鳴った。ギルアからだ。


『敵襲です。今すぐにパーティ会場の入り口に来てください』


「はい。わかりました!」


 レインは机に置いてある銃こと〈ダイアモンドエース〉を手に取り、椅子に掛けられた戦闘服に着替え自分の部屋の扉に手をかける。

 カノルが勘付いて椅子から立ち上がる。


「レイン。喧嘩後に悪いが、俺たちも一緒に行って良いか?」


「あ、うん。一緒に来てくれ。てか、そのために来たんだろ?」


「そうなんだけど」と言いつつ、カノルはレインのそばに寄る。


「三つ目の悩み、帰ってきたら聞かせてくれ」


「ああ、もちろん頼む!」


 メリーは黙って歩いてカノルの後ろに立つ。気が乗らない顔をしながらもカノルの服の袖を握る。

 レインが耳元に手を当て言う。


「第二官位、レインボー・サインナーズ。今からそちらに向かいます!」


『はい、お待ちしています』


 レインは扉をゆっくり開け、時の任務で使っていた足音をなるべく消す走り方で長い廊下を走る。

 メリーは足音を消して走りながら、小さな声でカノルに問う。


「ところで『れいんぼーさいんなーず』ってなんですの?」


「レインの本名だ。俺たちは呼びずらいから無断でレインって略して呼んでいるがな」


「へぇ、偽名にしなくてももともと変な名前じゃないですの」


「おい」


 レインは振り返りメリーを睨みつける。メリーはレインに気づくがそっぽを向いて走り続ける。

 あ、これ嫌われてるな。俺も嫌ってるけど。

 地下の割には広く、綺麗に整備されている。長い廊下の壁にも床にも汚れが見当たらない。放置されたインザヘルで建物を綺麗に保つことは比較的に困難だ。

 走り続けた先に大広間の扉が見える。高級な扉は鈍い音を出すことなく自動ドアのように無音で開く。

 大広間の中の先にパーティ会場の入り口へ繋がる扉がある。中心にある大きな机は片付けられておらず、大きな机の上を飛び越えて突っ切る。

 パーティ会場の入り口へ繋がるドアを開けると上に上がる階段が続く。地下だってことを忘れていた。上っている途中に上から敵に狙われたら攻撃され放題だ。

 階段を上ると戦闘が繰り広げられていた。


「あ!レインくん!もしかしたら君の力いらないかも!」


「決断が早いですよセルミナさん。私も眠りたいですし手っ取り早く終わらせましょう」


 セルミナが気づいて声を上げた。二人とも息を全く切らしていない。ギルアは爆発物を禁止と言われていたので二つの小型の刃物を使っているように見えた。


「流石第一官位だな。俺たちには到底及ばないぞ」


「付け足しておくと俺はシャーロ無しだからな!戦力外通告くらってもおかしくないからな!」


「ごちゃごちゃうるさいですわ。カノル!早く行きますわ!」


 カノルにニコッと微笑むメリーはゴミを見る目で去り際にレインを睨みつける。メリーの手元を見ると武器のようなものが生成されていた。黒いグリップのようなものが浮き出たと思えば次第にヒモのようなものがグリップから生えてきた。そうだ、これはむちだ。


「性格にぴったりだな」


「うるさいですわね!これでも命を何個も救っているのですわ!」


「え、あ、ごめん」


 どうやら、口に出ていたらしい。

 せっかくのインザヘルに来て初めての大型任務の初戦闘———。傍観者になっては勿体無いな、それでは。


「俺も行くか!」


 レインは腰につけているガンケースから〈ダイアモンドエース〉を取り出し走る。敵はほぼ壊滅状態。元々いた敵は倒れている人数を見ればわかるが、十数人はいる。全員能力者とわかっているからこそ立ち回りはしっかりと見極めなければならない。今立っている敵の人数は四人。他三人はギルア、セルミナ、カノルとメリーが相手をすればなんとかなるはずだ。


「おわっ」


 いきなり地面のコンクリートが浮かび上がり、レインに向かって飛んでくる。間一髪で避ける…が、避け続けているとパーティ会場に害が出そうだ。

 全ての敵は共通して黒い仮面をつけており、顔が見えない。つまりは殺意に満ちた顔が見えず、攻撃してくるタイミングが測れないというハンデがこちらにある。


「こっちは昼間ぐっすり眠らせてもらったからな。負ける気はしねぇぞ?」


 レインは自力で鍛えた戦闘技術で、敵に接近して素早く足を引っ掛ける。倒れたところ〈ダイアモンドエース〉で撃つ。完璧に思われた攻撃だがやはりそんな単純ではない。銃弾は敵の能力によって圧縮されて潰されていた。察するに敵の能力は念力か何かだとわかるが、わかったところで、だ。

 敵がレインを見る時と同じくどのような攻撃方法があるかわからない。奥の手があるのか、そもそもまだ本気を出していないのか。表情を見ればわかりやすいが仮面をつけるという大きなハンデのせいでわからない。

 敵も攻撃を仕掛ける。道に立っていた道路標識を折り倒し、空中に浮かべ、まるでペン回しをするかのように振り回す。威嚇のように見える動きがレインを惑わせる。


「銃弾は節約したかったが…。命と引き換えにってのはできないな」


 レインはポケットから緑のマガジンを取り出して、〈ダイアモンドエース〉に差し込む。


「おい、お前。この銃口から何が出るかわかるか?」


 仮面の敵は何も答えず、銃弾を弾き返そうと道路標識を回し続けている。


「死体じゃあないならなんか言えよ!」


 レインは引き金を引く。銃口からはかなりの速度で木のツルが伸び出し、仮面の敵を巻き付ける。

 初めて使ったけどこれ強いな。何回も使ってみたいけれどまぁ、高いには変わらないからこの一弾で終わらせよう。

 捕えられた仮面の敵は抜け出そうとするが手を動かすことができないと念力を使うことができないらしい。

 殺す時は非常時だけ許されているし、気を失わせるだけで良いか。

 レインは捕えられた仮面の男に近づき、ツルとの間にちょうど剥き出しになっている鳩尾みぞおちを殴る。


「能力のない俺の勝ちだな。お疲れ」


 レインはそう言い敵の仮面を外す。


「え?」


 その仮面の裏にあったものは、頭部に穴の空いた男だった。

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