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まるですべてが嘘のように。  作者: スノウドウム
任務0 インザヘルパーティ
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第9話 『主催者からの施設説明』

 だが、ここで気にしては話が進まない。ヘイトベインを探すことが第一に考えなくては。


「では、行きましょう」


 二人で手分けして探す。ルルは端の方から、レインは中央にある巨大な机周りを探す。

 ヘイトベインが落ちているとは限らない。誰かが拾ってくれた可能性だってある。

 レインは巨大な机にかけられている白い布をめくって机の下を見回す。


「机の下にはない、と…」


 あと見ていない場所は巨大な机の周り、つまりパーティ参加者がうろついている場所だ。

 レインは地面をよく見ながら歩く。パーティ会場の下に敷かれた赤いカーペットのおかげで白いヘイトベインはよく目立つ。

 レインが歩いていると人にぶつかった。


「あ、ごめんなさい!」


「うお、タッチくんどうしたの?」


「なんだ、セナさんでしたか」


「敬語はやめてって言ったでしょ?」


「はい、わかったよセナ」


 セルミナの手に持っている皿の上にはさっきとは違った料理が盛り付けられていた。


「盛り付けるの二回目?なんかさっきと料理変わってない?」


「なんで盛り付けを二回目だと決めつけてんの?」


「もしかして前盛り付けた料理を乗せ直したのか」


「私そんなに非常識に見える?まだ盛り付け四回目だよ」


「え、太る——」


「太ってないから!ちゃんと動いてるから!!」


 セルミナは顔を真っ赤にして怒った。

 そうか、女性にカロリーは禁句だったな。リーナスにもキレられた覚えがある。

 蘇る記憶にはリーナスにぶん殴られるレインが写っていた。決して良い思い出だから覚えているのではない。初めてリーナスにご馳走してあげた時のことだから覚えているだけだ。


「で、レイ…タッチは何してるのさ」


「少し言いにくいのだが…」


 セルミナに小声で事情を伝える。


「な、何してんの!?」


「声が大きいです!」


 セルミナからの返答は小声ではなく周りの一部の人に視線を向けられた。


「そういうわけで今探しているんだ」


「手伝わなくても大丈夫そう?」


 少し考えたがルルも協力してくれていることだし大丈夫だろう。


「任務までには間に合うだろう。セナはエネルギー補給をしていてくれ」


「そっか!じゃあお言葉に甘えて!」


 セルミナは料理を口に運ぶ。

 ヘイトベイン探しの続きとしますか。

 と、思ったその瞬間部屋の電気が消えて辺りが暗くなり、探し物どころではなくなった。参加者はみんなパニック状態になっている。

 次の瞬間、会場の奥の方の壁が上に上がった。壁の奥には少し高いステージのある。その上に立っている男にスポットライトが当たる。


「皆様!パーティは楽しんでいますか?」


 その男はまるで結婚でもするのかというくらい真っ白いスーツに赤いフレームのメガネをかけている。顔にこれといった特徴はないが整ってはいる。男の口に咥えられた赤い薔薇の花が投げられる。

 セルミナがレインの肩を叩く。


「なんかイキってない?貴族ってみんなこんな感じ?」


「さ、さあ?」


 参加者は何かに気がついたのか、歓声を上げて場が盛り上がる。ステージ上の男が再び声を上げる。


「ワタクシ、今回のパーティの主催者のヴェルス・アルカディオと申します!」


 レインは思わずセルミナの方を振り返る。セルミナは気まずそうに首を振るが言い逃れはできない。セルミナとギルアは任務を受ける時に顔を知るはずだ。

 セルミナは無理な言い訳をする。


「あ、あの時は…そう!服が黒くてサングラスだったの!」


「あの人は常にあの格好で、私たちが任務を受けに行った時もあの姿でしたよ」


「ひゃあ!」


 セルミナの背後から暗くて見えないこともあり、いつも無表情で高身長のギルアがよりこわく見えた。


「空気読んでよキルアちゃんー!」


「事実ですから」


 セルミナは頬を膨らませながらじっとギルアのほうを見る。見られている当の本人は都合の悪い時は暗いところでは見えないようで目を逸らしている。


「いいもん。キルアちゃんのことずっと見ていてあげる!」


「間に合ってます」


 一人睨めっこが始まった。ずっと見ていられるこの二人を背景にパーティの主催者の話を聞く。


「今日から三日間、このパーティを目一杯楽しんでください!三日間いるとなればこのパーティ会場の地下について簡単にご紹介しましょう!」


 ヴェルスの背後のスクリーンが下がった。スクリーンにパーティ会場の地下についての図が表示された。

 ヴェルスは伸びるペンを取り出し説明を始める。


「ここが私たちのいる、パーティ会場のホールです!その右と左に見える扉を開けていただくと長い廊下があり、皆様の宿泊所を用意させていただいております!しっかりと人数分用意してありますので取り合いはしないでくださいね!」


 貴族の輩が歓声を上げる。

 こちらからしても普段からは違う豪華な暮らしができて嬉しい話なのだが、楽しんで来ている貴族たちとは違う。夜中でも悪党が来れば強制的に起こされ、ゆっくりと寝れたものではない。


「そしてそれぞれの部屋にはなんでも備わっております!バスタブも洗濯機も、もちろん地下だからと言って外が見えないのは悲しいと思い部屋全体の見た目だけを変えることはできますよ!空気も安定して外の空気を取り入れております!」


 また貴族どもが歓声をあげる。

 これも嬉しい話だが、くつろげる時間が俺たちにはあるのだろうか?あと、インザヘルの外の空気をそのまま入れているのではなかろうな?ガスとか普通に流れている場所だけど。

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