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8,竜国(ドラゴンキングダム)

魔界砂漠地帯、ガーランド。

最終防衛拠点手前、第四防衛拠点。

すでに竜国軍によって占拠されたこの崩れかけた砦に、竜族の司令官が両隣にメスの竜族をはべらせ行儀悪くすわっていた。

ドラゴンを人型にしたような出で立ち。蜥蜴人にドラゴンの翼と角をつけたような姿。4メートルは超える巨体。

だらしない腹が目立つがそれ以外は筋肉隆々でさらに無数の傷跡が、歴戦の猛者を物語っている。

彼は竜人と呼ばれる種族でドラゴンキングダム、竜国ともよばれる大陸で様々な竜族の中でも上位種である。

それらは先天的な能力として竜形態、竜人形態、人間形態に自由に変化できる。竜人種は体の小回りが利くという点で竜人形態でいることが多い。逆に小回りが利いても人間形態は姿格好が気に食わないと理由で変化するものは少なかった。ただ中には竜人形態よりさらにコンパクトになるのでごく一部であるが好んで人間形態でいるものもいた。

そんな彼の目の前には豪勢な食事がずらりと並んでおり、その中の骨付きの肉を貪る。

「おい、しんきくせー人間のかっこうなんかしてんじゃねえよ。クラウス」

メスを侍らせ料理を貪る竜族を無表情で眺める小柄な人間が一人。正しくは人間形態をしている竜族。

紫の着物を着ていて簡素な椅子に座り、杖をついている。黒い髪のロングは顔の全てをほぼ覆っていて

片目がたまに覗けるかどうかだった。華奢な体つきだがその太い声質は女を否定させた。

「失敬。ですが我慢してください。この姿のほうが色々と動きやすいものでして」

言葉とは裏腹に特に反省の様子もなくそのまま動かないでいるクラウス。それを見て自分でも指摘したもののどうせ直さないとわかっていた司令官はけっ!と言い骨だけとなった骨付き肉を雑に放り投げる。

「ところで…だ。最終防衛拠点はまだおちねえのか?相手は千にも満たねえんだろ?こっちは5万なのに

時間かかりすぎだろ」

言いながら。豪勢で奇麗な盛り付けをされていた料理だが、雑に素手で鷲掴みにして口に運ぶ。

「ドラン様。敵軍はそこそこやる上に、搦め手が得意な連中でして…我が軍の主力である飛行ユニットを

鈍重にする魔法やら、様々な妨害系のいやらしい魔法ばかり使ってくるんですよね…。しかもこの砂漠地帯以外険しい山を抜けないと目的地である魔王城にいけない。伏兵を容易に隠せる山岳地帯を抜けるなんてそれこそ自殺行為ですからな…結局のところじんぐりじんぐり行くしかないわけで。まあ単純に強い敵はいないから焦らず行きましょうや」

それをきき、はーーと大げさにため息をつく。

「大軍に策なしとはよくいったもんだが…じゃあおめーがいる意味もねえんじゃねえのか?」

骨付き肉で指すドラン。

クラウスは口元を歪める。


「わかっているじゃないですか。下手なことをさせないために『ここ』にいるのですよ?」


あきらかに空気が変わった。

ドランの両隣にいる雌竜が明らかに怯えている。圧でもってドランが睨みつけるがクラウスは意を介さず

「イラつくのはわかりますが敵が防御後退を続けている以上、こうして拠点をふやしていくのが無難です。痺れをきらさして分散させる策かもしれませんし、王道で行きましょう」

と淡々としていた。

「…あー、あー、おめえはそういう奴だったな。面白くねえから言ってみただけだ。とはいえ

次から口の利き方には気をつけろよ?一応今は俺のほうが上官なんだからよ」

圧をなくし、頭をかく。いまの策が無難なのはわかるが一応おまえ軍師ポジなのだからなにか現状を早く打破できる策を考えてみろと遠回しに言ってみたが『大将ならそんなくだらねえこと考えてんじゃねえ』と遠回しに釘をさされてしまった

ということだ。

圧倒的大軍を有する場合、下手に分散すれば敵の策にて各個撃破される可能性が高い。

単純な大軍だからこそ、策で撃破しにくいのだから。

故に大軍に策なし。

勿論それは十分にわかっているが、大将であるドランにとってそれは多少つまらないと考えてもしかたない。つまらないというよりよりいい策があればそれをしたいと考えるのが常であろう。

だがクラウスにとって戦とはつまるつまらないではないのだ。

勝てばよかろう、負けなければよかろうなのだ。大将の感情など知ったことではない。そもそも策とはまともにやって勝てぬ相手に弄するもの。むしろ余計な策を弄して失敗した事例はいくつもある。

保有戦力以上の結果を出す策とは、同時にそれ以上のリスクを背負う場合も多い事である。

「以後、気をつけます」

全く反省の色を見せない感情のない返事だったが、ドランはとりあえず飲み込むことにした。

まあ、ぶっちゃけものいいはイラつきはするが、下手におべんちゃらされるよりはましだなと思ったから。

それに、そばに置くべきは苦言を呈するものだ。

そういう意味でドランは大将である器であるにふさわしいと言えなくもなかったが、イラつくものは

いらつくものである。そんな感情を払拭させるためにでかい樽ジョッキの酒を豪快に一気飲みするドラン。

レッドエキスと呼ばれるこの赤い酒は、竜族以外が飲みと卒倒するほどのアルコール度数である。

空になると雌の竜の前にジョッキを突き出し、注ぐように促す。

そしてまた飲み干す。

「…一応戦闘中なのですからほどほどにしてくださいよ」

クラウスがやれやれと言った感じでつぶやくと

誰のせいでこうなってんだと噛みつこうとしか瞬間


「ど!ド!ドラン総司令!!?ほ、ほ、緊急報告があります!!?」


新たな竜人が明らかに慌てて悲鳴ともとれるような大声で入場した。

その表情は憔悴しきっておりそのうえ汗だくで、ここまで来るのに全速力で文字通り飛んできたのだろう。

しかし上官二人を目の前にしてなるべく姿勢を正そうとしている。それでも息切れは隠せていない。

ドランは渋い表情になった。

その様子をみれば緊急報告とやらが如何にろくでもない報告であろうことが予測される。

まさか敵の援軍がきたとか?だがそれにしては慌てすぎだ。もう少し余裕があってもいいだろう。

思わぬ強敵が現れて…いやそれも以下同上だ。ならば本国から抜き打ちの軍監がきたとか?

それは結構あり得る。自分が本国の軍監が死ぬほど嫌いなのは部下全員が承知しているのでここまで

あわてて報告することも考えられる。だが…それにしてもだ。

「おう。報告前に水でも飲め」

そういい隣の雌竜に水の入った瓶を渡すように促す。受け取った竜人はありがとうございますと

一気にそれを飲み干す。少し落ち着いたようだったがだが動揺は収まっていない。

ドランはどっしりとした感じで改めて報告を促す。

大将たるもの、どんなことがおきても落ち着いていないといけない。そうでなくては部下が

より不安になってしまう。大将の辛い所だ。

心の中でやれやれと言いいながらその報告を聞くと

完全に固まってしまった。


「わ…わ、わが軍が全滅しました!!!?」


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