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4,冒険者の階級(クラス)と不穏な依頼

冒険者とは。ギルドから依頼を受けその対価として金やアイテムを受け取るものたちである。

階級があり、下から権天級、力天級、主天使級、座天級、智天級、熾天級と6クラスに分かれている。

わかりやすく言えば。

権天級→ルーキー

力天級→一般

主天級→ベテランまたは力天級よりも優秀なものたち。

座天級→明らかに主天級よりも秀でた能力を持つ者たち。主天以下は座天とは明確と言っていいほどの差がある。

智天級→ギルドだけではなく、国や上級貴族からも直接依頼されるほど名声がありかつ、冒険者としても超一流の能力を持つ者たち。

熾天級→生きる伝説たち。数えるほどしか存在しなく、その力は国宝として保護されている。


マオーは座天級の冒険者である。彼にとって冒険者業は孤児院の経営費を稼ぐだけの手段でしかないが

わざわざ冒険者を選んだのは訳がある。

その多くは目立たないようにするため。

マオーの能力をもってすれば人間界で様々な手段で荒稼ぎすることは可能だ。ただ、それはいかなる

ものでも目立つことになる。マオーがセンチネルと呼ぶ組織に目をつけられるのはまずい。そもそも

人間界に孤児院を設立したのは安全だからだ。魔界や竜国に比べて極端に全体レベルが低い人間界。

必然子供たちを守りやすくなる。

そんな中で目立つことをしてセンチネルに照準を向けられると本末転倒である。それでは人間界にきた

意味がなくなる。

ではなぜ冒険者なのか。単純に冒険者はどの階級でも稼ぎが、普通の勤め人よりも多い。

それは権天級といえど、大なり小なり命がけだからである。どんな依頼でも突発的な事故で死ぬ

可能性がある以上、報酬は高めになる。その点でマオーは都合がよかった。マオーの実力をもって

すれば、目立たぬよう階級を徐々に上げることは容易である。そのためにレベル制限の指輪や能力

ダウンの指輪もいくつもはめている。

そして現在は座天級に至る。

マオーにとって座天級はすごく都合がいいポジションだった。智天級ともなれば国からの仕事も多くなるので

目立つことになる。座天級は各ギルドの高額依頼を優先的に受けられ、且つ国や富豪層の直接依頼まではめったに来ない。

つまり、金を稼ぎつつ目立ちすぎることもない。ゆえに座天級のまま維持できればそれが一番である。

ただし思い通りにいかないのが世の常であるのもまた事実であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ね~マオ~。そろそろあたしたちも次の段階じゃなーい?」

冒険者ギルド。四人席の1つに座る銀髪の青年に、座りながら椅子を寄せる淡い水色のわさっとした髪の少女に近い女性。

耳が長く先がとがっている。色白で華奢な体つき。暗めのマントをしていて斥候やレンジャーを彷彿させる。

「何回も同じこと言わせるな。僕らじゃあまだまだ、智天級には及ばない」

可愛らしい女性が身を寄せてくる。ともすれば男にとってうれしいシチュエーションではあるが銀髪の青年、

マオーは鬱陶しそうに顔を合わせず、黒ひげを飲みながら答えた。

「マオーさんの言う通りですよ~レニさん。それに、智天の昇格試験って智天級の紹介状が必要じゃありませんでしたっけ?」

マオーの対面に座る女性。露出度の高い服を着ている。女性としては背が高く、マオーぐらいの背がある。

色黒でグラマラスな体系、ピンク色のロングヘアー。

「でもいいたいことわかるぜ。智天級って結局都会のギルドにしかいないからいまいちピンとこないんだよな。

案外俺たちの腕でも十分通用するかも…それに虎穴に入らずんば虎子を得ずというしな。

それと智天級の紹介状がなくてもギルド長の直接推薦があれば昇格試験を受けられるはず」

もう一人。マオーの隣に座る大柄の男。まさにザ戦士という出で立ち。重鎧にグレートアックス装備。

黒髪短髪で、ワイルド寄りの顔。

「だったらいますぐ僕抜きで大悪鬼ビッグオーガでも討伐してこい。そしたらギルド長に掛け合ってやるよ」

マオーの言葉に3人が固まる。

「もーわたしまで巻き込まないでくださいよー。わたしはなにも言ってないじゃないですかー」

間延びしたしゃべり方をするピンク髪。マオーはなんとなくヴァニラを思い出した。

「あーじゃあ、ローニャはいいや。せっかくだ。レニとザインとは解散してコンビでいこうか?」

「えー?いいんですかー?……って」

マオーの隣でメラメラと炎が燃え上がる。

「このスケベやろう…!!なにどさくさに紛れてローニャとくっつこうとしてんのよ!」

ギリギリとマオーの首を絞めるレニ。鬼の形相だ。

「ぐええ…!?レニ…さん!?死ぬ!死んでしまう!!ザイン!見てないで助けろ!」

はああ、とため息をつきながらレニを引き離すガザインであった。


「冗談だろうに本気にすんなよなー」

首に残った痣をなでながら黒ひげを飲みなおすマオー。

「そう聞こえないのよ!あんたの場合!大体あんた抜きで大悪鬼ビッグオーガを討伐してこいとかぎりぎり死ぬレベルの

生々しいやつじゃない!」

「言えてる。反応に困るやつだ」

お前らが言い始めたんだろうと思うマオーであったが、また首を絞められたくないので飲み込む。

「智天級に上がりたいのはわかるが、お前らが思っている以上に壁は高いのさ。じっくりいこうや」

マオーはなだめるように言う。

「…本当はわかってるわよそんなん。でもマオーがいるならって。運命は自ら切り開けっていうじゃない?」

レニはそう口を尖らせる。

「それってつまりー。マオーさんけしかけて実力不足のじぶんでもー智天級の道を切り開くってことですかー?」

「その通り!」

「自信満々に肯定するな」

「ぐえ」

レニの頭をチョップするマオー。

そんなやり取りの中。ザインがいい加減、仕事の話でもと依頼書テーブルに広げた時。


「あのー…チーム『雨四光レイニーサークル』のみなさん」


青い髪のメイド服。メルが四人の前にいた。ギルド職員。

その瞳はマオーをとらえていた。

「なにか用?」

マオーがとくに興味もないように問う。

「ギルド長から緊急の依頼があるそうで、今すぐ部屋に来てほしいと」

マオーはため息をついた。ギルド長からの緊急の依頼。絶対なにか面倒なことに違いない。

かといって下手に断ることもできない。ギルド内の評判を下げるのもできれば避けたい。

まあできれば…だが。

緊急依頼は滅多にないので辺りもざわついている。そしてなによりレニの目がキラキラしていた。

「わかったよ。お前ら、いくぞ」

「おう」

マオーが立ち上がると、3人も勢いよく立ち上がる。

それにメルがあの!と四人を制止する。

「申し訳にくいんですがギルド長はマオーさんと2人で話したいと…」

それを聞いたマオーは特に表情を変えずに

「あっそう。じゃあやんね」

「ああ!?待ってください!いまギルド長にいってきます!」

走ってその場を去るメルだった。

「ギルド長に喧嘩売ってどうすんのよ…アホ。でもま、ちょっとかっこよかったわよ」

「そういうとこほれちゃいますよー」

「メルちゃんは完全にとばっちりだけどな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「気を悪くせんでくれよ。本来は先方の要望でマオー殿だけの依頼だったんでな…」

ギルド用正装。白髪交じりのポニーテイルで初老ぐらいを感じさせる。とても小柄な矮躯はドワーフ族であることを

示している。言葉遣いとは裏腹にその表情と声質は女性である。

「とりあえず事情をきかせてくださいよ」

ギルド長室。広めの部屋で本棚が壁に並んでいる。矮躯に合わない椅子と大きな机に資料が乱雑に置かれている。

クラシックな模様であり、ギルド長とは少し離れたソファーにマオーら四人がちょうど4角になるよう座っていた。

ギルド長に顔を向けてマオーが問う。横にはメルがたっていた。使用人のごとく。

「依頼自体は単純なもので、ここダーフォンから聖都ファーウェルまで依頼人を護衛するってことなんだが…」

ここで一度ため息をし、周囲を見渡し何かを決めたような表情を見せる。

「肝心の依頼人がオーランド家のお嬢様でな…。私がいうのもなんだがきな臭くてかなわん」

オーランド家ときいてレニが露骨に嫌そうな表情になる。

「げー。そいつ超わがまま娘ってんで有名な奴じゃん」

「レニさーん。この場合問題はそこじゃないとおーもいますよー」

ローニャがレニに向かって口を閉じるようにジェスチャーする。不満そうに口を膨らませ後頭部に手を組むレニ。

「そもそも座天級に護衛させるような危険な道程ではないし、依頼料が成功報酬で金貨100枚だそうだ。それは払いすぎだといったが、緊急依頼だからとっとけってさらに20枚金貨をギルドにおいてったよ」

「金貨…100枚!?銀貨じゃなくて!?」

ギルド長の言葉にマオー以外の三人が身を乗り出す。

それもそのはず。金貨100枚の依頼なぞ智天級以上の冒険者に回される案件だ。

だがそれだけにマオーの表情は曇る。

「なにか裏があるってことか…。ちなみにもともと僕個人の依頼だって言ってましたけどその理由は?」

「じつはそれもようわからんのだよ。いきなり乗り込んできたとおもったら、プロフィールと写真を

みて『こいつがいいわ!』ってそれきり。にべもなかったよ。流石にチームとして依頼を受けることも

あるからそこは飲んでもらったが」

いいながら。またふかくため息をつくギルド長。『そこは飲んでもらったが』こんな簡潔にすむものでなく相当駄々こねられたに違いない。レニが超わがまま娘と言っていたが、世情にあまり興味のないマオーでさえその噂は耳に入っていた。つまりそういう事だ。

「あちらさんの思惑は正直わからんが、引き受けてくれんか?ものすごいきな臭いし胡散臭い。だがオーランド家はギルドのスポンサーでもあるんだ。無下にはできん。今君たちが受けている依頼はもちろんこちらで処理する」

ギルド長が椅子から降り頭を下げた。それに続きメルも深く頭を下げる。

「安心してくださいよ。元から断るつもりはない。それに金貨100枚、一人頭25枚。なにか裏があっても断るには惜しすぎる」

ファーウェルまでの道中。せいぜい襲われたとてケチな野盗やらゴブリン等の低俗モンスターだ。マオーたちにとってそれらから依頼人を護衛することなどわけでもない。ただギルド長が危惧するように胡散臭いことに変わりはない。

そもそもマオー個人に依頼してきたのが謎だし、オーランド家の令嬢なら冒険者など雇わなくても私設の護衛ぐらいいるだろう。

ただ全てが取り越し苦労でわがままお嬢様の気まぐれの酔狂である可能性もある。

であれば危険度の低い4日ばかりの護衛で金貨100枚という破格が過ぎる依頼。

これを警戒して受けないのはあまりに弱気の選択肢といえる。

以上がマオーの見解だったが他の3人も同じようだったのでマオーをみて頷く。

「詳しく依頼内容を聞きましょう」

ほっと胸をなでおろすギルド長とメルであった。

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