34,エピローグ。
エピローグ。
「俺が死んだら、しばらくはシュラハの側にいてやってくれ。あれは強がっているが
寂しがり屋だからな」
魔王城。展望台。
銀髪が風になびく。黒色のマントと共に。
「…なんで一対一なんかやるのよ。あなたより竜王のが強いんでしょ?」
鮮やかなマゼンタ色のロングヘアー。病的な白い肌の女。
竜魔大戦末期。戦争の長期化により、魔界と竜国共に消耗していた。
「…それが一番被害が少なくて済むからな。まあ、最悪道ずれにはしてやるさ」
銀髪の男がそういうとはあとため息をつく女。
「シュラハちゃん泣いてたわよ?命令されたときは気丈に振る舞っていたけど。
…格好つけないであたしたちを使い潰しなさいな」
女がそういうと背を向ける銀髪の男。
「もう仲間が死ぬのは嫌なんだよ、その上お前たちまで先にいかれたら…俺は
どうしていいかわからなくなるから」
銀髪の男がそう漏らすと女が男に牙を向けた。
「おいてかれるあたしたちはどうしろっていうのよ!?あたしだってあなたに!
あなたに…まだ勝っていないのに…」
勢いよく男を怒鳴るように叫んだが、徐々にトーンダウンしていく女。わかっていたのだ。
一度決めたらこの男は絶対に曲げない。
「必ず生きて帰ってきなさいよ…!」
男が振り返り優しく微笑む。
「俺がいなくなった後、しばらくしてシュラハが落ちつたら『ミズチ』のところにいってくれ。
『俺のガキ』を預けてあるから、あいつからそれを受け取ってお前が育てろ」
男の何気ない爆弾発言にまたもはあとため息をつく女。
「…なんでこうこんな時にそんな大事なことを話すかね…。あなたに子供がいるなんて初めて聞いたわよ?一応聞いておくけど相手は?」
呆れたように肩を落とす女。
「これに関しては流石に血は争えないと自分でも思ったな。人間の女との子供だ。…ああ、ちなみに男な?ミズチから受け取ったら遠慮なく鍛えろ。殺すつもりでな」
それを聞き肩を竦めて鼻で笑う女。
「半竜人のあなたが人間と混血したらドラゴン・クォーターじゃない?
そんなに人間の血が濃くなって強くなれるのかしらね」
そう吐く女にはんと鼻で笑い返す、銀髪の男。
「俺と『俺が惚れた』女との混血だぜ?弱くなるわけがない。必ずや魔界を引っ張っていく竜になるさ」
相変わらず根拠のない自信が猛々しいやつだと思った。
でもそんな奴だからこそいままでついてきたのだ。
そして。
絶対に生きて帰ってきなさいよになにも返さなかった。
涙をこらえる女を男はぎゅっと抱きしめた。
「頼んだぜ?ヴァニラ」
一体いつぶりだろう。涙を流したのは。
もう女はなにも言えなかった。
「さあてと!…『馬鹿親父』と最後の大げんかだ!」
銀髪の魔王と呼ばれた男はこの日を境に魔界から姿を消した。
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エピローグ。
「今日から僕の代わりに君の親代わりになるヴァニラお姉さんだ」
人間でいう10歳程度の見た目の少年と手をつないでいる女。
水色のグラデーションカットに白衣。超豊満な胸。妖艶というよりは冷ややかと言った感じの
美人。頭部にねじれた角が二本生えている。
「…久しぶりね。二度と会いたくなかったわ…ミズチ」
ヴァニラはミズチが嫌いというより苦手だった。何を考えているかわからないというのが
自分のキャラだと設定していたが、こいつには全てを見透かされる感があったから。
「そうか?僕は吸血鬼女王に会えて光栄だよ?でもまあ、そういうことならさっさと進めようか。
マオー、何しているんだ。早く新しい親に挨拶をしなさい」
繋いでいた手を離し、銀髪の少年マオーの背中をぽんと叩いた。するとマオーがたったったと
無防備に近づいてきた。
無表情だが魔王様にとても似ていた。そのまま成長したら瓜二つになりそうなぐらい。
しかしそれよりも気になったのが胸元から額まで届く一本傷。
立ち止まったマオーはヴァニラを見上げるようにする。
「おねーさん、奇麗だねー」
無表情でそんなことを言うマオー。無表情なので素直な賞賛か単なる世辞かわからなかった。
「あら~、あたしの事口説いてるの?生意気な子」
そう体をくねらすヴァニラにマオーが無表情で続けた。
「ねえ、おねーさん」
「なあに?」
「おっぱいもませて」
刹那、スパコーンとマオーの頭をひっぱたいたヴァニラ。
「初対面のレディにそんなこと言うもんじゃないわよ?」
若干切れ気味の笑顔で注意するヴァニラ。すると効いたか効いていないのか、たったったと
ミズチの下に戻るマオー。
「ミズチー、あのおねーさん怖いからやっぱりミズチがいい」
そういいながら、ミズチの豊満な胸にダイブするマオー。
「…どさくさに紛れて僕の胸にしがみつくな」
刹那、ミズチの鉄拳制裁がマオーの頭部に振り下ろされた。
ドゴン!という超鈍い音とともにマオーが地面にめり込んだ。ぴくぴくしている。
どうやら声を上げる暇もなく失神したようだ。
「…やり過ぎじゃない?」
容赦のない鉄拳に若干引くヴァニラ。
「これくらいでどうにかなるほどやわな鍛え方はしていないよ。まあ、竜族の特徴として
年齢問わず性欲が超強いのが特徴の一つだから仕方ないといえば仕方ないのだが…僕も
そうだし」
僕もそうだし。そんな情報はいらねえと内心思ったヴァニラだった。
「…でもそんなところも魔王様の子供って感じね。教育のしがいがあるってものだわ。ちなみにその一本傷はミズチがつけたわけ?」
ヴァニラの問いにミズチがああ、そうだよと悪びれることなく答えた。
「預かった当初、どうしようもないやんちゃで手が付けられなかったからね。僕を本気で怒らせたら
どうなるか、身をもって知ってもらう必要があった」
それを聞き、あーなるほどねとヴァニラが納得した。
「だからあんたに預けたのね。あたしにしろシュラハちゃんにしろ、所謂『一番重要な時期』に
甘やかすような奴には任せられないってわけね」
ミズチは唯一、魔王の頭が上がらない存在である。だからこそ、人格が形成される重要な時期に
厳しくしてくれるだろうミズチに預けたのだ。
「でもそれだったらずっとあんたがマオーを育てれば、いいんじゃない?なんでここであたしに
バトンタッチさせたのかしら」
ヴァニラの率直な疑問に、ミズチは不思議そうな顔をした。
「ここから先の教育は君が一番適任だと考えたんじゃないか。僕も実際そう思うし。戦闘面において
一番重要な白兵戦は最も君が強いし、きっとマオーを正しい道に導いてくれるだろうと。
なにせ魔王への想いは、誰よりも君が一途だからね。それに関してはシュラハ君もそうだけど
…彼女の場合はやや歪んでいるからな」
これだ。こいつの見透かしたようなセリフが嫌だ。
「…出来ればもう二度と会いたくないわね」
いいながら、いまだピクついているマオーを抱えるヴァニラ。それを聞いたミズチが
残念ながらと答える。
「勘だけど、僕らはまた再開するよ?確実にね」
とりあえずこの作品はこれで終了となります。
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