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33,魔族専門孤児院経営者の…マオーさまっ!

孤児院。


「がきんちょたちの説得はあたしにまかせなさいな。あなただとスムーズにいかないでしょ」


マオーがどういうふうに切り出すか悩んでいたところ、ヴァニラから提案された。

「…どんな手段をつかうんだ?」

マオーが怪訝そうに聞くとヴァニラがあはは!と笑った。

「心配しなくても、暴力も、脅しも、魅了もしないわよ。ちゃんと道筋たてて『説得』するだけ。

その際あなたがいると面倒だから、席は外してもらうけどね」

なにが面倒なのか疑問に思ったが、孤児院が敵に露見し、シュラハに子供たちを預ける

までヴァニラに頼りきりだったので今更ここは自分で!とは言えなかった。

それで。

マオーは驚いた。驚くほど素直に子供たちがそれを受け入れたことだ。

特にキクコやイズベルからは相当ごねられると思ったが、ヴァニラの『説得』の後

特になにかいうわけでもなく、移転する準備を始めていた。

確かにマオーにとっては事がスムーズに運んで喜ばしい事なのだが…。

喜ばしい事なのだが…。

少し、いやかなり寂しかった。

自分勝手ではあるが、もう少し惜しんで欲しかった感は否めなかった。


「…どんな『説得』したんだ?」


流石に不審に思ってヴァニラにそう問うと

「べつにー。期間限定って言ったからじゃない?よく考えてみなさいな、孤児院にいた時だって

3か月スパンであなたはいなくなってた訳だし。それがちょっと長くなるだけなのだから、素直に

受け入れてもおかしくないでしょ?」

ヴァニラにそういわれて、あーそういや確かにと納得したと同時に少し安心したマオーだった。

ただ。

この時安心したマオーの顔を見たヴァニラが、にたあと表情を歪ませた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー




魔界。魔王城。玉座の間。

シュラハとヴァニラとマオーの三人。

「じゃあいくわよ」

と、ヴァニラが『超次元断裂転移ディメンジョン・テレポーテーション』の

カードを握りつぶした。

空間が歪み、転移魔法特有の光が発生し。

その光が消え。

孤児院の子供たちが降臨した。

「今日からあんたたちを世話してくれる『シュラハお姉ちゃん』よ~。

いい子にしてなさいな」

ヴァニラがそういうと十数人いる子供たちが、シュラハに視線を向けた。



「………この子たちは…!?」



子供たちを見たシュラハは目を見開き、ヴァニラに顔を向ける。

ヴァニラは無言で頷く。

その後マオーに顔を向けた。


「『そういうこと』だったのですか!?マオー様!」


突然マオーにそう問うシュラハに『そういうこと』ってどういうこと!?て

返答しようとしたが制止され


「皆まで言わずともこのシュラ目は理解しております故、どうかご安心くださいませ。

この子らをマオー様にふさわしい気高き魔族になれるよう、育んでいきます!」


いや、別に普通に世話してくれるだけでいいんだけど、と言いかけたが

まあ、やる気になっているところを削ぐのもどうかと思い

「…じゃあ、頼んだよ」

というと

「はっ!!」

と透き通るような返事をするシュラハだった。


その後。

ひとしきり子供たちと別れのやり取りを終え。

マオーとヴァニラが人間界へ戻る前に孤児院の赤毛の子、ネムがマオーに意味深な言葉を

残していった。


「今度はこっちから迎えにいくから」



ーーーーーーーーーーーーーーーー




孤児院がいた島は完全に引き払い、別の場所へ仮の住まいを設けた。

「今後の方針はどうするの?」

簡素な一軒家に簡素な家具。いかにも急造したと言った感じの家。木製の椅子で

ぎいぎいとゆらしながら座るヴァニラがマオーに問う。

「…しばらくは様子見だな。冒険者業も集中して金を稼ぐのもありだし。

…ああ、それとお前との修行もさぼりがちだったからな、鍛えなおしてもらうのも

ありかな?」

キッチンで料理をしながら返答するマオー。するとヴァニラが嬉しそうにほほ笑んだ。

「それなら新しい技開発したからおしえてあげるわよ~。名付けて『鎧砕き』!

その名の通り、素手で鎧を砕く技なのだけど」

喜々として話すヴァニラにマオーもそりゃいいなと同調する。

「『猫被ってる』ときの手札としてそろそろ、新しい技が欲しかったんだ。存外、苦戦

させられる時もあったからなあ」

いいながら、マルグリットの一式装備を思い出すマオー。

「それなんだけどさー」

ヴァニラが思い出したかのように言う。

「当面、あたしががきんちょたちを守る必要はないわけじゃん?あたしも冒険者業って奴を

『猫被って』やろうかしらん?」

ヴァニラの発言にマオーがへえと意外そうな反応をした。

「人間界には興味ないんじゃないのか?なんか心境の変化でもあったのか」

マオーの返答に、ん~そうねえと天井を見上げるヴァニラ。

「『あれぐらい』の闘争が楽しめるならやってみてもいいかなって。熾天級だっけ?

戦ってみたいわねえ」

あれぐらいというのは侵入者の三人のことだろう。

「…一応言っておくけど、ああいうのって人間界じゃあ上澄み中の上澄みだぜ?

会おうと思って簡単に会える連中じゃないからなー」

マオーが野菜を切りながらそう答えるとヴァニラはケタケタ笑う。

「冗談に決まってるじゃない。真面目に答えちゃってかわいい~」

やっぱりヴァニラの感情を読み取るのは難しい。ふざけているようでふざけていない。

ふざけていないようでふざけている。見極めるのは困難だ。

「熾天級とやらと戦ってみたいってのは本音だけど、めんどくせーのは勘弁だわ。あなたみたいに

『人間の血』が混じっていれば上手く立ち回れるんでしょうけど」

それはどうかと思うマオーだった。自制や立ち回りという点においては、むしろヴァニラのほうが

上手くやれそうな気がする。そういうとまたもケタケタ笑うヴァニラ。

「魔族相手ならねえ。人間相手におべっかやらおべんちゃらなんて…ああそういや

『ミズチ』のことはどうすんの?なんか行方不明らしいじゃん?あたしは探す気はないけど」

急に笑顔が止まったヴァニラ。魔族。上手い立ち回り。このワードで『ミズチ』を思い出したのだろう。

恐らくは魔界で唯一、ヴァニラが上手く立ち回れない(立ち回りをする気がない)魔竜エヴィル・ワイバーン

魔界のマッド・サイエンティスト、ミズチ・イズベル・グララ。

「…その件もあったな。元は竜国ドラゴンキングダム出身だから案外竜国にいるのかも。

まあ、ミズチに関しては俺が探っておくよ。時間はまあ…特に急ぐ必要もないからな」

マオーがそういいながら切った野菜を鍋に入れる。

「ん~でも『プリエム』ちゃんで遊びたいから出来れば急いでほしいなー」

ミズチがいないと眷属にできないしねんと、立ち上がりマオーに近づくヴァニラ。


「…なんだ?珍しいな」


ヴァニラも一緒にキッチンにたちマオーの料理を手伝い始めた。


「ん~、久しぶりに二人きりじゃんねー。なんだか新婚気分!」


「…ああ」




ーーーーーーーーーーーーーーーー



そして。

あれから約一年が経過し。

それなりに色々なことがあったものの、それは後々語るとして。




「さて。準備はいいか?」

子供たちを迎え入れる新天地が決まり、マオーがマジックカード一枚取り出す。

「は~い。い、つ、で、も」

いつもの甘ったるい声で体をくねらすヴァニラ。ただ今回はいつも以上に

愉快そうだった。一年ぶりに子供たちに会えることでマオーは勿論テンションが

上がっていたが、同じような理由でヴァニラが機嫌がよくなるとは思えなかった

がまあいいかと飲み込む。

とにかく一年ぶりに会うのでそっちに意識がいっている。一年間面会しなかったのは転移系魔法カードの

節約と、貯蓄のためである。シュラハから【何かあれば何でも用立てしますので!!】といわれていたが

子供たちの世話を押し付けた挙句、カードの無心までするのはいかがなもんかと思い遠慮していた。

それと若干…というかかなりマオーはシュラハのことが苦手だった。

まあ、これから子供たちに会えるから笑顔で向かおう。

「いくぞ」

マジックカードを握りつぶす。



魔王城。玉座の間。

転移の魔法でマオーとヴァニラが降臨した。


「!?」


マオーは驚愕した。魔族は基本的に成長が早く一年、でも大分成長する。しかしながらそんな

次元を完全に逸脱した種族レベルの『進化』を子供たちはしていた。


「マオー様!お久しぶりです!ご健在で何よりです!!」


跪く、シュラハの後ろで。

見た目的にもかなり成長した子供たちが、明らかに上位種への進化をしていた。

シュラハの後ろで同じように並んで跪いている。もはやマオーやヴァニラと同様の

人間界とは逸脱した力を感じる。ヴァニラは驚愕するマオーを見て愉快そうに笑っていた。



「…シュラハ…さん?これはいったいどういう事なんですか?」



思わず敬語になったマオーにシュラハは喜々と説明した。



「魔界の孤児を拾って育てていると聞いて、最初は魔界の乱れを嘆いてのことかと

考えました。しかしながらお連れになられた子供たちを見て、マオー様の御考えを

察するに至りました故に」



お、俺の考え?と自分で自分の指をさしてぽかんとするマオー。



「お戯れを。この子たちを初めて見た時、確信しました。魔界の将来を引っ張っていくほどの

素晴らしい才能を秘めた魔族らであることを。そして私にマオー様の従者として強く気高く

育て教育すること。そしてマオー様がこの子らを率いて、魔界の新たな王となることを!」



意味の分からない言動を繰り返すシュラハに、助けを求めるようにヴァニラを見るマオー。


「シュラハちゃん、こうなったら『ベアトリーゼ』と『ルクレツィア』も呼んで

魔界四天王再結集といきましょうか?」


言いながらヴァニラもマオーに跪いた。


「ええ!でもあくまでこの子たちが成長しきるまでの繋ぎね。マオー様の腹心は

後ろに控えているこの子らがなるべきよ!」


はいはいと気力に満ち溢れるシュラハに若干呆れるような笑みのヴァニラだったが

内心は本当に愉快そうだった。

自分以外とんとん拍子に話が進んでいく。子供たちも違和感なくそれを受け入れて

というか、むしろ凛々しいといった顔をマオーに向ける。

いや、違うそうじゃない。


「さあ、新たな魔王様の御誕生を祝して!魔王様をたたえるわよ!」


ここでマオー以外の魔族たちの声が、重なった。



≪≪マオーさま!!ばんざーい!!!≫≫




(ええええええええ!!????)




マオーの心の叫びが魔王城にハウリングした。

この日より。

魔族専門孤児院経営者の…マオーさまっ!

改め。


魔界の王の…マオーさまっ!!となった。





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