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32,想い焦がれて…。

驚愕の事実をしり絶句するシュラハ。

予想通りの反応にまたも通信越しでケタケタ笑うヴァニラ。

動転が収まらないシュラハは人間化が解除してしまい、スライム状態に戻り部屋を右往左往する。


(ま!ま!まーーーーおーーさ、ま?ごし?)


自分でもよくわからない思考のまま、広い寝室を右往左往する。勿論そんなときでも家具にぶつ

かって壊すようなことはしなかったが。

通信越しでもシュラハの動揺が伝わってきたので、落ち着くまで待つことにしたヴァニラ。


しばらくたち。

《落ち着いた?》

最初はその様子を愉快そうに楽しんでいたヴァニラだったが、あまりに長かったので終盤

面白いというより呆れた笑みになるヴァニラだった。

「…ええ、取り乱して悪かったわ」

と言いつつ、完全に人間化できていないシュラハだったが冷静に話せるまでは回復した。

「どういうことなの?魔王様にご子息がいたなんて初耳なんだけど」

シュラハの問いにヴァニラはう~んと唸る。


「あんたが面倒くさがりなのは知っているけど、こればっかりは一から千まで話してもらうわよ!

ていうか、その御方は本当に魔王様のご子息なの!?」


ヴァニラを疑いつつ御方とすでに敬称するあたり、シュラハの内心が浮かれていることがわかる。

でも本当に長い話になるので、代案を出すヴァニラ。

《ねえ…説明は後でゆっくりしてあげるから、とりあえず直接会ってみない?説明なんて不要で

『魔王様のご子息』だって感じ取れるわよ。あなたならね」

ヴァニラの返答に言葉を失うシュラハ。たしかに。どんなに姿かたちを変えても魔王様なら見破る自信が

ある。

そして仮に魔王様のご子息を語る偽物がいたとして。そんなのに騙されるほどヴァニラは

甘くない。


いや。そんなことより。


はやく会ってみたい!


あの魔王様のご子息様がどんな御方かみてみたい!


「…わかったわ。お出迎えの準備はしておくけど、なにか必要なことがあるなら遠慮なく言って?

こちらで手伝えることがあるなら何でも用立てするから」


既に偽物の可能性を忘れて浮かれてはしゃぎたい衝動を必死に抑えて冷静に話すシュラハ。


《あーやっぱり察しがいいわシュラハちゃん。人間界から魔界に飛ぶための超上位魔法

超次元断裂転移ディメンジョン・テレポーテーション』のマジックカードを

こっちに転送してほしいのだけど》


シュラハにとっても超上位のマジックカード、しかも転移系はさらに貴重な部類だったが

「何枚ほしい?」

と体を売ってでも指定した枚数をそろえてみせるという気迫を見せるシュラハ。幸い、カード生成に必要な竜族の素材は多量にあったので体を売る必要はなさそうだが。

「…とりあえずそっちへ行く用と人間界へ戻るように二枚でいいわよ」

予想はしていたがあまりの食いつき具合に、流石のヴァニラも若干引いていた。

「じゃあ予備も含めて三枚転送するわ。あなた宛てでいいわよね?」

《…ええ》

ヴァニラが引いてることなどまったく気にせず、思考を巡らせるシュラハ。

どうやってお迎えしたら失礼がないかとか、自分の姿は魔王様の好みに基づいて

形成されているが、ご子息様はの好みに合っているのだろうかとか。


《じゃあ『お願い』は聞いてくれるのね?》


ヴァニラが改めてそう問うともうすでに偽物かもしれないという可能性など忘れ切って


「この命に代えても必ず遂行して見せます!!!…と伝えておいて!?」


脳がキーンとしたヴァニラだった。




ーーーーーーー




魔王城。玉座の間。

黒を基調とした、広く豪勢な装飾がされている。

そして上座には大きく立派な玉座。


(…胸の高まりが収まらない、駄目よシュラハ!しっかりした姿勢でお迎えしなきゃ…!)


すでに玉座の前で跪いているシュラハ。

玉座の間にはシュラハしかいなくがらんとしていた。本来であれば護衛軍総出でお迎えしたかったが

ご子息様の願いでお迎えするのはシュラハだけとなっていた。本当は玉座の間じゃなく適当な部屋で

いいと言われたが、それはあまりにも無礼なので拒否したが。

まあ、すでに食堂にご馳走も用意していたし、おもてなしも自らの分身を使えば問題もないだろう。

それにご子息様との初の謁見を独占できるという意味ではシュラハにとって都合がよかった。


…そろそろ約束の時間だ。


空間の歪みを感じる…いよいよだ。


転移の魔法特有の光とともに一人の男と女がシュラハの目の前に降臨した。


銀髪で色白。欧風で端正な顔立ちであるが和服というちぐはぐないで立ちではあるものの、服の間から見える引き締まった肉体

のせいで不思議に決まって見える。しかしそんなことよりもまず注目してしまうおおきな特徴があった。

胸元から首、額まで伸びる長い一本の傷跡。頭部に一本角が生えている。


女の方は黒スーツにタイトなミニスカート。病的な色白とは裏腹にグラマラスな体に

スーツがぱっつぱつになっている。マゼンタ色の鮮やかな腰まで届くロングヘアー。絶世の美女といえるいでたち。

魅力的な笑顔とは裏腹に凶悪な牙を覗かせる。蝙蝠のような大きな翼を背中から生やしていた。


シュラハは大きな期待を寄せながらゆっくりと顔をあげる。不安も少しだけあったがそれはすぐに

払拭された。

もうすでに『あの御方』と同じ波動を感じる。

…懐かしい。…うれしい。

シュラハの顔が完全に男の方向に向き、シュラハの瞳に男の姿が映る。




「………ま……お…う、さ、ま?」




シュラハはゆっくりと立ち上がり、わなわなと男に近づく。すでに大粒の涙を浮かべながら。

それはだんだんと早くなり。

男に抱き着いた。



「わ゛わ゛わ゛わ゛ああああああ!!!!!シュラは!!シュラは!ずっと信じてお待ち

しでお゛りましだあああ!!!!ああああ!!」



男の胸で子供のように泣きじゃくるシュラハ。なにかの糸が切れたかのように。


「…いや、俺は魔王じゃ…」


シュラハの様子に困ったように男がそう言いかけると、女が男にしー、と口を閉じる

ようなジェスチャーを見せる。


《いいから今は気のすむまで胸を貸してあげなさい》


とでも言わんばかりに。それを理解した男はやれやれと言った感じで、自分の頭を

ぽりぽりかきながらシュラハが泣き止むのを待っていた。


しばらくたち。


「大変ご無礼を致しました!…この不始末は私の命をもって…」


シュラハが落ち着き、男が魔王ではないことがわかって全力で頭を下げるシュラハ。

「シュラハちゃん。命を絶ったらマオー様の御願を聞けないでしょうよ」

女がシュラハに呆れたようにいう。いつもだったら女はマオーに様付けなどしないのだが

つけないとシュラハが色々と面倒なことを言われそうなので様付けしていた。

「…確かにヴァニラの言うとおりね。でしたらマオー様のご用命を遂行し終えたあとで…」

シュラハがそう唸ると、マオーがいやいやと遮る。


「別に死ななくていいから顔を上げてくれ。それより俺ってそんなに親父に似ているのか?ガキのころに

離れてそれっきりだからようわからん」


マオーがそういうとシュラハが顔を上げる。


「それはもう。生き写しといっていいくらいです」


「前にも言ったでしょ?生き写しだって」


二人からそう返され、はあとため息をつく。正直親父にそこまで似てると言われてもうれしくはない。

だがシュラハは知ってかしらずか恍惚の笑みをみせる。

「姿かたちだけではありません!魔王様特有の素晴らしい波動と同じものを感じます!」

素晴らしい波動ってなんだ。

「ん~、そんなことより立ち話もなんだから続きは食事でもしながらってことにしない?

シュラハちゃんのことだから用意してあるんでしょ?」

ヴァニラがそう話題を変える。それにはっとしたシュラハがマオーに一礼する。

「僭越ながら今回は私目がお食事をご用意させていただきました。以前いた料理長

が今はおりませんので。お口に合うか不安ですがいかがですか?」

マオーがちなみにメニューは?と聞くと

「マッシュドラゴンのフルコースです」

と答えた。

「…案内してくれ」

「はッ!!」

喜々としてマオーとヴァニラを先導するシュラハ。

マッシュドラゴンと聞いて明らかに表情が緩んだのをシュラハは見逃さなかった。

魔王様と同じでマッシュドラゴンが好物なんだ!とどこまでもあの魔王さまと一緒で

感動が収まらないシュラハだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー




食堂。

とんでもなく長い長テーブルに豪勢な食事が所狭しと並んでいた。

一番奥の椅子にマオーが座り、シュラハがすぐ横に立つ。ヴァニラはマオーから向かってすぐ

右の椅子に座っていた。

「どうぞ」

マオーのグラスにワインを注ぐシュラハ。その後も横に立ち続けるシュラハ。

「作ってもらっておいてなんだけど、…えーとシュラハ…さん、も座って一緒に

食べない?」

マオーがそう問うとシュラハがブンブンと顔を左右に振る。

「私目はマオー様の御食事の補佐という、重要なお役目がございますのでどうぞ

お気になさらずに!それと私目に敬称は不要です!是非呼び捨てにしてくださいませ!」

変わらず気合の入ったシュラハの姿勢にマオーは、マオーは苦笑いをしながら


「…あー、じゃあシュラハ。君も座って一緒に食事をしてくれ。命令なら

きいてくれるよな?」


「!?…はい!」


マオーは何気なくいったつもりだったが、シュラハはときめいてしまった。

魔王様にも似たようなことをこんな風に困った表情で命令された。こんなところも一緒だ。



…。まるで本当の魔王様と一緒にいるようだ…!



シュラハは顔の緩みを抑えきれずにヴァニラの対面の椅子に座った。


(…相変わらずねえ、シュラハちゃんは。魔王様がマオーをシュラハちゃんに預けなかった

のも頷けるわね)


俯きうへへ…と顔を歪ませるシュラハをみて、呆れた笑みをするヴァニラだった。


食事が落ち着き。

それでもテーブルには多量のご馳走が残っていた。マオーが残して悪いというと

どうかお気になさらずに。後ほど私が『処理』しておきますので。と返された。

どう処理するのかは聞かないでおこう。

「ところで、私へのご用命はどういった内容なのでしょうか?」

シュラハから切り出された本題。様子から察するに何をいっても聞いてくれそうな気はする

…するが、…なにか、こう。ここでシュラハに頼みごとをしたら、途轍もない『負債』を

背負う気がするマオーだった。

勿論お代等を請求されることもないだろうが、ただほど高い物はないのだ。

ふとヴァニラを見るとマオーを見てニヤニヤしていた。

まるでマオーの思考を見透かしているかのように。

「…いかがされました?どうかお気になさらずご命令してくださいませ。必ずや

完璧に遂行してみせます!」

悩むマオーにキラキラとした目で気迫を見せるシュラハ。

…まあ、ここまできて引っ込めるわけにはいかないし、ヴァニラと同程度の実力で

子供たちを預かってくれるつてなんてシュラハ以外に他にない。

ヴァニラ曰く、守るという一点においては四天王最高だというシュラハ。

魔界であっても子供たちを守り切れるだろうと。

それなら。

なるようになれ。…そもそも選択肢がこれしかないのだが。


「実は今、魔界で拾った孤児たちを人間界に集めて育てているんだけど、色々

問題が起きてしばらくここ(魔王城)であずかっていて欲しいんだ」


「かしこまりました!このシュラハにお任せくださいませ」


え?となるマオーだった。理由とかそういうのはいいのか?


「いずれ魔界の王となるマオー様のご命令に、逐一理由を尋ねる理由がございませんので」


嫌な予感が的中した。ちなみにマオーは魔界の王になるきは露ほどもない。

「しかしながら、あずかっていて欲しい、となるとマオー様は一旦人間界へ戻るおつもりで?」

一旦どころか魔界へ帰るつもりがないマオーは、どう答えたものかと悩んでいるとヴァニラが

助け舟を出した。


「その通りよ。人間界に野暮用をのこしてきたから。それを終えたら『迎え』にいくからさ」


ヴァニラが代わりに返答すると、若干表情が曇ったシュラハだったが

「…わかったわ。ヴァニラ。マオー様のこと、頼んだわよ」

と、静かに答えた。

シュラハは本当なら自分がついていきたいと思ったが、マオー様に会えたという奇跡と。

こんな奇跡が起きたなら。ここ(魔王城)に魔王様ご自身が帰ってくる奇跡が起きるかも

しれないと思っていた。

ならば。

ここで私がお出迎えしなければどうする。

そもそも魔王様を信じて待ち続けてきた結果の奇跡だ。



「安心しなさいな。『魔界四天王ヴァニラ』の名に懸けて、マオー様を守るから」



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