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27,絶望への扉の鍵『神の眼(ゴッド・アイ)』

魔法都市ヴィヴィ。

ギルド本部があり、その名の通り魔法技術がとても進んでいた。ギルド本部にも魔法の研究室

があり、その他にも魔法学校やマジックカードを生成する施設も多々存在していた。

ギルド本部、魔法研究設備の一室。

いくつもの魔導書が乱雑に重なり、羊皮紙がそこら中に散らばっている。机にはフラスコやビーカーなどの研究器具がいくつも置かれていた。

その机に突っ伏せる黒づくめの魔導士がいた。

素人が見てもわかるほど高級な黒色ローブを纏い彼女の脇に開かれた魔術書が浮いている。黒いとんがり帽子を目深にかぶっている。

彼女は智天級冒険者、エレノア。クラスは星天術士スターフィクサー

(…全然尻尾がつかめない。こうなってくると本当に人間の皮を被った化け物の可能性があるわね)

突っ伏した顔を上げると目にクマができていた。ダーフォンからギルド本部に戻った後、銀髪の座天級冒険者マオーの調査していた。

マオーが行方を定期的に行方をくらますという情報を元に、その場所を特定するためあらゆる手を尽くしてきた。

しかし全くといっていうほどなにもつかめなかった。智天級の冒険者の情報網と魔法をもってしても一切の行方がわからない。普通に考えたら異常だ。


「エレノアー!オッスオッス!」


研究室の扉が元気のいい挨拶と共に勢いよく開かれた。

元気よく挨拶をする少女。高級な白色法衣を纏い、金剛杖ダイヤスタッフを両手で持っている。

ビレッタ帽子をちょこんとかぶっている、というより乗っかている感じだ。健康的な肌色に水色の

ロングヘアー。

彼女も智天級冒険者で、名前はプリエム。クラスは女司教ハイプリーステス

「…相変わらずうざってえくらいげんきね」

エレノアの反応に頬を膨らますプリエム。

「も~、元気な挨拶は基本じゃん!…って、ああー相変わらず散らかってますなー。少しは掃除したほうがいいよ?」

そう部屋を見回すプリエムに再度机に突っ伏し、余計なお世話よ、と答えるエレノア。

「プリエムの言う通りだぜ。そんなんだと行き遅れるぜー?」

プリエムの後に大柄の男が入室してきた。

頭部以外白銀の全身鎧。手ぶら。金髪の肩までのロングヘアー、優男といえる顔だが体つきはがっちりしていた。

彼も智天級冒険者で、名前はエドガー。クラスは神聖騎士セイントセイヴァー

「…生憎だけどすでに私は魔法と結婚してるわ。それより何か用?私はこの件が片付くまであんたらと仕事しないから」

机に突っ伏したまま、つれないことをつぶやくエレノア。するとプリエムがはあーとため息をついた後。


「それが同じパーティにする態度?せーっかく『この件についての新情報』をつたえにきたのに」


『この件についての新情報』という言葉に突っ伏した顔を一気に上げて目を見開くエレノア。


「どういうこと!?」


エレノアの急変する態度にやれやれと二人で肩を竦める。

「もったいぶってないで早くおしえなさいよ!!」

掴みかかりそうになるエレノアにわかったわかったからと、プリエムが口を開く。


「ファーウェル大聖堂の大司教様から神器『神のゴッドアイ』を授かったんだ。これさえあれば

あらゆる現象を看破できる」


懐から奇麗な小さい箱を取り出すプリエム。その中には豪華な装飾が施された片眼鏡のようなものがあった。

「…まじ?神器って円卓の12神官が延々と歳月をかけて創り出したその名の通り、神の道具じゃない?

そんなのよく貸してくれたわね」

そう呆気にとられるエレノアにそれがさーと曖昧な態度をみせるプリエム。

「別に私が頼んで貸してもらったわけじゃないんよー。そもさん私が智天級だからといって神器なんて

貸してくれるわけないぐらい貴重なものだしねー。なんか急に呼び出されて『君の仲間が苦労しているのだろ?これを使って助けて御上げなさい』だって。一応私も司教だから12神官様には会った時はあるんだけどちょう久しぶりで超緊張したわ…ていうか耳も超広いよねーエレノアがこんな状態なの知ってんだから」

…ただそれだけにねと続けるプリエム。明るかった表情がどんどん暗くなっていく。


「つまりエレノアが探っているマオーって奴は、とんでもなくやべえ存在かもってわけだな」


エドガーがプリエムを引き継いだ。

「なあエレノア。この件は手を引いたほうが良くないか?12神官は俺らを使ってよくて威力偵察

…悪くて毒見させようとしてるんじゃないか」

エドガーの懸念にエレノアは口に手をあてて一考する。マオーが想像以上の化け物かもしれないという

考えはエレノアにもあった。ただこれでより一層真実味が増してきた。

どういう経緯かはわからないが、12神官もマオーのことを探っているのか。しかも神器を自分たち

に預けてまで…。

今まで受けてきた依頼で一番危険な可能性が出てきた。


しかし、エレノアの気持ちが変わることはなかった。


「…そんな危険なやつを野放しにしておくの?智天級の冒険者が?神聖騎士がきいて呆れるわね、エドガー。あなたたちの気分が乗らないなら別にそれでもいいわ、私一人でも行く」


想像していたとおりの反応にプリエムとエドガーははあとため息をつく。

「お前の精神のほうがよっぽど聖騎士だよ。どっちみち逃げたらプリエムの立場もないしな」

せっかく神器を貸したのにやっぱりやめましたとはとても言えないだろう」

「そーなんすよー。もしもの時は私とエレノアのために死んでね?」

とても司教とは思えない発言にエドガーはへいへいと諦めたように返事をした。

「縁起の悪い事言うもんじゃないわよプリエ。それに、まだマオーっていう奴と戦うと

決まったわけじゃないしね」

そもそもの目的がマオーの正体を確かめることだ。討伐するかどうかはそれいかんによる。

もしもマオーに敵意があり、討伐するのが困難であれば一時撤退も視野に入れる。


「今回はみんな生きて帰ることを最優先にするわよ!」



ーーーーーーーーー



観光都市グロムフェルム。

あらゆる娯楽施設が揃った街。つまり飲食業も盛んであり、野菜や畜産物も比較的高値で取引される。

「マルコさん、今回もよろしくお願いします」

マオーは大量の野菜と畜産物が積み込まれた馬車をとある店の前に止めた。

「おー、久しぶりだな。ローズマリーちゃんも元気そうで何よりだ」

店から初老の男が出てきた。

マオーの隣に座る12歳くらいの女の子。ピンク色のボブカットでオーバーオールのような服を着ている。

健康的な褐色肌で既に出るべきところが出てきている。典型的な元気っ娘といった感じで挨拶を返す。


「おじさんも元気そーで何よりだーね!」


いいながらぴょんと飛び降り、挨拶もほどほどにさっそく馬車の野菜をおろし始めた。

「相変わらず働き者だねえ、私もこんな娘が欲しかったなあ。うちの馬鹿ガキに爪の垢でも飲ませてやりたいよ」

感心感心といった感じにせっせと動くローズマリーを眺めるマルコ。

ちなみに。

マオーは普段は銀髪だが今は魔法で黒髪にかえている。服装も商人のような服装だ。

ローズマリーも普段は頭部に生やしている角を隠している。

孤児院で作った野菜や畜産物を人間界で売るためである。そのためある程度それがたまったら

このマルコという商人が商いをしている店を間借りしてもらっている。

当然間借りする以上、賃料がかかるわけだが自分で店を出すのはそれはそれで面倒な手続きが腐るほど

あったので間借りという手法を用いた。

ちなみにマルコ自身の店は日用品や雑貨を取り扱っていたので、野菜を買うついでに雑貨を。雑貨を買う

ついでに野菜を。という感じでウィンウィンだった。

マルコ側にとってはマオーらに間借りさせることでさらにメリットがあった。

マオーとローズマリーの存在である。

やはり見た目というのは重要で、美形のマオーと可愛らしい元気っ娘のローズマリーが店番をしていると

それ目当てで買い物に来る客が多かったからだ。必然、ついでに日用品も買うかとマルコの店の売り上げも良くなっていった。

当初、育てた野菜や畜産物は孤児院で消費するだけであったがローズマリーが『せっかくだからこれ売ってみないー?』と言われたのがきっかけだった。あとどこからそんなことを学んだのか、あーしとマオーを親子って設定にすれば色々取り込みやすいと思うよー?と言われなんでそんなこと思いつくんだと

思ったがそれは実際その通りだった。

実際ローズマリーはマルコの心と、その息子の心をすぐに掴んだ。間借りの件も格安で受けてくれた。

本音を言えば子供を働かせることをよく思わないマオーだったが、ローズマリーは孤児院の中では古株で

実際牧場は任せっきりだったので今更そんなことは言えなかった。

ローズマリーだけ人間界に行けるということで他の子供(特にイズベル)から不満が上がったが自分でも

気にしているのか「孤児院ではマオーとあんまからまんから簡便なー」と宥めていた。


「ありがとなー!」


商品を並び終え、さっそく店番を始めるローズマリー。さっそく来た客に飛び切りの笑顔を向ける。

それは老若男女すべての客を笑顔にした。…一部、いやかなり多くの客がいやらしい目で見てもいたが。


「あー!!ローズマリー!来てるんなら早く僕に言えよなー!!」


一人の少年がバックヤードから飛び出してきた。

ローズマリーと同じくらいの12,3歳くらいでいかにもわんぱく坊主と言った感じ。茶色い短髪で

動きやすい服装をしている。

「おー、ルックル!元気してたー?」

変わらず飛び切りの笑顔で少年に手を上げ挨拶する。するとルックルは不満そうに指をさす。

「ルックルさま!だろ!雇われなんだから敬語をつか…ぐえ!?」

言い切る前にマルコのげんこつをくらうルックル。

「いってーなー!…親父いたのかよ」

反抗的な少年にもう一発加えるマルコ。

「雇っているのはお前じゃない。少しはローズマリーちゃんを見習え。店番も手伝わないで

いっつも遊び頬けて…」

説教が長引くと思ったのかあっかんべーしてその場をさったルックル。

「…すまんね、気にせんでくれよ。悪気はないと思うんだ」

申し訳なさそうにマルコがローズマリーにそういうと

「?べつにー。ルックルが望むなら、さまぐらいならつけるけどー?」

変わらず笑顔で返すローズマリー。いやそんなことはしなくていいよとマルコは答え今度はマオーに

「君にも挨拶しないで、本当バカ息子で困ったものだよ。すまんね」

と謝る。

「…いや、息子さんが元気そうで何よりですよ」

内心ぶっ飛ばしてやろうかと思っていたマオーだったが我慢する。馴れ馴れしいあの馬鹿ガキさえいなければ

いい店なんだけどなあ。

心中とは裏腹のマオーの反応にやれやれと安心して自分の持ち場に戻ったマルコ。

それを確認した後ローズマリーがマオーに近づいてひそひそ話す。


「マオー、ちょっと顔やばかったよ?もしかしてあーしに嫉妬してくれた?」


元気な笑みがいたずらな笑みに変わった。そしてマオーに身を寄せる。

「だーいじょうぶだよー。『あんなの』なんの興味もないし…ね」

一瞬だけ。

ローズマリーの目つきが鋭くなり赤く光った。

それはすぐに消え、元の笑顔に戻った。


「あーしの旦那さんはもう決まってるから」



ーーーーーーーーー



数日が立ち。

閉店。辺りはすっかり暗くなり、マオーとローズマリーは店の片づけをしていた。

「マオー、次回もがんばろーな」

箒をもったローズマリーが笑顔でいう。

「ああ、そうだな」

つられて笑顔になるマオー。在庫が底をつき、売るものがなくなったのでこの店ともしばらく

お別れだ。

するとまたルックルが現れた。

「お前らまたいなくなるんだろ?ちょっとだけ付き合えよ」

呆けた顔で自分を指さすローズマリーにそうだよ!!とどなるルックル。

不思議そうにわかったよー?とついていくローズマリー。

マオーは敢えて止めなかった。


バックヤードの隅でルックルが止まった。

「どうかしたん?」

ローズマリーがそう問うとルックルが顔を赤らめて返す。

「…その、こんな中途半端なことなんかしないで店でずっと働けばいいじゃん。親父もお前気に入ってるしそしたら給料も発生するし」

若干、もじもじするルックル。

「おー、あーしのことかんがえてくれてたのかー?ありがとな」

変わらずの笑顔にち、ちげえよ!と声を荒げるルックル。

「雇い主だから…従業員のことを考えるのは当然だしな」

うんうんと自分で言って自分で頷く。

「ありがとなー。でもいいや、あーしは帰るから。じゃーなー」

そう踵を返すと

「…ちょ!?まてよ!!」

とローズマリーの腕をつかんだ。

少しの時間が経過し。ゆっくりとローズマリーが振り向いた。


「!!?」


ルックルは恐怖の表情をした。まるでこの世のものと思えないものを見たように。



「はなしてーな?」



いつもの笑顔に戻ったローズマリーが優しくそういうと、手が離された。


「またよろしくなー」


バッグヤードの隅で放心する少年だけが取り残されていた。



ーーーーーーーーー



「マオー、きいてーなー。ちょーきもいんやけど…」

店に戻ったローズマリーがマオーに話しかけようとしたらかつてない真剣な表情をしてたので

止まってしまった。こめかみに手を当てている。恐らく通信コンタクトをしているのだろう。

《…マオー、予感が的中したわあん。結界を突破されたわ》

甘ったるい声が聞こえる。だがいつもよりとても愉快そうだ。

「…、どんな面子だ」

《魔導士と聖騎士と神官ねえん。どうする?》

マオーの眼が光った。


「殺せ。…元魔界四天王の力を存分に見せつけろ」


通信先なのに邪悪な波動を感じた。


《了解よ…我が主》


通信が切れた。


「ローズマリー」


「な、なにかなー?」


「急ぐぞ」


「う…うん!!」


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