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21,仕事終わりの酒はうまい+円卓の12神官。

あのあと。

「おほほー、金貨がこんなにぎっしり!」

ぎっしり詰まった金貨袋を機嫌よさそうに弄ぶレニ。

「マオーに抱き着いたのは、まあ許したるわ、おかげでこんなに儲かったから」

ファーウェルの酒場でいつもの4人が集まっていた。いつもの酒場と違って特別料金を払って

個室を取っていた。大量に儲かったからである。

「俺たちがマオーを止めたら負けになってたかもしれなからな。いろんな意味でいい仕事をしたよあのお嬢さん」

ザインが気持ちよさそうに酒を飲む。




ーーーーーーーーー




決闘前。


「僕がもし切れて自制が利かなくなったと思ったら、マルグリットが殺されるかもしれないってお嬢様をけしかけろ。それをしったら多分試合を止めにはいろうとするだろうからな…たとえそれで僕の負けになったとしても、お嬢様が乱入する分には僕のせいとはならないだろうし。まあ思った通りの動きをしなかったら最悪お前らがとめてくれ」


マオーがいつもの3人にそう頼んだ。

「へえ。マオーが切れるくらいには手こずる相手かもしれないってこと?」

レニがそう問う。

「前日の食事で座天級の冒険者でも自分が勝つみたいなことを言っていたからな。ただでさえイライラしているのにもし苦戦なんかさせられたら自分を抑える自信がない」

お嬢様と恋人ごっこ、ボンボン貴族とくだらないやりとり。本当にしょうもない。モンスター討伐のがよっぽどわかりやすくてはやい。マオーは孤児院の子供たちにはやく会って癒されたいと思っていた。

実のところ、別にレイチェルのことを思ってマオーは止まったわけではない。レイチェルの叫びがきっかけではあったのだが。要は第三者の介入があれば正気になるぐらいの冷静さはあわせもっていたのだ。

レイチェルが乱入してマオーの反則負けになっても、それはマオーのせいではない。自分を止めることが

できてマルグリットも殺すこともなく自分の非がなく依頼を終えることができる。

「すこーしあーんしーんしましたよー。マオーさん、あの小娘に若干惹かれてるんじゃーないかと

思ってーましたからー」

ローニャが胸をなでおろす。イラついていても冷静にレイチェルを分析してその行動を読んでいる。

いつものマオーだった。演技とはいえレイチェルにへりくだり過ぎだと感じていたローニャは

杞憂だったと安心した。

「変に頭がいいと扱いに困るからな…ローニャがそう感じたのは間違いではないとは思う。

噂通りの我儘娘だったほうがよほど気楽だった」

ローニャの杞憂は間違っているのではなく原因はべつにある。

レルゲン。この男が気がかりで慎重にことを運ばざるを得なかった。まあところどころ慎重ではない行動もあったが。結果それに脳のキャパシティを取られて、他のどうでもいいことを受け流す余裕がなくなる。つまり切れやすくなる。

だがそのことを三人に話すことはない。あくまで冒険者としてのマオーとの関係でしかない。

マオーが実は人間ではなく、魔族専門孤児院を経営をしていることを悟られるわけにはいかないのだ。

…とはいえ3人の信頼を失うようなこともできない。


「まあ…あと少しの辛抱だな」



ーーーーーーーーー




現在に戻る。

「あー、仕事終わりの酒はうまいなー、ワインよりやっぱこっちよなー」

ぷはあと樽ジョッキの黒ひげを飲み干したマオー。間髪入れず次を頼む。

「賭けのあがりもあるし一人頭金貨60枚ってとこか。貴族が存外に強かったのが予想外だったが

依頼難易度考慮したら大儲けの部類に入るな」

マオーもテーブルに置いてある自分の金貨袋を見てそう満足そうにしている。

「でーもー、今回ーわたしたーちほとんど働いてないかーらーマオーさんに

取り分少しまわしましょーかー?」

ローニャがそう提案する。

考えてみれば婚約者の振りをしたのはマオーだし、マルグリットと戦ったのもマオー。

そもそもこの依頼はマオー個人のものだったので当然の提案といえる。

「うんにゃ、言っただろ。リーダーってのは損な役回りもしないと駄目ってさ。それにお前らはお前らで

役に立った。いいから気にしないでとっとけ」

マオーはとても機嫌がよかった。それは依頼から解放されたこともあるが、これでまとまった資金ができたので孤児院に戻れる。ああはやく子供たちにあいたいなー、ヴァニラは元気…だろうな。


「気にしないってーいうかーこれはー取引ーですー」


ローニャ以外の3人が?という表情になる。


「わたしたーちからー金貨10枚ー出すんでーいなくなるのー延期ーしてくれませんかー?

多分ーこの依頼終わったらーいなくなっちゃいますーよねー?」


ローニャの取引にレニがいいわね!それ!と同調する。

ザインはまあ、もとが貰いすぎだしなーと反対する気はなさそうだ。


「ねえマオー、話せない理由があるのは聞いてるけどそろそろ少しは教えてくれても良くない?

…でもま、無理強いはしないけどさ」


悲しそうにそう漏らすレニ。他二人も同じ様子だ。

たしかにもう短くもない付き合いが続いている4人だ。定期的にいなくなってその理由もどこに行ったのかもわからないのは異常ではある。仲間に誘った際それは説明したし納得はしてもらったが、人間理屈だけではないのだ。

マオーは天井を見上げる。

しかし本当の理由を話すわけにはいかないし、場所を教えるなんてもってのほかだ。かといってもっともらしい嘘を言ってもあとがつまる気がする。かといってここでなにも言わないのもあまりにもあんまりだ。

ならば虚と実をまぜて話そう。

くれぐれも他言無用だぞ?とマオーが前置きすると三人ともうんうんと水を得た魚のような感じになった。

…やれやれ、何がそんな気になるのだろうかとマオーが口を開く。

「実はある孤児院の資金的支援と子供たちの世話の手伝いをしている。だからある程度資金がたまったらいなくなるしたまった力仕事を片付けるため、そのあとしばらく不在になるのさ」

これならなにか質問があったとて自然に返せるだろう。

すると3人はしばらくポカーンとして、その後。


「ちょっと!?そんな大事なことなんでいままで黙っていたのよ!言ってくれればあたしも手伝うし

お金だってある程度は工面したのに!」


レニがそう騒いだ。それにマオーが声がでかい!と返すと、あ…ごめんとしゅんとなるレニ。

個室だから大丈夫だろうがあまりでかいと聞こえる可能性がある。

「声はともかくレニの言う通りだぜ…力仕事なら俺に任せてくれよ、みずくせーなー。

おっと家事はからきしなんでそこんとこよろしく」

ザインがおどけるように言うとローニャが続けた。

「それならー家事はわたしがー手伝いますよー」

これは予想外の反応だった。冒険者をやってる連中が孤児院にここまで興味があるなんて。

マオーはせっかくだがと答える。

「気持ちだけ受け取っておく。孤児院の子供たちには冒険者業をやっていることは話していないんだ。

出稼ぎとだけしか言っていない」

あーとザインがどこか納得するような感じをみせた。

「子供たちが冒険者に憧れを持たせないようにってところか?それならまあ…納得だな」

ザインの言葉にマオーがその通りと頷く。

冒険者とは常に命を落とす可能性がある。せっかく子供たちの世話をしているのにそんなわりとあっさり

死ぬ冒険者にはなってほしくないとマオーは言う。

冒険者で稼いでいて、そしてその仲間たちが手伝いに来たら少なからず、冒険者に憧れる子供が

出で来るのは必然だ。それを避けたかったのだ。

「理屈はわかるけどさー、実際にマオーの資金でその孤児院は維持できているんでしょ?ましてや

自分も冒険者なわけじゃない…あ!あたしたちも冒険者ってこと隠せばいいじゃない?名案!」

どうしてそこまで手伝いたいのかと思うマオーだったがそれでもだめだとこたえる。

「冒険者ってのは知らずに恨みを買うこともしてるからな。お前らを疑うわけじゃないが

場所を教えたあとろくでもないやつに洗脳系魔法かけられてもし孤児院の場所がばれたら、どんな真似を

されるかわかったものじゃない」

この理論は効いたようでレニはううと身を引いた。俯く。

「まーまー、レニさーんわたしたーちにもできるこーとありますよー」

いつもの笑顔になったローニャは続ける。

「これまでどおりー一緒にマオーさんと仕事をー頑張ることですー」

そんなことわかってるわよーとムスーとするレニだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー



ファーウェル大聖堂。最上階。

豪華なステンドクラスに白を基調とした豪華な部屋に円卓が置かれている。

そこに鎮座する12人の神官。

円卓の12神官。クラスは大司教アークビショップ

老若男女、様々な年齢の見た目の神官がそろっていた。

そして。大きな出入り口の扉の前に初老の男が一人立っていた。

「さて。マルグリット伯は負けたそうだが、なにか収穫はあったのかね?」

神官の一人が初老の男に問う。

「結論から申し上げますと、『彼』はこの世界を逸脱した力を行使することはありませんでした」

初老の男はそう答えた。

「なーんだ、あんたの取り越し苦労だったの?一式装備術式まで施したのに」

神官の一人がいう、艶めかしい声を発する。

「ですがまだ可能性が消えたわけではありません。本来の力を隠したまま倒した線も考えられます故」

初老の男が答える。

「まどろっこしいなー。それなら智天か熾天級の冒険者でもけしかければいいじゃん!」

神官の一人。今度は子供っぽい声。

「それでは彼が警戒を強め行方をくらます可能性があります。一旦そうなってしまったらそれこそ厄介ですよ?彼がもし魔界や竜国の者だった場合、次うまく補足できるとは限りません。ですからぎりぎり本性を出さざるをえなそうな相手を選んだのです。それと戦わせる理由もなるべく自然にと…それに加え私たちが智天以上を仮にけしかけた場合、こちら側に明確な殺意があると思い、彼のほうから仕掛けてくる可能性があります。彼の実力が定かではない以上、私たちから積極的に動くのは危険ですね」

初老の男の言にしかしだなと、神官の一人がしかめる。

「わざわざそこまでして調べる価値があるのかねえ…そいつは座天級でいまのところ大人しく暮らしているわけだろ?それに魔界か竜国のものかどうかも確定しているわけでもなくだ。しかも獅子かもしれない

ものの尾を踏むような真似はしなくても良くないか」

しかしながらと初老の男がそれに反発する。

「獅子かもしれないからこそ調べておく必要があるのでしょう?もし彼が魔界や竜国出身であれば

ヴァルハラ(人間界)を崩壊させかねない事態も起きる可能性すらあると考えられます。最低でも

彼の力量とヴァルハラで潜伏して暮らす目的くらいは調べておきたいところです。処遇については

そのあとに考えるとして」

ここで円卓の最奥にすわる神官が口を開いた。


「ただの人間かもしれないのにそこまで疑うのはなぜなのか?」


「勘です」


即答だった。そこで12神官は目を合わせ、はあとため息をついた。恐らくは初老の男の中で何かあるのだろうが説明が面倒な内容なのであろう。とはいえ、初老の男の仕事は確かであるのは間違いないのでこれ以上は突っ込まず

「次の策は考えてあるのか?」

と問う。それにはいと答えた初老の男。

「エレノアという智天級の冒険者が彼を調べていると聞きました。今度は彼女をけしかけてみましょう。

彼女が個人的に彼を調べているのであれば、こちらに足がつくことはないでしょうし。それにあたって神器、『神の目(ゴッドアイ』)を彼女のパーティーにいる神官プリエムに御貸しして頂きたい」

これに12神官がざわついた。

神器、その名の通り神のアイテム。

「…わかった。だが失敗したとき神器を回収する術は考えているのだろうな?」

最奥の神官の問いに無論ですと初老の男が答える。

「ならもう何もとうまい。頼んだぞ」




「レルゲン」


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